ロリコンさんとコルバーニ
「ああ……勇者補佐の希望ね……ちょっと今は空きがないかな」
窓口に座っている若い男性の職員は、心からめんどくさそうに私たちを見た。
「補佐の希望はそこの黒い服の男性ですよね? 剣士の補佐は希望者多くてね。大体1年待ちって所ですね」
職員さんはそう言うと、もう用は済んだと言わんばかりに机の上の書類に目を通し始めた。
ぬぬ……決めた!
この人の名前は
そんな事を考えながら憮然とした表情で睨みつけていると、先ほど勇者補佐希望と勘違いされていたクロノさんが悠然と言った。
「おい、お前。私を勇者とみるのは中々本質を見る目があると思うが、私では無い。補佐を希望しているのは隣のクソガキ二人だ」
「へ?」
「あ……いやいや。ぷっ……ああ、ゴメンねお嬢ちゃんたち。笑っちゃって……ええとね、確かに最近セイクリッド様に憧れる子供は多いけど、ホントにこういう所に来ちゃダメだよ。パパやママにいいよ、って言われたの?」
「……貴様、子供だからと……」
険しい表情で詰め寄ろうとするアンナさんを片手で制したコルバーニさんは、ニッコリと笑って言った。
「ううん。パパやママには何も言ってないよ。ねえ、お兄ちゃん。もし……私たちが他の補佐さん達や勇者さん達より強かったら、スカウトしてくれる人っているかなあ?」
「あ~、そうだと思うよ。おっきくなって強くなったらおいで」
その途端、コルバーニさんはあくどそうな笑みを浮かべた。
「言ったね、お兄さん。ちゃ~んと聞いたからね。言質は取ったよ。さて……お父さん、あとリーゼ。諜報員のお二人の目でちっと協力願いたいんだけど」
怪訝な表情の二人に向かってコルバーニさんは言った。
「この周りに居る勇者達の中でロリコンっぽい奴って誰? ゲスみたいにな男ならなおよし」
「……ああ、そういうことね。あほくさ」
「……亜里砂、怒らないからもう一度言ってくれないか? きっとお父さんの聞き間違いだな? 早くクマさんのぬいぐるみが欲しい、って言ってたんだろう?」
呆れた顔のリーゼさんと、鬼瓦のような顔のガリアさんを見ながらコルバーニさんはナイフでいそいそと……服の袖やスカートの下、そして……胸元の布を切り始めた!
えっ! スカート……短か過ぎない!?
ちょっ……胸元が……開きすぎ!?
「うっし! こんなもんかな。 どうかなどうかな、リムちゃん! お父さん! 色っぽくない?」
「……亜里砂、マントを着なさい。お父さんはお前には真直ぐに太陽に向かって咲く向日葵のような素直な娘に……」
「うんうん、ありがとありがと。所でリーゼ、どうよ。ロリコンいそう?」
「そんなの自分の目で見たら。あなたに協力する義理は無いわ」
「もし協力してくれたらリムちゃんのスリーサイズ、こっそり教えてあげるよ」
「はああ!?」
私は思わずコルバーニさんを睨み付けた。
だけど……リーゼさんは無言で、広間の真ん中に居る3人の剣士や僧侶らしき男性達を指差した。
「サンキュ、リーゼ。あ、ちなみにリムちゃんのスリーサイズ、計ったこと無いから分かんないや。ゴメンね!」
そう言うとコルバーニさんは軽やかな足取りでリーゼさんの指さした3人の男性の所に向かって行くと、1オクターブくらい高い可愛らしい声で言った。
「ねえねえ、お兄ちゃん」
突然呼ばれた3人は振り返った。
そして、3人とも分かりやすく……特に真ん中のスキンヘッドのいかつい男性が締まりの無い笑顔になった。
ってかコルバーニさん! 前かがみになると……えっと、胸が!!
「おうおう、あの兄ちゃんほんまに分かりやすいわぁ。いい感じにゲスな笑顔やし。リムはん行ってみる? リムはんもイケるかもしれへんよ」
「うるさい。絶対ヤダ」
そんな会話をしている間にスキンヘッドさんとコルバーニさんは話を進めていた。
「どうしたんだいお嬢ちゃん。迷子になっちゃった?」
「ううん、大丈夫。ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」
「なんだい? お兄ちゃんで出来ることがあれば聞いてあげるよ」
ああ〜もう! 胸元みるな! 足見るな! ロリコン!!
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