第6話 VS将軍ゴーレム

 俺が、攻撃を仕掛けようとしたとき、ゴーレムが口を開いた。


「俺は……魔皇帝が…五大将軍の一人……岩巨人の…アイガスショーだ…。」


 何か急に自己紹介をはじめた上に、地味に強キャラっぽい肩書きだな。その肩書きで、びびらせるつもりか?生憎と、こっちは肩書きなら裏ボスだから負けているつもりはない。


 そんな言葉に惑わされるつもりはない、と気合いを入れ直したとき、横から声がした。


「はーい、私の名前はラミーダ。よろしくねー。」


 お前は、律儀に自己紹介を返してる場合か。そんなことされると、引き締め直したこちらの気合いまでもが緩む。いよいよもって、ラミーダが邪魔だ。


 ラミーダの言葉に、ゴーレムは当然のように何も言葉を返さない。代わりに、体から、砂煙を巻き上げた。


 目くらましか。


 まずい、先手を取られたと思ったのも、束の間、ラミーダの方に、大きな衝撃が起こった。


 ゴーレムが、目くらましと共に、その巨大な腕をラミーダに向かって、振り下ろしたのだ。別に、ラミーダの事なんて、放っといても良かったはずだし、むしろ始末して欲しかったくらいなのに、目の前で攻撃を受けているのを見て、つい、心配の声をあげてしまった。


「大丈夫か、ラミーダ!残りのライフ……ぷっ……には気をつけろ。」


 砂煙が邪魔だ。口を開くと、砂が口の中に入ってくる。いちいち、砂を吐き出さないとまともに喋ることすら出来ない。というか、ラミーダは無事なのか?もしかして、即死じゃないよな?


 そんな事を思って、ラミーダの方を見ると、砂煙の中から声がした。


「え、何?残りの…何だって?れい…ぷには気をつけろって言った?」


「そんな事、言ってねーよ。ライフには気をつけろって言ったんだ。」


 大分、余裕じゃねーか。少しでも心配して損した。それにしても、ふざけた聞き間違いだ。


「ごめん、聞こえなかった。もう一回言ってもらってもいい?れい……何だって?」


 聞き間違いじゃない、確信犯だろうな、こいつ。これが、本当に勇者の姿か、と嘆いてしまいたい気分になる。


 当然、ラミーダのことは無視だ。俺には、一刻も早く、このゴーレムを倒さないといけない理由がある。


 そう思って、ゴーレムに向かって、攻撃をしようとしたときに、はじめて違和感に気づいた。


 ……ゴーレムの攻撃が止んでる。力を溜めているのだろうか、と思ったが、砂煙が晴れ、その予想が間違っていることを思い知った。


 ゴーレムの腹に、巨大な穴が空いていたのだ。


 初め見たときには、当然ゴーレムの腹に、こんな穴は空いていなかった。ゴーレムの技が何かかとも思ったが、そのゴーレム自身が苦しそうなうめき声を上げている。


 信じがたいことだが、この勝負はすでに決着がついているようだ。


 俺は、まだ何もしていないので、これをやったとするなら、ラミーダしかいない。あんな、どうでもいい会話をしながら、一発で倒したのか…。めちゃくちゃな奴だな。


 そんな風にラミーダのことを考えていたら、死にかけのゴーレムが何か言っているのが聞こえた。


「……俺を倒しても……すぐに別の……五大将軍が…お前らを…倒すだろう……。」


 …ベタな台詞だな。ここまで、ベタな去り際の台詞を聞かされると、次にやってくる五大将軍とやらが、「奴は五大将軍の中でも最弱。」とか言ってきそうな気がする。


 何一つ感動的なものはなく、ゴーレムはサラサラと砂になって消えていった。あっけないが、一応は勝利だ。まあ、俺は特に何もやっていない訳だが…。

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