シンドローム
魔法……太古の昔に消えた。
ま、まあ確かにあんな青い鳥とかとんでもない物、みんながみんなポンポン出してたら逆に怖いよね。
ただ、魔法ってゲームとかでよく見るあの「魔法」だよね。
なんで消えたんだろう。
「さあ、何ででしょうね」
「キャッ!」
しまった。
脳内にいきなりライムの声が聞こえたので、驚いて思わず声上げちゃった。
そういえば、これからは人が居るときは私の意識に直接話しかける、とか言ってたな。
「おバカちん! 声出さないでって」
「ごめん。ねえねえ、この世界って昔は魔法があったの?」
「あったよ。太古の昔だけどね。それどころか、エレベーターや自動車もだし、銃や戦車はもちろん核兵器っぽい物もあった。音楽だってCDプレイヤーで聞いてたし、掃除用ロボットもあった。ああ……それどころか最盛期にはりむの世界で言う、AIに近い物も生まれそうだった。それを使って船を作り天の頂まで目指そうとしてたんだよね……あいつら」
え?
自動車、しかもAIって……
「それってまんま私の世界じゃない?それがなんでこんな風に」
「……ねえ、りむが熱心に読んでた医療の本に『廃用症候群』って言葉、あったじゃん」
「え? うん、あったよ。身体を長時間動かさないと、その動かしていない部分の筋肉が弱って身体機能や心の働きを大きく落としてしまう、って言うやつね」
なんでそんな話を急に……
「ご名答。この世界はそんな症候群のなれの果て」
そう話すライムを見て、私はゾッとした。
そこに居たのはここまで見てきたライムでは無く……冷ややかな笑みを浮かべる、別の「誰か」だった。
「あ、あの……ライム?」
「ま、詳しくは
そうはしゃぎながら顔の周りをグルグル飛び回っている、ライムを見て私はホッとした。
私の知ってるライムだ。
「全然イケてない」
「え! 酷くない、それ」
その時……オリビエの申し訳なさそうな声が聞こえた。
「あ~、今って話しかけても大丈夫かい?」
あ、しまった!
ライムとのやり取りに夢中で。
「あ! うん、大丈夫。ゴメンね」
「なら、良かった。いくつか話したいことはあるが、まずは君の同行者らしき何かを俺たちも見れるようにしてもらえるかな?でないと結構ビックリする」
あ、やっぱりバレてたか。
「でしょうね~。りむ、ほんっと超絶に演技下手だよね」
「もう! そもそもこんなの無理あるって」
「ま、でもこれからずっと行動を共にするなら、隠し通すのは無理だよね。オッケー、ご要望に応えちゃおう」
「え? 大丈夫なの」
「いいんじゃない。見る限り、コイツら信用できそうだし。信用出来なきゃオサラバするだけ」
そう言うとライムはジンワリと絵の具が
「なるほどな……」
オリビエはホッと息をついて言った。
隣のブライエさんも眉間に
「お初にお目にかかります。私はライム。訳あって彼女に同行している妖精です。元々はこの世界に居たのですが、
そう言ってライムは流れるような仕草で頭を下げた。
ってか、私の時と全然違うじゃない……
「ご丁寧な挨拶痛み入る、ライム殿。私はオリビエ・デュラム。様々な依頼を受けて、その日の生計を立てている冒険者です。リム殿には命を救われた。このご恩は同行者たるあなたも含ませて頂きたい。リム殿とあなたのお二人を、居るべき場所に帰るまで守ることを、この剣にかけて誓います」
オリビエはそう言うと、美しい所作で頭を下げた。
「私はブライエ・ディア。こちらのオリビエとは幼少期以来行動を共にしています。その縁により現在も共に依頼によって禄を得る日々を送っています。オリビエの恩人は私の恩人。よって同様に、あなた方を命に代えてもお守りします」
ブライエさんも、実に無駄の無い惚れ惚れするような所作だった。
この二人何者なんだろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます