第7話 勇者の要求

 ゴーレムが消えるとすぐに、ラミーダが、こちらにやってきた。


「ねえ、れい……何だって?れい………ぷ?」


「まだ、言ってたのかよお前。いい加減くだらない下ネタから離れてくれ。」


 なぜ、そこまで下ネタに執着するのだろうか。俺に恥ずかしい台詞をどうしても言わせたいのだろうか。


 というか、ラミーダがこんなんだと、これに倒された五大将軍が若干可哀想である。多分、ラミーダは蚊を叩き潰したくらいの感覚なんじゃないだろうか。


「おいラミーダ、あのゴーレムを倒してくれてありがとな。」


 一応、お礼は言っておく。別に、一人でも倒せただろうから、助けられたという訳でもないのだが、手間が減ったのは事実だ。


「別に気にしなくてもいいーよ。何だっけ、あの……アイサツシマショー……みたいな人、弱かったからさ。」


「そんな町のスローガンみたいな名前じゃねえよ。アイガスショーだ、アイガスショー、倒した敵の名前くらい覚えといてやれ。」


 ラミーダ、お前あいつの名前聞いて、よろしくねーとか言って、自己紹介返してたじゃないか。大概適当だなこいつ。


 そんなラミーダに呆れたが、すぐにラミーダに構ってる場合じゃないことを思い出す。


 早く領地に戻って、魔皇帝軍を迎撃する準備を整えなければならないのだ。まあ、五大将軍とやらが、あの程度の強さだったので、少し拍子抜けしているところはあるが……。


 五大将軍って一体、どの程度の位置づけなんだろうかと、素直に疑問に思いつつも、領地に向けて足を動かす。


「……なあ、何でついてきてんの、ラミーダ?」


「うーん、割と暇なのと、お腹が空いたから、かな?」


「何で、俺がお前に飯を食わせないといけないんだよ…。」


「えー、けち。ご飯くらい食べさせてよ。私だけのフルコースで食べさせてよー!」


 どうしてこいつは、そんなガッツリ食うつもりでいるんだ。この世界じゃ、フルコース持ってんの多分お前だけだ。


 まあ、でも、こいつはうまく使えば意外と戦力になるかもしれない。アイサツシマショーを瞬殺してたし。


「お前が、協力してくれるって言うなら、フルコースは出せないけど、飯くらいなら食わせてやるよ。」


「……もう一声!」


「これ以上、何が望みだよ。」


 別に、俺としては、ついてきてもらわなくてもいいのに、図々しくも、さらなる報酬を要求してきやがった。


「家。」


「…は?」


「だーかーらー、お家!私、今、住む家がないの!住所不定なの!だから、家ちょうだい。」


 …こいつ、捕まる前は、どうやって生きてたんだろう?飯も家もないって、本当に何も持ってないじゃないか。


 しかし、逆に好都合じゃないか?勇者を自分の領地で制御かつ監視でき、戦力としても使えるというのは悪くない話だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る