おじいちゃんの2つの罪
「あの……39年だと」
「えっ、そうなの! そんなに経っちゃったんだ……驚きだね」
……驚きなのはこっちなんですけど。
こんな可愛い子が51歳。
しかも同じ日本からコッチに来た人。
ああ、また今日も凄い情報量が。
私が思わず頭を抱える横で、ライムが静かに言った。
「……コルバーニさんと言いましたね。どなたの力です? その身体、お見受けする限り不老不死かと」
「ん? 妖精ちゃんエラくテンション変わったね~。どしたの?」
「無礼があれば失礼します。ただ、答えて頂けると幸いです」
「ヤダ……なんて言える感じでもないか。じゃあ後で2つお願い聞いてもらおうかな。それでいいなら話すよ」
「もちろんです。こちらの山本りむがどのような望みもお引き受けします」
「はあ!? ちょっと!」
「この人の事知りたくないの? りむもそういう嗅覚ややる気を持たなくちゃ! こんな51歳、いないでしょ」
そりゃそうだけど……って言うか何で怒られてるの、私?
「それに……この人、多分ユーリと関わってる」
「え!」
私はさっきまでの怒りが一瞬で凍り付いた。
おじいちゃんと……でも、なんで。
「ほお? お二人ユーリさんとお知り合い? ビックリだね~こりゃ偶然」
「偶然……かどうかはさておき、お聞かせ下さい」
「ふむ、了解。と、言っても大した繋がりじゃないよ。私が初めてこの世界に来て彷徨ってる時、サーベルタイガーに襲われちゃってね。死にかけてたらユーリさんが助けてくれたんだよ。血みたいなのを飲ませてくれたのかな? すると……傷が治ってね。それから一緒に旅してくれて、このカンドレバの街まで連れてきてくれて。そこで昔なじみって言うコルバーニ夫婦……この世界での私の両親、に預けてくれたんだ」
「おじいちゃんが……そんな事」
「『君への罪滅ぼしだ。決して許されない2つの罪を君に与えた事への』って言ってね。1つはこの不老不死だろうけど、もう一つは……なんだろね? とにかく、あの人は命の恩人。すっごく優しい紳士だったし。不老不死はちっとばかりヤレヤレだけど、しょうがないよね」
コルバーニさんの話をライムは眉1つ動かさずに聞いている。
「これでいいかな。ライムちゃん?」
「あと1つだけいいですか? あなたと行動していたとき、ユーリの見た目は何歳くらいでしたか?」
「は? 何言ってるの、ライム。この時は39年前だからおじいちゃんは31歳……」
だが、コルバーニさんの返答は予想もしていない物だった。
「ああ、そんな事。すっごくダンディなおじいちゃんだったよ~。見た感じ80歳台くらいじゃないかな? 良くあんなに動けるな~ってビックリしたもん」
え?
80……歳。
「ね、ねえ? ライム。これって……」
だが、ライムは私の言葉など耳にも入っていない様子で、見たことも無いほど険しい表情をしていた。
「りむ。ユーリを早く……探そう」
「う、うん。もちろんそのつもりだけど、なにがどうなってるの?」
ライムが口を開きかけた時、「リムちゃん!」と言う声が聞こえたので、顔を向けるとオリビエとブライエさんが走ってくるのが見えた。
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