第237話天使侵攻6

ゴージアが向かった嘆きの沼では、

今だ、デモンとエンデの話は、続いていた。



今までは、アンデットを生成し、エンデのもとに送り込むことで

手助けをしていた。


しかし、これからは、違うという。


「どうするの?」


「こうするのさ」


デモンが、エンデに向けて、何かを飛ばすと

それは、エンデの体の中へと吸収された。


「えっ!

 何?

 今の?」


「まぁ、落ち着いて。


 別に、悪いものじゃないから」


デモンが、説明する。


「君の中に入ったのは、僕の力の一部なんだ。


 その力が、上手く馴染めば、

 今まで以上の力を得ることが出来るよ・・・って

 もう、馴染み始めているようだね」


デモンの言葉通り、エンデの体が淡い光に包まれていた。


──この光・・・見たことあるような・・・・・


そう思っているところに、デモンが再び声をかけた。


「今の状態をみると、馴染むのも早そうだから

 そろそろ行こうか」


デモンは、上を指す。


そう、ここは嘆きの沼の中。


2人は、沼の中で話していたのだ。


その為、水面に向かって進み始めた。


そして、水面から顔を出すと、正面に、ゴージアの姿が見えた。


「あっ!

 ゴージア!」


「若様!」


ゴージアは、安堵の表情を見せたのだが、

直ぐに、険しい表情へと変わる。


──あれは、いったい・・・・・


視線の先にあるのは、エンデの背後にいる怪しい物体。


嘆きの沼と一体化しているようだが、

時折、分離し、人型のようにも変化している。


ゴージアが声をかけた。


「若様、その者は?」


「彼は、デモン。


 この沼の関係者らしいよ。


 父上や母上のことも、知っているみたいなんだ」


「ベーゼ様とノワール様のことを・・・・・」


ゴージアの視線が、一層強くなるが

そんなこと、気にも留めていないのか

デモンが、エンデの前に出た。


「ゴージアだったね。


 君も、僕のことは知っているはずだよ。


 まぁ、直接会うのは、初めてだけどね」


「私が知っている・・・・・」


「君、この沼で、眠りに就いていただろ」


「確かにその通りですが?」


「あれ、僕の力だから」


「なんと!」


「今は時間がないと思うから、その内、ゆっくり話すよ」


「確かに、仰る通りですので

 後ほど、お茶でも、お持ちいたしますので、

 話は、その時にでも」


「ああ、そうだね。


 楽しみにしているよ」


会話を終えたゴージアが、エンデとともに

嘆きの沼から離れようとした時、デモンが、声をかけた。


「ちょっと待ってくれるかな?」


エンデとゴージアの足が止まる。


「悪いけど、もう少し、いてくれるかな?」


デモンは、そう告げた後、

エンデ達から、離れた場所に向かって、呼びかける。


「隠れていないで、出ておいでよ」


その声に従い、ダバンが、姿を見せた。


「ダバン、うまく逃げれたんだね」


ダバンは、その問いには答えず

エンデの正面に立つと、跪いた。


「主、申し訳ない。


 まったく、力になれなかった・・・」


自身を、不甲斐なく思い、頭を下げるダバンに

エンデが、告げる。


「十分に、力になっているよ。


 感謝しているんだよ!」


エンデがそう告げても、ダバンは、頭を上げようとはしない。


「ダバン・・・・・」


エブリンやホルストを筆頭に、エンデに近い者達には

何かしら、恩恵があった。


だが、ダバンには、そう思えるものがない。


確かに、身体能力は、上がっているのかもしれないが

それは、目に見えてと、思える程でもなかった。


エンデは、本当に感謝している。


だが、今それを伝えても、ダバンは、納得しないだろう。


そう思うと、かける言葉が見つからないのだ。


しばしの沈黙が訪れたが、そんな空気を破るように

デモンが、口を開く。


「ダバン?でよかったかな?

 君は、人族の世界の人だね」


「ああ・・・」


「君は、元々、相当強かったみたいだけど

 あっているかな?」


「確かに俺は、魔物の王とも呼ばれていた。


 だが、そんなもの、井の中の蛙でしかない」


「うんうん、わかるよ。


 人族の世界で、いくら強くても、

 ここでは、思った以上に役に立たなかったんだからね」


その発言に、エンデが声を上げた。


「ちょっと、デモン!!!」


「ああ、ごめんごめん。


 悪気はないんだ。


 ただ、本当に気が付いてないみたいだから、

 ちょっと、からかっただけだよ」


「気づいていない?」


「おっ!

 やっと、顔を上げたね。


 では、ここからが、肝心な話。


 ダバン、君はもう、もう恩恵は、授かっているよ。


 ただ、ただね、それを開花させるのには

 条件があるんだ」


「条件?」


「うん。


 それは、戦いの中で、見つけるものだけど

 今は、それほど余裕があるわけではないから

 選んでくれる?


 僕が力を貸し、恩恵を開花させる。


 もう一つは、開花するのを待つ。


 時間がないから、選んでくれるかな?」


突然、選択を迫られたダバンが

ゆっくりと口を開く。



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