第233話天使侵攻2
そして、扉を開けると
その先に見えたのは、見たことのある光景。
精霊界だ。
「何故、この部屋が精霊界に通じているんだ・・・・・」
ミッシェルは、自分の目を疑いながらも、
もう少し、足を踏み入れた。
すると、扉が『フッ』と消える。
引き返すことの出来ない事を悟り、
覚悟を決めて前に進んで行くが、
やはり、ここは精霊界にしか見えない。
──だが、どうして、精霊界に・・・・・
いや、そもそもここが・・・・・
「本当に、精霊界なのか・・・・・」
独り言のように呟いた言葉の後
誰かが問いかけてきた。
「あらら?
君は、ミッシェルだったかな?」
驚き、辺りを見渡すが、姿は見えない。
「誰だ!?
どうして、私の事を知っている!
姿を現せ!」
警戒を強めて、武器を構える。
「1度会った人の顔なら、覚えているよ。
まぁ、千年前までなら、だけどね」
「千年?
もしかして、精霊女王か?」
「フフフ・・・・それに答える義理はないよ。
君は、私の敵なんだから」
「確かにその通りだな。
だが貴様が精霊女王というなら、
この戦いに参戦する意味、わかっているのか?」
「勿論だよ。
だが、君たちが持つ大罪の剣と同じように
欲におぼれた人族の側に立つ
君達には言われたくないわ」
「ふんっ!
なんとでも言え!
我らは、この世界の導き手。
我らの行いは、全てはこの世界の為だ」
「本当に、傲慢だね。
いつから君達は、そんなに変わってしまったんだい?」
その言葉に、ミッシェルは、眉を顰める。
「我らは、変わったつもりなど一ミリもない。
ただの見解の相違だ・・・・・」
「見解の相違か・・・・・
確かに、そうかもしれないね。
だが、それだけだというのなら
相容れることはなかろうな・・・」
「わかっているではないか。
ならば、もう、語ることはないだろう。
さぁ、姿を現せ!」
辺りを窺うミッシェルに対し
ルンは、未だ姿を見せていない。
「あくまでも、姿を見せぬ気か・・・ならば!」
ミッシェルは、剣に炎を纏わせると
この地を、焼き払おうとしたが
突然、草花の蔓が、襲い掛かり、ミッシェルの動きを止める。
「小賢しい・・・」
バックステップを踏み、その場からの退避を試みた。
だが、足元には、多くの草花があり
ミッシェルに、逃げ道など、無かったのだ。
そのことに気づいた時には、もう遅い。
ミッシェルの足には、蔓が絡みつき、動きを封じていたのだ。
「しまった!」
その後、蔓は、ミッシェルの体を這うように伸び
あっという間に、四肢の動きを封じてしまう。
「どうだ、負けを認めるか?」
ルンの問いかけに対して
ミッシェルが、言い放つ。
「この程度のことで、
私を封じたつもりか!」
ミッシェルは、手に持っていた『憤怒』の剣を振り、
蔓を切り落としにかかった。
だが、蔓は剣を弾く。
「なに!
切れないだと!」
「フフフ・・・・・無理はせぬほうがかよいぞ」
「舐めるなよ、精霊女王」
ミッシェルは、諦めてなどいない。
彼女には、まだ手立ては残っていた。
それを証明するように、
ミッシェルが、呪文を唱える。
「憤怒の剣の主が厳命する。
我が憤怒を贄とし、今、この場に
神より与えられし姿にて
顕現せよ!」
憤怒の剣は、ミッシェルの言葉に従い
大猿へと変化した。
そして、咆哮を上げた
ミッシェルに絡みつく蔓を、引き千切りにかかる。
しかし、手で引っ張ったり、歯で食い千切ろうとしても、
傷が付くだけ。
しかし、傷が付くということは、
千切れるということ。
そのことがわかると、辺りを警戒しながらも、
大猿は、ミッシェル解放のために、
蔓の破壊に力を注いでいると
ルンの言葉が、聞こえてくる。
「憤怒の剣の化身に、そのようなことをさせるとは・・・・・
だが、それも無駄な努力よ」
その言葉を、証明するかのように
突然、キィィィィン・・・・・という音が一面に鳴り響くと
大猿の背後に咲いていた奇麗な花達が
だが、大猿は、気が付いていない。
その間に綺麗な花達は、静かに大きくなると
その姿を、食虫植物のような姿へと変え、
大猿を取り囲んだ。
「!!!」
だが、大きくなったことで
食虫植物が、ミッシェルの目に映る。
慌てて、声をかけるミッシェル。
「後ろに、気を付けろ!!!」
『ウギッ!?』
振り返った大猿だが、もう、遅い。
大猿に、食虫植物と化した花の影が落ち
気づいた時には、大猿の頭部は、食虫植物に飲み込まれていた。
必死にもがく大猿。
しかし、食虫植物は、1体だけではない。
暴れる大猿に、次々と食虫植物が噛みつき
動きを止めると、そのまま引き千切りにかかった。
あっという間に、四肢を引き千切られた大猿は
全て、食虫植物の餌となり、姿を消した。
「あははは、残念だったね。
残るは君だけだよ。
あんまり甚振るのは、
好きじゃないから、さっさと終わらせようか」
相変わらず、姿を見せないルン。
その態度に、苛立つミッシェル。
──この私が、このまま終わるというのか・・・・・
一死、報いたい。
だが、その望みは叶わなかった。
再び、キィィィィン・・・・・という音が響くと
今度は、捕らわれているミッシェルの足元の蔓が蠢き始めた。
「おい、まさか・・・」
蠢いていた蔓達は、ミッシェルの体を這い始め
体に巻き付くと、蔓の先を、皮膚に突き刺した。
激痛に声を上げるミッシェル。
「うがぁぁぁぁぁ!!!」
体を這いずる蔓は、次々と皮膚に、突き刺さると
体中の水分を吸収し始めた。
干乾びてゆくミッシェル。
上げていた声も小さくなり、
最後には、ボロボロと崩れ始め、土へと還った。
その後、ミッシェルを屠ったルンが
空から降りてくる。
そして、ミッシェルが土へと還った場所を、
悲しそうな顔で見ながら、ポツリと呟く。
「君たちは、どうしてそうなったんだい?
昔は、そんなんじゃなかった筈だよ」
そう言い残すと、
ルンは、再び姿を消した。
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