私、戦いたい
ど、どうしよ……
みんなのところに戻って冷静になると、血の気が引いてきた。
絶対……勝てるわけ無いよ。
「ヤマモトさん、無視してここを出ましょう。言いたいやつには言わせればいい。あの3人が襲ってきても、私たちがお守りします」
「アンナの言うとおりだよ、リムちゃん。私たちで麻痺してるかもだけど、奴は決して弱くない。下手したら怪我じゃすまないよ。ゴメンね、私が変な事やっちゃったから……まさかリムちゃん巻き込むなんて。だから……帰ろう」
そ、そうかも……
スキンヘッドさん、まるでプロレスラーみたいだし。
そうだよね。
私なんかが戦ってもかえってみんなに心配かけるし……
「私は反対よ」
その声はリーゼさんだった。
「だろう。リーゼも同意見だよ。だからリムちゃん……」
「違うわ。私は戦うべきだと思う」
え?
「……ふざけるな。やはり本性を見せたな」
コルバーニさんが低く冷たい声で言った。
「そうじゃないわ。ねえ、リム・ヤマモト。あなたはいつまでもそれでいいの?」
「え……それ、って」
「いつまでもアリサやアンナ・ターニアに守られる自分。誰か庇護するものが居ないと前へ進めない自分。ねえ、リム・ヤマモト。これから先、旅は過酷になっていく。心も体もギリギリになるかもしれない。その時に、誰かがあなたの隣に居る保障はないのよ? 今までみたいに何かで別行動になってるかも知れない。……命を落としてるかも知れない」
リーゼさんの言葉に私は言葉が出なかった。
「人は1人では生きていけない。誰かの力を借りないといけない。協力しないといけない。でも、それは『それぞれが自分1人で立ち向かえる強さ』があってこそ。その強さのある人たちが協力し合い目的地に共に歩く。決して『1人で何も出来ない人をおんぶ抱っこして目的地まで守ってあげる揺りかご』じゃないの。揺りかごはいつか壊れるの」
「それ……は」
「さっきのあいつらに言った言葉、私は素晴らしいと思った。あの一瞬。私は正直、あなたの下で歩みたいと思った。あなたにはそれだけの力がある。決して誰かに手を引いてもらうだけの人じゃない。私はそう信じてる。リム・ヤマモト」
そう……なのかな。
そんな力があるのかは分からない。
でも、そうだ。
いつまでもコルバーニさんやアンナさんに守ってもらっている自分でいいの?
万物の石も使えなくなった今、確かに今まで以上に二人に……みんなにおんぶに抱っこ。
みんなの負担になんてなりたくない。
うん、そうだ。
みんなの事が大好きだから、お荷物なんて嫌だ!
でも……どう戦えば。
「あなたには指輪があるでしょ。ライム様が何を思ってそれを託したのか。それを考えてみなさい。確かにその指輪は石の力を封じる障害かもしれない。でも、真実の役目はそれじゃない」
「リムはん。リーゼはんは知ってるんよ。アンタがリーゼはんを守るために戦ってた姿を。今までアチコチで見せてきた沢山の勇気を。せやからああ言えた」
リーゼさん……
「一緒にがんばろか、リムはん。うちも結構燃えてきたわ。アンタを派手に勝たせたる」
「一緒に戦ってくれるの?」
「もちろん。ちっとアンタにも覚悟をもってもらわなあかんけどな。さあ、リムはんとうちのデビュー戦やね。ドキドキするわあ」
その言葉で私の目の前が急に明るくなった気がした。
そうだ。いつかは1人で歩かないといけない。
その一歩目が……今だったら?
私はコルバーニさんとアンナさんを見て言った。
「有難う、二人とも。でも私……戦いたい。頑張ってみる」
そしてリーゼさんを見て言った。
「私、やってみます」
リーゼさんはさっきまでの厳しい表情を一変させて、優しい笑顔で言った。
「頑張って」
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