第232話天使侵攻

ドットムが倒され、残るはリーダーのミッシェルだけとなった。


そのミッシェルと相対するのは、エンデとダバンだが

未だ、会えずにいた。


その為、街の中を散策していると

侵攻してくる兵士達の姿を見つける。


「来たようですね」


「うん」


2人は、隠れるように態勢を低くした。


そして、兵士達の様子を観察していたのだが

あることに気が付いた。


「天使がいない・・・・・」


エンデの発言に、ダバンも天使の姿を探す。


だが、結果は変わらない。


何処を探しても、ミッシェルの姿はなかった。


それもその筈。


ミッシェルには、別の狙いがあった。


その為、密かに行動を起こし、兵士達とは、別行動をとっていたのだ。


その事を知らないエンデとダバンは、再びミッシェルを探しにかかる。


だが・・・・・


「何処に行ったんだろう?」


「これはおかしいぜ。


 なぁ主、もしかしたら・・・・・」


2人の想像が、一致した。


ミッシェルの狙いは、城。


それは、本当に、もしかしたら・・・・・

程度に、思っていた事だが

この結論に至った2人は、

何故か、あ~あといった雰囲気になる。


「なぁ、ダバン・・・・・・」


「主・・・・・嫌な想像しか出来ねぇ」


城に残っているのは、エブリン達と両親、それと護衛の兵士達

そして、最後に、ルン達だ。


エブリン達だけなら、心配をしていただろう。


だが、あの城の守りの中心は、ルンだ。


名目上、エンデの城となってはいるが

実際に、装飾に警備、攻撃に護衛。


その全てを、担っているのが、ルンであり

精霊達なのだ。


だからこそ、当初、ルンも、街へ出て戦うことを望んだのだが

お付きの精霊達が、それを許さなかった。


幾度となく、『行く!』『ダメです!』と押し問答を繰り返した後

妥協案として出たのが、

城に攻め入った者に対しては、

ルンの自由にしていいとの提案だったのだ。


その案を、渋々受け入れた筈のルンだったが、

何故か、ウキウキとした表情をしていたことを

今更ながら、2人は思い出す。


「追いますか?」


「いや、それこそ、万が一、天使を城の前で倒しでもしたら

 あいつは、絶対に不貞腐れるから

 もう、放っておこう」


「ならば、俺たちは、あれの始末だな」


「そうだね」


2人は、隠れることをやめて、兵士達の前に立った。


途端に、兵士が見つけ、声を荒げた。


「いたぞ!

 悪魔だ!

 全員、予定通り、態勢を整えよ!」


「「はっ!」」


短く返事をした兵士たちは、陣形を組み直す。


そして、出来上がったのは、防御の陣形。


攻めを捨て、ただ時間を稼ぐかの如く

魔法結界を張り、エンデたちの攻撃に備えている。


「主、これは・・・・・」


「多分、時間稼ぎ、攻める気無いみたいだね」


「時間を稼いで、どうするつもりだよ」


「どうするつもり?って、

 そんなの、天使様の命令に従っただけでしょ」


言い終えると同時に

両手を広げたエンデ。


その掌を、地面につけて呟く。


『アースクエイク』


突如として響き渡る振動。


同時に、稲妻をかたどったような亀裂が入った。


それは、兵士達の足元まで伸びると

次々と、亀裂が飲み込み始めた。


断末魔の叫びを残して、姿を消してゆく兵士達。


魔法結界が防げるのは、直接の魔法攻撃。


『地割れが起きる』、『地面が揺れる』などの魔法は、防げないのだ。


何も出来ず、ただ悲鳴だけを残して

この世から、去ってゆく兵士達。


その光景を

ただ見ているだけのエンデとダバン。



そして、全ての兵士が飲み込まれ

街が、静けさを取り戻すと

城の事が気になった。



「向こうは、どうなっているかなぁ?」


「大丈夫だと思うぜ。


 ただ・・・・・」


「ただ?」


「城(建物)の方が心配・・・・・」


「そ、そうだね」


「・・・帰ろうか」


「ええ」


 戦いを終えた2人が

城に戻ろうと踵を返した瞬間

突然、襲い掛かる殺気。


思わず、振り返るエンデとダバン。


先程の攻撃で出来た亀裂の向こうに現れた、新たな天使軍。


しかも、その中には、見知った顔があった。


「アンジェリク!!!」


名を呼ばれたアンジェリクも、エンデを発見する。


「絶対に逃がしはせぬぞ!

 エンデ ヴァイス!!!」


怒りを滲ませたアンジェリクは、すぐさま号令をかけた。


「神の名のもと、奴らに裁きを!」


声を上げ、兵士達が襲い掛かる。


その中には、召喚された天使の姿もあった。


今迄とは違う、本当の意味での混成部隊。


彼らは、まっすぐ、こちらに向かっている。


「ダバン、行くよ」


「了解!」


エンデとダバンも、天使軍に向かって走りだした。





その頃、密かに街の中を進み、城に辿り着いていたミッシェル。


「今なら、ここも手薄でしょう」


ミッシェルの狙いは、人間界でのエンデの家族。


──奴とて、今は人族。


   家族が殺されれば、怒り狂い、冷静さを失うだろう。


   冷静さを失った悪魔など、取るに足らぬ存在だ・・・・・



そう思いながら、入口の扉に手をかけた。



『ギィー』と音を立てて扉が開く。


急いで中に入り、柱の陰に隠れる。


だが、誰かが駆けつけるといったこともなく、城の中は、静寂に包まれたままだ。


ミッシェルは、柱の陰から出てくると、奥に向かって歩き出した。


いったい、どれくらい歩いただろう・・・・・


木の枝のように、分かれ道もなく、ひたすらまっすぐ伸びる通路。


誰かに会うことも無いが、部屋の扉もない。


警戒するあまり、その不自然さに、今になって気が付いた。


「これは、どうなっているのだ?」


振り返ってみても、見えるのは、先程通った1本道の通路だけ。


だが、よくよく目を凝らしてみると、

先程までは無かった扉が見えた。


急いで引き返し、扉の前まで来ると、ミッシェルはドアノブに手をかける。

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