従うのはヤマモトさん
やった……
目の前で呆然としているスキンヘッドさんを見ているうち、自分が勝ったんだって言う実感がジワジワと沸きあがってきた。
それは身体の奥からポカポカした物が滲んでくるような。
スーパー銭湯で温泉に入ったときのような包み込まれる心地よさ……
「気持ちええやろ? それが『達成感』って奴」
「うん……」
「うちの言葉で動いたとは言え、自分で動き達成した。これが自分の判断であればもっと気持ちええよ。自分で努力し辛い事を乗り越えて、周囲を見返す。これ、最高に気分よくなれる方法な。万物の石に頼っとったら絶対もてないもの」
「私……やってみようかな。なにか」
「ええね。実はうちが薄っすら構想してた事があるんやけどね。リムはんが戦闘能力を持てるもの。またあとで話そか。ただ、まずは左へ5歩動いて……ああ、間に合わんか」
え?
そう思った次の瞬間。
アンナさんがラグビーのタックルのように飛び込んで来て、そのまま後ろに……って、これカーレでやったやつ!
「ヤ……ヤマモ……うわああ! よか……ああん!」
「あ、また通訳いるやつや。ほんまけったいな子やな」
「アンナさん……勝ったよ」
「よかったです……心配で……気を失いそうに……もし、ヤマモトさんに傷でもついたら、あの男の腕を落としてやろうと……ぐすっ」
「私は大丈夫だから。ありがとう」
「リム・ヤマモト。お疲れ様」
「リーゼさん」
近くに来ていたリーゼさんは、私の手を取ると優しく立たせてくれた。
「私は心配してなかったわよ。あなたの力を知ってたから。自分の限界を決め付けるにはあなたは………器が大きすぎるのよ」
そう言うとリーゼさんはニッコリと微笑んだ。
ああ……女性なのに……なんてイケメン。
「ただ、今回ちょっと直して欲しい点がいくつかあるのよね。よかったらこの後、カフェで反省会しない。二人で」
「あ……はい!」
「決まりね。じゃあ……って、なによチンチクリン、どきなさいよ。私、敵じゃないわよ。今は」
「ヤマモトさんをまた拉致する気だろ。私も同行する」
「いやよ。あなたなんか来たら、どうせ『ヤマモトさん、一緒にパフェ食べましょ! 一緒に服買いに行きましょ!』って遊びまくるに決まってる。言っとくけどこの子の力が開花し切れなかったのはアンタとアリサの色ボケ二人組のせいでしょうが」
「……へえ、赤ちゃんがどうとか言ってたのは色ボケじゃないのね? 勉強になったわ」
「カーレで私に殺されかけたのをもう忘れちゃったのね。だから色ボケは困るわ」
「コルバーニ流の特徴も知らないの? 同じ攻撃は二度と通じない。だから色ボケは困るわ」
「ちょ、ちょっと! 二人ともけんかしないで! そんな事言ってる場合じゃない」
「ヤマモトさん、お言葉を返すようですがこの女は信用なさらぬように。甘い言葉で懐に入り込み、一突き……などしかねません。何せ裏切り者ライムの手下ですから」
その途端、リーゼさんの目がスッと冷たい光を帯びたように見えた。
「……ライム様の事を悪く言うのは止めなさい。アンナ・ターニア」
「お前ら、いい加減にしろ。奴らと話してきた。まずはそっちが先だ。今は私の指示を……」
そう言いながらコルバーニさんが歩いてきたが、アンナさんは珍しく硬い表情のまま続けた。
「先生。……私は、このパーティの中ではヤマモトさんに従っています暴言重々承知してますが。なのでヤマモトさんに関することが最重要なんです」
「だってさ、アリサ。アンナ・ターニア、あなたに従ってるつもりは無いらしいわよ」
「それは分かっている。もっと言うと、我ら全員たまたま目的が共通しているだけだからな。故に結果として行動を共にしている。それ以上でもそれ以下でもない」
「え……」
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