スキンヘッドさんの提案
「きゃあ、やったあ! さすがアンナお姉ちゃんカッコいい! じゃあアリサも負けないように頑張っちゃおう」
コルバーニさんは語尾に「♪」の付いたようなあざと可愛い口調でピョンピョン飛び跳ねてるけど、もはや本性隠す意味あるのかな……スキンヘッドさんすっかり顔面蒼白になってるけど。
「先生、有難うございました」
「お、アンナご苦労! 最高のパフォーマンスだったぞ。ま、できれば1分は引き伸ばして欲しかったが相手が弱すぎたな。見ろ! ギャラリーども我らを呆然と見てる。これなら向こうから同行させてくださいと言って来るんじゃないか」
「次の戦いはどうなさるのですか?」
「ぬ? もちろんやるに決まってるだろ。久々の実戦を楽しみにしてたんだ。お前を上回るパフォーマンスを……」
「向こうはもうやる気ないみたいですよ」
「はあ!?」
うん、確かに。
見るとスキンヘッドさんは周囲をキョロキョロ見回してるよ……
「うん、うちもそう思うわ。あのハゲさん明らかに『恥かかずにこの場を切り上げないとヤバいぞ』って言いたそうな顔してるわ~」
「いやいやいや! お前が剣なら私はせっかくこのパンフレット一冊で倒してやろうと思ってたのに……ね、ねえお兄ちゃん! アリサ、全然強くないからお相手してほしいな~」
だけど、スキンヘッドさんは分かりやすく目を逸らしてる。
「無理よアリサ。先に出たチンチクリンがあんなのやっちゃったら、偉そうに指示してたアンタはもっと格上と思うでしょ。しかもアンタ、気付いてないの? ものすっごく姿勢から何からオーラ丸出し」
「く……」
「ふふっ、ほんとおバカさん。そんなに戦いたいなら先に出ればよかったのに。ああ、愉快愉快」
「う、うるさい! 主役は最後に出るの! そういうの、やりたかったんだもん!」
「何が『もん』よ。50のおばさんが」
「あんただって同じ歳じゃない! それに私
、この勝負に勝つ代わりに……」
そう言ってコルバーニさんはチラッと私を見た。
え!? なに、その何かを訴えかける目は?
「……リムちゃん、後で時間作って」
コルバーニさんは憮然とした表情でポツリと言った。
「抜け駆けは無しだからね、アリサ」
「ち、違う! そうじゃなくて今後の打ち合わせを……」
「だったらサブリーダーのあたしも入れてよね」
「貴様をいつサブにした! 私だろうが!」
「アンタみたいな泣き虫弱虫ダメよ。大体、メンバーを見たらどう考えてもリム・ヤマモトを支えるのは私でしょうが。将来も約束してるわけだし」
「そんなの認めん!」
「どこの頑固親父よ。アリサの意見なんて紙くずよりどうでもいいわ。ね? リム・ヤマモト。私は使えるわよ。いいわ、アリサ。じゃあライム様が見つかったらいったん離れるので、その間だけは暫定で譲ってあげる」
「……なんかお前と戦いたくなってきた。あそこのハゲはもういい」
「いっそそうする? 考えてみれば私たちがやりあった方が派手なデモンストレーションになるわよね」
「そうだな。お前にしては珍しくいい提案だ」
ああ……なんかとっても殺気立っている。
何とかしなきゃ……
そう思っていると、アンナさんがニコニコしながら二人に割って入った。
「まあまあ先生もおばさんも落ち着いて。もうここでやる事は終わったのでは? だったら次は仲間と仕事探しを……」
「アンナ、貴様は楽しんだからいいだろうが私はストレスが溜まってるんだ」
「引っ込んでなさい、チンチクリン。私もちょっとイラついてるのよ。……って言うかあんた、隅でコソコソとリム・ヤマモトに手紙渡してたけど、あれ何? あの後、アンタ急にやる気満々になってたけど、何書いてたの?」
「へ? ……お、お前に言う理由は無い! あれは勝負に向けて、戦略の確認をしてたんだ! で、ですよね、ヤマモトさん」
「へ? あ……そ、そう!」
「リム・ヤマモト、声がひっくり返ってるじゃないの。ごまかしで諜報員に勝てると思って? 何より……ゴメンね、リム・ヤマモトにチンチクリンが剣の技で助言を求める、ってのは不自然にもほどがあるでしょうが」
「失礼やな、リーゼはん。うちの事忘れはったの?」
ラームの言葉にリーゼさんがハッとした表情に変わった。
「あんたも知ってはるやろ? うちはライムはんの分身。彼女の剣の技も感覚もそのまんまこのオツムの中にある。さっきのはリムはんやなくて、うちが教えてたんや。ちなみに鎖切るのはうちのアイデアなんよ」
「……そうなの? リム・ヤマモト」
「う、うん! そう!」
「そ、その通り! 指輪、その節は感謝する」
ラーム、何たるハッタリを……
こんなんでごまかせるのかな……
「リーゼはんも見てたやろ? リムはんがレイスに切りつけてダメージ負わせた瞬間を」
「……リムちゃん、レイス……に」
コルバーニさんとアンナさんが目を見開いてじっと見てきた。
へ? それって……そんなに凄いの?
「分かったわ。ライム様の分身の言葉を信じないわけにはいかない。でもね、リム・ヤマモト。う、浮気はダメだからね!」
リーゼさんは目をちょっと潤ませながら泣きそうな表情で言った。
「は、はい」
とりあえず……収まったのかな?
「恩に着てや、リムはん」
ラームが直接脳の中に話しかけてきたので、ビックリした。
最初の頃にライムがやってた奴だ!
私も頭の中で返事を思い浮かべる。
「でも、なんで助けてくれたの?」
「え~だって、アンナはんとリムはんのデートなんて、こんなおもろいイベント、潰れてほしゅうないもん」
何と言う……
あ、みんなの言い争いですっかり忘れてた!
スキンヘッドさんたち、どうするんだろ。
と、思って目をやると……へ? スキンヘッドさんたちがさっきまでのうろたえようが嘘みたいにニヤニヤして……私を見てる!?
「お嬢ちゃん……リムって言うんだね。ごめんね。お兄ちゃんたち、チラッと聞こえちゃったけど君、リーダーなんだね。だったらリーダー同士の戦いで決着、ってのはどうかな?」
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