静寂の嵐(4)
「な……んで」
私は呆然としていた。
なぜ……ジャック君が……私に?
「鳥の盾……服の中に仕込んでるとは」
ジャック君は舌打ちすると、後ろに飛び退いた。
避けている服の下には無数の青い小鳥さん。
良かった……
サラ王女の一件以降、用心のためにいっつも服の中に入れといたんだ。
でも……まさか、こんな事で。
次の瞬間、ジャック君は私の顔に斬りかかったけど、青い鳥さんたちが顔を覆い守ってくれた。
「こざかしい真似を。でも、いつまでも続かない」
そう。
石の力はどうやら私の精神力に関わっているらしい事が分かってきた。
この鳥さん達も普段待機するだけならストレスゼロだけど、こういう動き回ってもらうときは一気に体力を持ってかれる……
「ねえ、なんで私を? 私……あなたに恨まれる事なんて。そもそも会ったばかりなのに」
「答える理由は無い」
ジャック君はそう言うと、腰の袋から何かの小さな粒を取り出し、それを飲みこんだ。
一体何を……
そう思った時。
「ヤマモトさん!」
聞き覚えのある声。
私は全身の力が抜けそうになりながら振り向いた。
「アンナさん!」
そう。
そこにはアンナさんが立っていた。
「アンナさん、来てくれたんだ! なぜか分からないけどジャック君が……」
そう言ってアンナさんに駆け寄ろうとした私の足はその場に止まった。
アンナさんの……冷ややかな表情と雰囲気に違和感を感じたのだ。
え?
「ヤマモトさん、もうそういうのは終わりにしませんか。つまらないお友達ごっこは」
「な……なんで」
「なんで? 逆に聞きますけど、あなたを守るのに今までどれだけの苦労がありました? それで金貨一枚ももらえない。疲れますよね。確かに助けてはもらったけど、もうこの前の一件で返し終わったと判断しました」
アンナさんは苦笑いしながら、早口で話した。
私は首を小さく振ると、後ずさりした。
「私たち……友達じゃないの? 仲間でしょ!」
「仲間だった、でしょ? 言葉の使い方間違えてないかしら」
私はアンナさんがまるで別人のように見えた。
身体が震えて涙が止まらない。
ああ……鳥さんたちが……消えていく。
「ジャック。今なら」
その言葉にジャック君とアンナさんが剣を構える。
私は泣きながら走り出した。
ジャック君? アンナさん? 分からない。
目の前の全てが。
だが、私の足は止まった。
目の前にクロノさんが現れたのだ。
「リム。どうしたんだ」
「クロノさん……」
私は泣きながら、クロノさんに近づいた。
「聞いて! アンナさんが……アンナさんが!」
「アンナがどうした」
「私に剣を……なんで! なんで!」
「そうか……では手を貸すんだ」
私は震える手をクロノさんに差し出した。
すると……クロノさんは私の手を強く握るとそのまま言った。
「ジャック。アンナ。リムを捕まえたぞ」
私は何も考えることが出来ず、ただ呆然としていた。
嘘つきに囲まれてるって……もしかして。
「有り難う。クロノ、アンナ。ではそのままで。復讐の最後は僕にお願いしたい」
そう言うとジャック君が近づいてきた。
私は何も考えることが出来ず、もはや抵抗の意思も失い、ただクロノさんとアンナさんを見ていた。
どうして……全然分からない。いや、分かりたくもない。どうでもいい。
その時。
ジャック君が足を止めて、首をかしげた。
私はボンヤリと後ろを見て、そのまま目を見開いた。
そこに……居たのは。
「コル……バーニさん」
「アリサ・コルバーニ……追いついたか」
赤い服に赤いリボン。
そして……暖かくて優しい笑顔。
そこに立ってたのはずっと会いたかった人……コルバーニさんだった。
「コルバーニさん……」
私は安堵と共に、恐怖感もあった。
コルバーニさんまで……もし。
そんな私にコルバーニさんは言った。
「リムちゃん。久しぶりだね」
何も言えずに泣きじゃくる私とジャック君やみんなを交互に見ると、ため息をついて言った。
「さてと。久々に戻ってみると、エラい修羅場だねえ。君は誰だい? 少年」
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