力の切っ掛け
「さて、すっかり打ち解けたところで、質問いいかな? リムちゃん、君は一体何者だ」
オリビエ、直球で来たな……
何て答えよう。
って言うか、何となくこの人に嘘は通じない気がする。
仕方ないので、ここまでのいきさつを正直に答えた。
ペンダントの事は迷ったが、ライムが「これはりむ以外にとって、石ころだから」との事なので、話すことにした。
ただ、ライムの事だけは彼女の要望で黙って置いたけど。
これからは人がいる時は私の意識に直接話しかける、だからりむもその時は言葉を思い浮かべるだけでいいとの事らしい。
いや、それもどうかと思うけど……
オリビエは話の間、ずっと目を細めて私を見ていた。
それは何となく、心の底まで見られているようだ。
私が話し終わると、オリビエはニッと笑って軽い口調で言った。
「了解、分かった。君の言葉、信じよう」
「おい! あんな話を信じるのか?」
「だからだよ。俺たちを欺くならこんな
流れるようなオリビエの言葉にブライエは黙り込んだ。
「オリビエとか言う人、ぱっと見チャラそうだけど油断できないね」
ライムの言葉に私も心の中で頷いた。
この人の話を聞いてると、どこまでも見透かされているのかな? と思えてゾッとする。
「と、言うことは君はおじいちゃんを見つけたい訳だ。そして元の世界へ帰りたい。じゃあ、俺たちが出来る恩返しは、君のおじいちゃんが見つかるまで君の安全を保証する、って事だな」
「あんな力があるのに、私たちの助けはいるのか?」
「必要だろう。違ってたらすまないが、恐らくさっきの力は君の強い感情に呼応しているようだ。で、無ければ俺と追っ手達に割って入ったあの時点ですぐに発生させてるはずだからな。いつ切られてもおかしくなかった訳だし。だが、実際は君があの叫び声を上げたとき……感情の高ぶりが頂点に達したところで発生した。って事は、いつでも自由にあの力を出せるわけじゃないんだろう。切っ掛けが必要だ」
え? そうな……の?
私はオリビエの言葉をポカンしながらと聞いていた。
「マジか、この赤毛……全部正解だよ」
右肩のライムが呆然とつぶやいた。
「やっぱりそうなの?」
「そう。あの力はりむの何らかの感情が頂点に達したとき『盾と治癒のみ』発動される。ってか赤毛、あの一回だけで……何で?」
「俺の推理は正解かな?それとも不正解?」
オリビエのイタズラっぽい笑顔を見ながら私は頷いた。
「その……通りです」
「おっ、やった! 珍しくカンが当たったぜ。サンキュ、リムちゃん」
「サンキュ、じゃない!お前はべらべら手の内をしゃべりすぎだ」
不機嫌な口調で言うブライエさんに、オリビエは両手を合わせた。
「悪い! リムちゃん可愛いからさ、ついテンション上がっちゃって。いいとこ見せたくなったんだって」
「……まあ、いいだろう。どちらにせよ、リム殿は私たちと行動を共にせざるを得ないのだからな」
キョトンとする私に向かって、ブライエさんは重々しい口調で言った。
「気付いてたか。あの場には私たち以外にもう1人居た。あの場に姿を見せず、恐らく状況報告のためだろうが。仕留めるつもりが、逃げられた。恐らく私とオリビエ。そして……リム殿の事も報告している」
「鉄仮面の言う通りだ。済まなかった、俺たちの事情に巻き込んで。だが、君の存在が知られた以上、俺たちと離れては行けない。君1人じゃいつか殺される」
殺される。
オリビエの口から放たれたその言葉は、私の心胆寒からしめるに充分だった。
軽く震え始めた私を見て、オリビエは私の頭を軽く叩いた。
「大丈夫だ。君の事は俺とブライエが命に代えても守る。おじいちゃんと元の国に帰るまでは絶対に。君にもらったこの命。君のために使わせてもらうよ」
そう言って私の目を見て、優しく微笑むオリビエを見ながら私は自分の顔が熱くなっていることにようやく気付いた。
彼の笑顔はまるでおじいちゃんの様だった。
優しく、全てを包んでくれるような暖かさ……
「あ、それと君は今後、よほどの事が無い限りさっきの力は使わない方がいい」
「え? それは……何で」
オリビエの言葉に驚いて返した私に、彼は生徒に説明する教師の様な口調で話した。
「この世界で君の出した力は、今現在この世界のどこにも存在しない。遥か太古の昔にこの地上から消えた力……『魔法』にそっくりなんだ。俺もブライエも歴史の文献でしか見たことがない。君の力は……そういう力だ。あんなのポンポン出してたら、世界中から狙われるぞ」
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