第240話天使侵攻9

砂埃の舞う中、ゆっくりと立ち上がったアンジェリクが、

口を開く。


「き、貴様は、不死身なのか・・・・・」


アンジェリクが、そう言うのも仕方が無い。


天敵である天使から、あれ程の攻撃を受ければ

死に至るほどの怪我を負い、

すぐに回復することなど、不可能。


だが、エンデは、すぐに回復してみせただけではなく

攻撃までも、仕掛けてきた。


その為、隙をつかれ、現在に至る。



「本当に、驚かされる・・・・・

 だが、二度と同じ過ちは犯さぬ」


アンジェリクは、自身に回復の魔法をかけ

傷を癒すと、今度は、自ら、エンデに接近戦を仕掛ける。




その頃、ゴージアと対峙することとなったカスティーヌだが、

やはり、力の差があり、ボロボロになっていた。


「やはり1人では、無理だったか・・・・・

 だが、このままでは終わらぬ!」


『我が剣に宿るは、色欲の化身。


 今、再び顕現し、目の前の怨敵を

 闇へと葬れ』


カスティーヌの呼びかけに応え

レッドスコーピオンが姿を現した。


「行け!

 奴を倒すのだ!」


レッドスコーピオンは、前進し

ゴージアに、襲い掛かる。


360度、死角のない尾を使った攻撃は、

ゴージアに、反撃の隙を与えない。


「いいぞ、このまま押し切れ!」


カスティーヌの声に反応し

レッドスコーピオンの攻撃の速度が上がるが

それでも、ゴージアには、余裕があるように見える。


──なぜ、当たらぬ・・・・・


そんな疑問を抱いていると、突然、何かに弾かれたように

レッドスコーピオンが、吹き飛んだ。


「!!!」


何が起きたのかわからないカスティーヌの前に

姿を見せたのは、ダバンだった。


「間に合ったようですね」


ゴージアが問いかけると、砂埃の舞う中

ダバンが答える。


「待たせたみたいだな」


「いえいえ、問題ありません」


「感謝するぜ」


言い終えると同時に、飛び出して行ったダバンは

未だ、態勢の整っていないレッドスコーピオンに

蹴りを入れて、尾を破壊した。


すると、声にならない声を上げ、紫の液をばら撒きながら

暴れるレッドスコーピオン。


「まだ、終わらないぜ!」


再び、飛び上がったダバン。


それに対し、レッドスコーピオンは、両爪を掲げた。


だが、今のダバンには、関係ない。


レッドスコーピオンの攻撃に反応して

褐色の肌に、無数の赤い線が浮かび上がる。


これは、ダバンが魔人として、覚醒し

力を得た証拠なのだ。


その力を、遺憾なく発揮し、

レッドスコーピオンの両爪と、頭部を破壊して

ダバンの動きが止まると

事切れたように、レッドスコーピオンは、崩れ落ちた。


「何が、どうなって・・・・・」


抵抗もできず、ただ、一方的に倒されたレッドスコーピオンを前に

呆然としているカスティーヌだが、まだ、戦いは、終わっていない。


足を止め、呆然としていると

その背後から、声が聞こえてくる。


「残念でしたね。


 まぁ、直ぐに貴方も、同じところに、送って差し上げます」


その言葉通り、カスティーヌの胸には、

ゴージアの腕が、突き刺さっていた。


『ゴフッ・・・』


口から血を吹き出したカスティーヌに、

ゴージアは、淡々と告げる。


「若様を狙った報いです。


 四肢を砕かれ、生き地獄を味わなかっただけでも、

 感謝してください」


そう言い放ち、カスティーヌの体から

腕を引き抜くと、カスティーヌは、地面に倒れた。


「さて、残るは、若様だけですので

 そちらへ向かいましょうか」


「ああ、そうだな」


こうして、カスティーヌを屠ったゴージアとダバンは

エンデのもとへと向かった。



一方、そのエンデはというと・・・・・

アンジェリクを、一方的に打ちのめしていた。


「貴様が、これほどの力を隠していたとは・・・・・」


そう告げたアンジェリクの前に立つエンデは

淡い新緑の光に包まれ、漆黒と純白の翼の他に

淡い新緑の羽根を生やしていた。


そんなエンデに、再び攻撃を仕掛けるアンジェリク。


「貴様は、何者なのだぁぁぁぁぁぁ!!!」


最後の力を振り絞り、一撃を放つが、

その攻撃を、エンデは、片手で受け止める。


「もう、負けを認めなよ。


 そして、天界にいる者達に、

 もう二度と、関わらないで欲しいと告げてくれないかな?」


「貴様、何を・・・」


「僕は、この世界を手に入れようとは思っていない。


 勿論、天使族の里に、攻め込む気もないよ。


 僕は、仕掛けてこなければ、戦うつもりもないんだ」


「だが、貴様は、現実、我らの同胞を、屠ったではないか!」


「それは、君達が、攻めて来たからだよ。


 殺しに来た者に、情けをかけるほど、僕は、お人よしではないからね」


「なら、なぜ、我を生かす?」


「そんなの決まっているよ。


 このまま戦えば、この戦いは、どちらかが消滅するまで続く。


 そうなった時、一番被害にあうのは、

 人族と魔族、それに天使族の中で

 力に秀でた才能を持っていない一般人だよ。


 無関係な者ほど、多くの被害を受ける筈だ。


 僕は、そうならない為に、ここで終わりにしたいんだ」


確かに、言っていることに、間違いはない。


アンジェリクは、拳から力を抜いた。


「貴様の言いたいことは理解した。


 だが、今すぐの返事はできぬ。


 マリスィ様に報告した後、返事をする」


そう言い残したアンジェリクは、

冒険者達に肩を借りて、この場から、去って行った。



その後、その光景を見ていたダバンの目が、漆黒に染まる。



そして、体に刻まれた赤い線から、禍々しいオーラが・・・・・


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