第229話サラーバ再び5
最後に1組を相手にするのは、勿論、エンデだ。
従者として、ダバンも同行する。
「これで、それぞれの相手が決まったね。
みんな、気を付けて」
「おう!
任せとけ!」
威勢よく、声を上げるガリウス。
お互いの無事を祈った後、エブリン、シャーロット、ルン、
そして、エンデの両親とダバンの嫁、サーシャが戦いを赴く者達を見送った。
城を出た4組は、それぞれ、決めた方角に向かって歩き出す。
そして、最初に敵に遭遇したのは、ガリウス。
相手は、セルマル。
「もしかして、貴様は人族か?」
「だったらどうなんだよ!?」
「フッ、人の身で、天使たる私に戦いを挑もうとは、
なんという愚かな・・・・・」
セルマルは、背後に控えていた兵士達に命令を下す。
「私が出る程の事ではないな。
やれ」
『うぉぉぉぉぉ!!!』
ここに辿り着く前に、多くの仲間を失ったこともあり
怒りを露にしながら、ガリウス達に向かって走り出した。
怒りを隠さず、突撃してくる兵士達を前に
ガリウスの横に並んでいたツベッシュが、前に出る。
「ここは、任せろ・・・」
ガリウスよりも、前に出たツベッシュは、妖艶な笑みを浮かべながら
言い放つ。
「さぁ、我が子たち
出番ですよ」
言葉に従い、ツベッシュの影から、
赤い目をしたグールたちが姿を現す。
「好きなだけ、暴れなさい」
飛び出したグール達は、
次々と兵士達に襲い掛かった。
凶暴なグール対怒りを露にしていても、疲労感のある人間。
結果は、火を見るより明らか。
勢いよく突撃してきた兵士達だったが、
次々と、グールの餌と化し、
見るも無残な姿になってゆく。
この現状に、怒りを忘れ
後続の兵士達の足が止まる。
「こんなの・・・・・無理だ・・・」
後退る兵士達。
だが、セルマルが、それを許さない。
「何をしているんです。
さっさと化け物どもを倒しなさい!」
「し、しかし・・・・・」
完全に、弱腰となり、使い物にならなくなった兵士達に向けて
大きく溜息を吐くと、ボソッと呟いた。
「・・・・・仕方ありません」
セルマルは、兵士達に向かって、呪文を唱えた。
『ブレイン バースト』
突如として、『ウオォォォッォォ!!!』と
異常な叫び声を上げ始める兵士達。
「フフフ・・・・・やはり、食事に薬を入れておいて良かったようです」
セルマルは、昨日のうちに、兵士が言う事を聞かなかった時の為に
策を打っていたのだ。
兵士の目が、グールと同じように、赤く染まる。
だが、それは、グールとは違う。
体中の血が沸騰し、目が充血しているのだ。
涎を垂れ流しながら、グールに襲い掛かるバーサーカーと化した兵士達。
腕を食い千切られようが、攻撃を止めようとはしない。
「酷ぇな、あれが天使のやることかよ・・・・・」
ガリウスの言葉に、ツベッシュが返す。
「過去は、どうか知りませんが、
ここ数百年の間の天使どもは、
こんなものですよ。
あれらは、自分たちの掲げる正義の為なら、手段は選びませんから」
「そうなのかよ」
ガリウスは、どっちが天使で、悪魔なのか疑問を持った。
未だ続く、グールとバーサーカー化した兵士達の戦闘。
さながら、地獄絵図のようだ。
そんな、血の赤と闇の黒で染まる混沌の中、ツベッシュが動く。
「そろそろ、私も参りましょう」
「えっ!おい!」
ガリウスの呼び掛けにも答えず、姿を消したツベッシュが
次に現れたのは、セルマルの正面。
「さて、見物にも飽きたことですし、そろそろこちらも始めましょうか」
ニヤリと笑うツベッシュ。
「下級悪魔風情が、この私に戦いを挑むとは・・・・・
返り討ちにしてくれよう」
ツベッシュを見下すセルマルの手に、光の剣が現れる。
「我が剣に宿るは、『暴食』。
敵の全てを、食らい尽くす剣なり。
出でよ、『エイトヘッド サーペント』」
光の剣は姿を変え、八つの頭を持つ白い蛇へと変化した。
「さぁ、全てを食らい尽くせ!」
ツベッシュに狙いを定めたエイトヘッド サーペント。
大口を開け、一飲みにしようと襲い掛かる。
しかし、ツベッシュは、ヒラヒラと攻撃を躱すと
セルマルに、言い放つ。
「神獣に戦わせて、貴方は見学ですか?」
「ハハハ・・・・・なんとでも言うがよい。
安い挑発など、我が耳には届かぬ。
貴様は、エイトヘッド サーペントの餌となり
魂ごと消え失せるのだからな!」
勝利を確信しているような態度のマルセルだったが
突然、異様な気配を感じ、咄嗟にバックステップを踏んだ。
かし、突然のことに反応が遅れ、頬に傷を負う。
「ちぃ!
もう少しだったのによ」
突然、現れ、攻撃を仕掛けたガリウスは
残念とばかりに言葉を吐き捨てる。
だが、セルマルに、その言葉は、届いていない。
人族に傷を負わされたことで、プライドが傷つき
周りが見えなくなっていたのだ。
頬に傷を拭ったセルマルが、
頬に手をあてると、その手に血が付き、激高する。
「人族の分際で、この私の顔に傷だと・・・・・
エイトヘッド サーペント、何をしている!
こ奴を殺せ!」
怒りに我を忘れて、命令を下したセルマル。
エイトヘッド サーペントは、追い詰めていたツベッシュから離れ、
ガリウスへと、狙いを変えた。
地を響かせて、突進してくるエイトヘッド サーペント
「おっ!
来たな」
向かってくるエイトヘッド サーペントを見ても、ガリウスに焦りはない。
彼には、対応する手段があるからだ。
大口を開けて、襲い掛かろうとするエイトヘッド サーペントだったが、
真横から、強い衝撃を受けて、吹き飛ばされた。
地面を転がり、仲間を巻き込みながら、
無様な格好を晒したエイトヘッド サーペント。
その様子に、ガリウスは親指を立てて、称賛を送る。
「いいタイミングだったぜ、相棒!」
『グァ!』
返答したアンデットオオトカゲは、
未だ、倒れたままのエイトヘッド サーペントに向かって走り出した。
ガリウスは、視線をアンデットオオトカゲからセルマルへと変える。
「さて、どうする?
ここからが、本番だぜ」
『ぐぬぬ・・・・』と拳を強く握る。
「・・・人族の分際で・・・・・・神の使いである我らに歯向かうとは
この場から、生きては返さん!」
完全に、周りが見えておらず
大技を繰り出そうと、
呪文を唱え始めたセルマルだが
彼は、肝心なことを忘れていた。
悪魔は1人ではない。
無防備なセルマルの背後に現れるツベッシュ。
「隙だらけです」
一撃でセルマルの首を飛ばし、
息の根を止めた。
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