私たちの親父
みんなと建物を出ると、そこは日の光差し込む通りだった。
ああ……お日様だ。
「あ……あの……これ、少ないけど、お詫びって事で……」
そう言うと、ウィトンさんは私に何かがぎっしり詰まった皮袋を渡してくれた。
僅かに開いた口から見えるのは……眩く輝く金貨だった!
「中に100ゴールド入ってます。俺がいながら何てことに……アンナの姉御にも合わせる顔が無い」
「い、いえ! これは受け取れません! お返しします。所で、コルバーニさん……アンナさんとライムは無事なの?」
「リムちゃん。ライムちゃんはね、ちっとばかりやることがあるって、別行動することになったんだ。またすぐに会えるよ。ちなみにアンナはリムちゃんが巻き込まれたあの件の後、やってもらう事があるので、そっちに行ってもらっている。あの子で無いと出来ない任務だからね。最後までリムちゃんを助けにいきたい、ってすごくごねてたけど、あの子じゃ多分皆殺しにしかねないからね~」
「そう……なんだ」
私はその言葉にすぐに安心することは出来なかったけど、コルバーニさんはそれ以上何も言おうとしなかったため、私も何も言えなかった。
でも……ライムなら大丈夫……だよね。
私は無言で頷いてサリアちゃんの手を取った。
「……ありがと……ごめんなさい。あなた……嫌な目の合わせたのに」
「いいよ、気にしないで。助けてくれたじゃない。あなたが居なかったらどうなってたか」
そう言うとサリアちゃんは泣きそうな表情で笑顔になった。
そしてリード君は私に向かって深々と頭を下げた。
「有り難うございます。俺たち、身寄りも無いし金も無い。たまたま世話になったおっさんが、女を売り飛ばすための仲介業者をやってて……断るとサリアを売ると言われてたから……本当にすいま……せん」
そうだったんだ。
確かに怖い思いはしたけど……でも、この子達も被害者なんだ。
そう思いながらお日様を見ていると、リード君がおずおずと言った。
「あの……お詫びにもならないけど……良かったら、俺たちの最初の親父の所に案内します。何かお役に立てるかも」
え?
驚いてコルバーニさんとウィトンさんを見ると、以外にもコルバーニさんはウンウンと頷いていた。
「ホント! ありがと~じゃあお言葉に甘えちゃおうかな」
いいんだ………コルバーニさんがいいと言うなら……ただ、アンナさんにも一刻も早く会いたいけど、別の任務じゃ仕方ないよね。
「有り難う。ぜひ……案内してくれないかな? 会いたい」
ウィトンさんと別れた後、リード君とサリアちゃんに案内され、カーレの表通りを歩いていると……いけないと思いながらも徐々に不安感と自己嫌悪の気持ちが出てしまう。
今度は……大丈夫かな。
そんな気持ちを自覚すると、悲しくなってしまう。
ああ、ダメだ。
私、二人を疑っちゃってる。
そんな事を考えながら足取りが重くなっている私を見て、サリアちゃんが言った。
「ゴメン……なさい。……怖い……私たち。だよね。……当然。酷いこと……した」
「あ! ごめん……なさい。そんなこと……ないけど」
戸惑いながら言う私にリード君が笑いながら言った。
「いいんです。無理しないで。でも、あなたを酷い目に遭わせる気は本当にありません。それに赤いリボンの子もウィトンさんも目を光らせてますし、俺達がどうこうは流石にもう出来ないですよ」
「あなたたちは……ウィトンさんの事を知ってるの? じゃあ何であの人の奴隷船に乗ってたの?」
「ウィトンさんとは直接の面識はありません。サリアが仕事をミスっちゃって、それが結構でかい奴だったからその分の損害を補うために奴隷として……って奴です」
あ、前にドラマで見た「金返せないなら、マグロ漁船に乗りな!」って言うアレみたいな物か……
私たちはそのまま大通りを歩いて行った。
リード君の言うとおり、ここまで特に何事も無く歩いて行っている。
やがて、通りを外れて少し開けた場所に出た私は、道の向かいにある大人の背くらいの高さの赤茶けたレンガを積まれた塀を見た。
塀の向こうには小さめの病院のような感じの建物が有り、そこから子供達の大きな声が聞こえてきていた。
この感じ……覚えがある。
「ここです。俺とサリアが育ったところは。この孤児院の院長があなたを会わせたい人です」
そう言って、今度はサリアちゃんが小走りで門に駆け寄ると、鉄のきしむ音を立てながら開けた。
「……着いてくる……連れていく」
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