第235話天使侵攻4
額から汗が垂れるカスティーヌに
背後に控えていたアンジェリクが、再び声をかける。
「油断をするなよ。
まだ、何か隠しているかもしれぬ」
「・・・はい」
カスティーヌは、再び、剣を構えようとしたが
もう片手に、先程、拾い上げたスマトラの槍を握っていたことを思い出した。
──スマトラの『怠惰の槍』・・・・・
これを使えば・・・・・
カスティーヌが、アンジェリクの声をかけた。
「アンジェリク様、一つ、やってみたいことがあります」
「どういうことだ?」
「はい、この槍を、使えばと思いまして・・・」
アンジェリクの視線も、怠惰の槍に注がれる。
「お前の言いたいことは分かったが
その槍の主は、スマトラだ。
主を失ったその槍が
お前の呼びかけに、応えてくれるのか?」
『怠惰の槍』から呼び出すのは、巨大な
もし、呼びかけに応えてもらえたのならば、1対1の戦いに持ち込める。
しかも、カスティーヌ自身も、剣が使えるのだ。
それだけに、応えてほしい・・・・・。
カスティーヌは、左手に力を込めて願う。
──怠惰の槍よ・・・・・
貴殿の主は、目の前の邪悪な者達の手により
この世を去った・・・・・
もし、貴殿に、主を思う気持ちがあり
奴らを倒すというのならば、我の魔力を授けよう・・・・・
カスティーヌの言葉に、応えるように
怠惰の槍が光を放った。
カスティーヌが、笑みを漏らしながら
大声で叫ぶ。
「そうか、ならば、我が力、遠慮なく持ってゆくがいい!」
怠惰の槍に、大半の魔力を授けたカスティーヌが
アンデットドラゴンに向けて投げつけた。
すると、怠惰の槍は、光を放ちながら、巨大な蝸牛へと変化し
アンデットドラゴンの正面に、姿を現したが
カスティーヌは、以前見た蝸牛と違うことに気づく。
「これは、どういうことだ?」
以前の色と違い、体が赤いのだ。
その容姿に、カスティーヌが驚いていると
蝸牛が、アンデットドラゴンに向けて、
炎を吐いた。
だが、サルバドは、翼を動かし
炎を払い、攻撃を寄せ付けない。
「人の言葉も話せぬ、愚鈍な魔物の攻撃など
我には届かぬわ!」
お返しとばかりに、サルバドが、ダークブレスを放つと
蝸牛は、殻の中に、体を押し込み、難を逃れる。
だが、それだけでは、終わらなかった。
殻の中に閉じこもったまま回転し
サルバドに、接近してきたのだ。
「血迷ったか・・・・・」
サルバドが、尻尾で、打ち払おうとしたが
蝸牛は、回転を利用して、その効果を、打ち払うと
勢いのまま飛び上がり、アンデットドラゴンの背中に着地した。
「ぬぉ!!!」
慌てるアンデットドラゴンのことなど構わず
体を外に出した蝸牛は、アンデットドラゴンの骨を
溶かし始める。
必死に暴れ、蝸牛を払おうとするアンデットドラゴンだが
蝸牛が、離れることはなく、確実に、アンデットドラゴンの骨を溶かしてゆく。
──このままでは、我は、消滅してしまう・・・・・
覚悟を決めたアンデットドラゴンが、思念を飛ばす。
──主様、申し訳ございません・・・・・
我は・・・・・
──わかっているよ・・・・・
安心して、休んでいてよ・・・・・
──申し訳ない・・・・・だが、このままでは終わらぬ!・・・・・
──えっ!・・・・・
驚くエンデだが、思念での会話は、そこで終わる。
そして、思念での会話を終えたアンデットドラゴンは
上空に向けて、特大のダークブレスを放つ。
「貴殿を、道連れに!」
その言葉通り、降り注ぐダークブレスを全身で浴びるサルバド。
流石に、この攻撃を受けるわけにはいかず
蝸牛は、咄嗟に殻の中に閉じ籠る。
──今だ!!!・・・・・
全身に、自ら放ったダークブレスを浴びながら
再び、地へと消えてゆくアンデットドラゴン。
こうして、蝸牛、カスティーヌ、アンジェリクと
対峙することとなったエンデ達だが、
アンジェリクは、ここが好機だと思い、
カスティーヌに命令をする。
「カスティーヌ、出し惜しみはなしだ。
貴様も、使え!」
「畏まりました」
カスティーヌが、自身の剣に向けて、唱え始める。
「我と共にある色欲に命ずる。
今、この場において、本来の姿を取り戻し
我の剣となり、盾となれ!
顕現せよ!
色欲の魔獣、レッドスコーピオン!」
カスティーヌの剣が光る。
そして、蝸牛の時と同じように
光の中に、巨大なレッドスコーピオンが、姿を現した。
「はっはっはっ・・・
これで貴様の終わりだ。
エンデ、覚悟しろ!」
アンジェリクは、全ての攻撃を、エンデ1人に向けた。
「主!」
急いで、応援に向かうダバンだが
その前に、カスティーヌが、立ちはだかる。
「貴様は、そこで、じっとしていてもらおうか」
新たな剣を手に、ダバンの前に立ちふさがったカスティーヌは、
無理に攻撃を仕掛けず、足止めに専念する。
その為、応援に向かうことが出来ない。
──主・・・・・
焦るダバンの前で、防戦一方のエンデ。
だが、それも長くは続かず
徐々に、傷が増え、追い詰められてゆく。
2頭の大罪の魔獣の攻撃に、
後方からのアンジェリクの魔法。
流石のエンデも、対応できない。
その結果・・・・・
一瞬の隙をつかれ、スコーピオンの一撃を食らい、
地面に、倒れることとなった。
チャンスとばかりに、アンジェリクが叫ぶ。
「これで、終わりだぁぁぁぁぁ!!!」
手に光の魔力を溜め、エンデに、極大な一撃を放とうとした。
だが、ここで、予想外のことが起きる。
エンデの体が、地に沈み始めたのだ。
──まだ、時間が足りぬ・・・・・
アンジェリクが、叫ぶ。
「そ奴を、逃がすなぁぁぁ!!!」
その言葉に従い、2頭の魔獣が、エンデを捕らえにかかるが
もう遅い。
エンデの体の殆どか、地に沈んでおり
捕らえることが出来なかった。
最大の好機を逃してしまったアンジェリク。
「あと一歩のところだったが・・・・・悪運の強い奴だ・・・・」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます