大嫌いなリムちゃん(4)

 え……勝った……

 

 クロノさん……確かに「勝者!」と言ってた。

 

 呆然としていると、突然横から勢いよくアンナさんが体当たりしてきた。


「ヤマモトさん! ヤマモトさん! ……ああ! 良かった……良かった!!」


 耳がどうにかなるんじゃ無いかと思うくらいの泣き声混じりの声で、抱きつかれて身体は揺さぶられるわで……また……うっぷ。


「あ……アンナ……さん。ちょっと……離れ……」


 そう言ったとき。

 今度は勢いよく誰に抱きしめられたと思ったら、なんとクロノさんだった!

 うそ! なんで!


「ヤマモト! お前という奴は……お前は……大馬鹿者……」


 えっ! クロノさん……泣いてる!?

 って言うか……まずい……もう……限界。


 私は2人から慌てて離れると……胃の中の残りを……ごめんなさい。


「お疲れさん、リムはん。アンタは間違いなくコルバーニはんに……勝った。自分だけの力で」


 ラームの短いながらも優しい言葉に私は頷いた。


「やったよ……」


 ヘロヘロになりながら戻ってくると、またクロノさんに抱きつかれた!

 

「ちょ……ちょっと!」


 すると、アンナさんがクロノさんを引き剥がして言った。


「クロノ、お前はお呼びじゃない。私もだ。ヤマモトさんは……」


 そう言うと、アンナさんは私の背中をグイッと押した。


「さあ、行ってあげて下さい。あそこで呆然としてる大嘘つきのところに」


 そんな私の視線の先には呆然と座り込んでいるコルバーニさんの姿があった。

 ああ……あれ……まみれでごめんなさい。


「あ……あの……コルバーニ……さん」


 私の声にようやく我に返ったのか、ぼんやりとした表情で私の方を見たコルバーニさんに私は直立不動で頭を下げた。


「勝負、受けてくれて有り難うございました!」


 すると、コルバーニさんの顔に徐々に赤みが差してきて……涙がボロボロと溢れてきた。

 そして、立ち上がるやいなや私に抱きついてきて、子供のように大声を上げて泣き始めた。

「ご……ごめんなさい! ゴメン! 痛かったよね? 嫌だったよね? ごめんなさい! ごめんなさい……」


 そう言うと私にしがみ付いたまま、声を上げて泣き始めた。


「降参……してくれると……思ったのに! 痛かったよね……痛かったよね!」


「うん、痛かった」


「ごめんね! ゴメン……」


「でも、勝負できて良かった。だって……コルバーニさん、こうして抱きしめてくれてるじゃん。……あれ、まみれだけどさ。お互い」


 コルバーニさんはしゃくりあげながら言った。


「許して……くれる?」


「うん。でもさ。約束は……覚えてる?」


「……私、すっごく面倒くさい女だよ?」


「うん、知ってる」


「すっごいヤキモチ焼きだよ」


「それも知ってる」


「毎日構ってくれないとヤダよ」


「頑張る」


「頑張るじゃ無くて、そうしてくれないとヤダ」


「……頑張る」


「じゃあ……一緒に幸せに……なってくれるの? 私を……ずっと、守ってくれる? リムちゃん」


「一緒に幸せになろうよ。その中での贖罪の形も一緒に……探そう。コルバーニさん、私が居ないとダメでしょ? すぐポッキリ折れちゃうんだもん」


「うん」


「はい! お二人とも、良い感じのところすいませんけど、まずは身体と服を洗いましょう

 ! その会話の内容と……その……嘔吐物が……違和感酷いです」


 ニヤニヤとしながらアンナさんが言って、私たちは初めてお互いのエラいことになっている姿を見た。

 

「お二人とも……お幸せに。私なりの形でお支えします」


 それから宿に戻った私たちはアンナさんとガリアさん、クロノさんが汲んできてくれたお湯で身体を洗って、服も着替えた。

 さすがに浴場には入れないよね……


 そして、部屋に戻ってホッとすると急に身体の痛みが出てきて、ベッド上でウンウンうなっていた。

 コルバーニさん……もう、二度と戦わない!


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