狂乱の花嫁とライム
その後、正式に依頼を受けたアレクさんが教えてくれた内容はリーゼさんが言ったとおり「狂乱の花嫁」と言うなんともワイドショー的なタイトルの通り、毎夜裏通りに白い服を着た女性が、二刀流の剣を使って未知行く人を襲っているのだと言う事だ。
ただ、その内容は道行く人に「あなたは強い?」と聞き、同意すると襲ってくる。
そして、殺す事は無いがかなりの大怪我を負わされるのだと言う。
ラウタロ国でも、修道院で襲い掛かった、と言う話もどうやら修道士たちが咲きに襲い掛かっていて、結果命も危ぶまれる重症となったということだった。
「切り殺されたと聞いてたけど……大げさに伝わったのか」
と、コルバーニさんは酷く安堵した表情で言った。
本当に良かった……
「さて、そうなるとこれから私は毎夜、出歩かせてもらうね。クローディアを見つけたいから」
「でも、奴は本当に半端じゃないくらい強いらしいぜ。アリサちゃんがどのくらい強いか分からないけど、ここはさっきのアンナちゃんだっけ? 小さいお嬢ちゃんの方が……」
「私はアンナより強いから案ずるな。後、誰がアリサちゃんだ。いつお前の彼女になった! コルバーニ様と呼べ」
「ならいいけど……ボス、大丈夫ですか? 念のためボスがアリサちゃんを守ってあげた方が……」
「だから誰がアリサちゃんだ! コルバーニ様だろうが! 口をそぎ落とすぞ! リムちゃんは危険だから待機してもらう。私だけで充分だ。後、なぜ私がリムちゃんより弱い扱いになってるんだ、殺すぞ!」
「いや、コルバーニはん。リムはんも絶対に同行させなあかんよ」
突然ラームの有無を言わせぬ声が飛び込んできた。
指輪から顔まで飛び出させている。
「……なぜだ?」
「クローディアやったっけ? 剣はヘタっぴだったんやろ? それが急に歴戦の兵のようになった。二刀流の剣を使って。こんなの普通やあらへん。間違いないわ。彼女……万物の石を取りこんどる。奴の意思が入り込んで悪さをしとる。リムはんでないと止められん。その時はリムはんの力や。それからは……次の展開に進む」
「次の展開って……なに?」
次の言葉に私とコルバーニさんは息を飲んだ。
「ユーリに会いに行くための最後のステップ。うちの片割れ。ライムはんとの全ての清算を行う」
「清算って……ライムの居場所を知ってるの?」
「うちと彼女は半分づつの存在。お互いに引かれあっとる。居場所は分かっとるよ」
「どこに居るの!」
リーゼさんが血相を変えて指輪に話しかけた。
「ライムはんはここから馬車で2日ほどのロブルハーンと言う都市におる。富と権力の集中している光と闇の街。彼女は何故かそこから動いとらん。何の目的があるのか……」
「分からないの?」
「うちは彼女の様子まではわからん。ただ、スマホのナビのように点でそこにおるのが分かってるだけ」
「使えない指輪ね!」
「めっちゃ傷つくわ……」
「まあいい。場所が分かっただけでも充分。私は早速そこに行かせてもらうわ」
「あ、じゃあリーゼはん。行く前にあの子のいる場所だけ見せるわ。ちょっとこっちへ来てな」
リーゼさんは言われるままに指輪に近付くと、ホログラムになっている画像を覗き込んだ。
でも、向きの関係かリーゼさんにしか見えない。
「ねえラーム、私には見えないの?」
「すまんな。うち、あまり性能良くないねん」
リーゼさんは画像を食い入るように見てる。
え? 何写ってるの?
もう! ラームの役立たず!!
画像を見終わるとリーゼさんは、1人小さくうなづいて歩き出した。
「1人で……大丈夫ですか? みんなで行ったほうが……」
「大丈夫。早くライム様に合流しないと。いったんお別れよリム・ヤマモト。あなたとは敵にはならないつもりだけど、万一の事があったら許してね」
そう言ってウインクするとリーゼさんは歩きだし、クロノさんに近付いた。
「所であなた、そんな弱っちいんじゃリム・ヤマモトを守るのに不安でしかないわね。足を引っ張らないように精進なさい。鍛えるコツを特別に教えてあげるわ」
ニヤリと笑ってそう言うと、クロノさんに何かを耳打ちした。
すると、クロノさんは一瞬表情を強張らせると、リーゼさんの顔を見て……ニヤリと笑った。
「ああ、そうするよ。お前の言うとおりだ。忠告感謝する。また機会があればお前を頼る事にするよ」
「そうね。慣れた仲間じゃ手心がでるでしょ? 私なんかは適任よ。じゃあクロノ・ノワール。またね」
そう言うとリーゼさんは歩き去っていった。
せっかく仲良く慣れたのに……それに私も早く来夢の所に行きたかったのに。
「まあ、そうすると思ったわ。達者でな、リーゼはん。あ、行っとくけどうちらはまだ行かんよ。特にリムはん。あんたはクローディアへの対応含めちょっとやらなあかん事がある。で、なければユーリには絶対会えん」
「その……やることってなに? もったいぶらずに教えてよ」
「ヤマモトを強くすることか? 貴様はそのためにくっついているのだろう」
クロノさんが険しい表情で言った。
「お、流石察しがええね。そう。リムはんが単体でもいざと言うときに戦えるようにな。後、ちょっとづつ自分を取り巻く世界の事も知ってもらうようレクチャーせなあかん。知らない事をコントロールなんてできんからね」
「と、なれば毎夜私とリムちゃんで……」
「で、あれば先生。わたしも共に」
「それがいいだろう。どうも不穏な臭いがプンプンする。手は多いほうがいい。だからお父さんもね」
「おいこら! 私を無視するな!」
「クロノのおっさんはどっちでもいいよ。ってか、どう考えたら自分が数に入ると思えるのか、その感覚が分からないね」
「貴様……この場で決着を付けるか!」
「……ほんと、そのメンタルは尊敬するわ」
クロノさんとコルバーニさんのやり取りをポカンと聞いていると、ふと、袖を小さく引っ張られてるのが分かった。
横を見ると、アンナさんがすぐ近くに来て小声でささやいた。
「さっきの約束、覚えて下さってますか? 早速ですが……明日とかぜひ。朝一番で抜け出しましょう」
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