第228話サラーバ再び4
ウルザースとオキシーヌが率いる軍は壊滅し
死体は、サンドワームの餌となり、痕跡も残っていない。
そう、このサンドワーム達が、ポイズンスコーピオンと
見事な連携をとり、天使軍を壊滅させたのには
理由があった。
実は、アンデットと化しており、今は、エンデの配下となっていたからだ。
今後、このサラーバを発展させるにあたり
一番のネックになるのが、サンドワームとポイズンスコーピオン。
だが、壊滅させてしまうと、困ることになる。
そこで、いつものように
街の近くにいたサンドワームとポイズンスコーピオンを倒し
アンデットに変えていたのだ。
こうして、次々と好き勝手にしているエンデのもとに
新たな天使軍が到着する。
率いている天使は、【ドットム】、【シルダ】、【セルマル】、【ミッシェル】の4人。
4人の中でリーダーを務めるミッシェルは、疑問を感じていた。
「既に、仲間が、到着している筈なのですが・・・・・
おかしいですね」
「おかしい?」
「ええ、お互いの距離を考えれば、私たちよりも先に、
オキシーヌたちが到着している筈です」
シルダもミッシェルの言葉に、賛同する。
だが、目の前の砂漠には、
兵士達の姿も無ければ、戦っている様子もない。
しかし、ここに辿り着くまでには
大勢の人が通った跡も、
草木を踏みつけたような痕跡があった。
「なら、その者達は、一体どこへ?」
「わからぬ。
だが、生きているとすれば・・・」
ミッシェルが示した方向には、
暗雲立ち込めるサラーバの街。
もし、仲間が戦っているのならば
急いで、駆け付けるしかない。
「ならば、先へ進もう!」
出発を提案するシルダ。
だが、ミッシェルが、それを止める。
「このまま砂漠に、足を踏み入れるのは危険すぎる。
それに、兵士達も休ませねばなるまい」
確かにその通りだ。
天使達は、大丈夫だが
ここまで長旅を続けていた兵士達は違う。
明らかに、疲れていた。
「彼らを休ませるにしても
砂漠での一泊は、危険すぎる。
シルダ、お前の気持ちもわかるが
ここは、我慢してほしい」
先に進みたい気持ちの強いシルダだが
ミッシェルの言う事は、理解できた。
「・・・わかった。
従うよ」
話がまとまったところに、
セルマルが、姿を見せる。
「この後、どうするの?」
その問いに、ミッシェルが答えると
セルマルは、納得した表情になり、口を開く。
「わかった、兵士たちに伝えておくよ」
セルマルは、そう言い残し
ミッシェル達から、離れて行った。
この判断は、正しかった。
オキシーヌ達は、砂漠に足を踏み入れ、砂の上での一泊を選んだ為
深夜、サンドワームたちに襲われ、命を落とした。
しかし、ミッシェルが選んだのは、砂の上では無く、
砂漠と土の境界。
その為、サンドワームに襲われることなく、
体を休ませることが出来たのだ。
万全の態勢で迎えた翌日。
天使4人が率いる連合軍は、
サラーバの街に向かって侵攻を開始する。
日中の砂漠を渡り、暗雲立ち込める場所までたどり着くと
ミッシェルは、準備が整うと同時に
全軍に突撃の指示を送った。
部隊は、天使をリーダーに4つに分けられており
東西南北、四方から、攻め込む。
一方、待ち受けるエンデ達。
「若様、どうやら四方から、攻め込んできたようです」
「わかった」
「それで、如何なさいますか?」
「街に着くまでは、前回と同じで。
天使は、僕達で、相手をしよう」
「では、そのように・・・」
ゴージアは、エンデの前から去ると
仲間達のもとへ向かった。
一方、突撃した天使軍だが、
やはり、街に到着する前に
サンドワームとポイズンスコーピオンの攻撃を受けていた。
前回と同じように囲まれ、次々と兵士が倒されてゆく。
「おかしいぞ、ここに来るまでの間にも
奴らには会ったが、
こんな連携の取れた攻撃など
しなかったぞ。
なのに、これはどういうことだ!」
ドットムが、困惑している間にも
次々と兵士が倒されている。
──クソッ!
このままでは・・・・
やはり、取るべき道は、1つしかない。
「全員、街まで走れ!
その言葉を信じ、兵士達が、街に向かって走り出すと
サンドワームが、後を追う。
だが・・・
「行かせるかぁぁぁぁぁ!!!」
ドットムが、間に割って入り
サンドワームを倒した。
「行け!
振り返るな!
街まで走れ!」
ドットムの言葉を背中で受けながら
兵士達は、街の中へと、飛び込んだ。
当然の事だが、
この状況も、逐一報告されている。
「街に入ったようだけど、こっちはどうする?」
エンデの『どうする?』とは、誰が何処に向かうかということだ。
どの部隊も天使が率いていることを考えると、
人族であるマリウルやがリウスには、荷が重く思えた。
「1つは、私が受け持ちますが・・・・・」
ゴージアの言葉に、エンデが頷く。
──さて、後は・・・・・
エンデが考えていると、マリウルが手を挙げる。
「1組は、任せてもらいたい」
その言葉に、素早く反応したエブリン。
「マリウル、貴方、わかっているの?
相手は、前回の下級悪魔と違い、
天使の中でも戦闘に長けた
バルキリーかもしれないのよ!」
「わかっているよ。
でも、私も覚悟を持って、この場に来ているんだ。
相手が強いからといって、逃げるような真似は出来ない」
「その通りですわ」
マリウルの言葉を肯定したのは、
背後に控えていた悪魔メイドの1人【エルドラ】だった。
「エルドラさん?」
エルドラが、1歩前に出る。
「発言する無礼をお許しください」
「うん」
「マリウル様に、同行する許可を頂きたいと存じます」
『えっ!』と驚いた顔をしたのは、
エンデやゴージア、ディアーヌではなく
同じ悪魔メイドのウォーネとオクトネだった。
「「あなた、どういうつもり!?」」
2人の声がハモる。
素早く反応するディアーヌ。
「どういうことですか?」
その言葉に、顔を背けるメイド達。
『はぁ~』とため息をつくディアーヌだったが
メイド達の意を汲み、参戦許可をエンデに求めた。
「この者達は、ただのメイドではございません。
戦いに長けている者たちですので、マリウル様のお力添えになれるかと」
「そうなんだ。
でも、城の方は?」
「他にも、多くのメイドが控えておりますので、
何の支障もございません。
それに・・・・・」
ディアーヌの視線先には、ルンがいた。
「わかっているわ。
絶対に守るから、こっちは、気にしなくてもいいわよ」
「ありがとうルン。
城のことは任せるよ」
「大船に乗った気でいて、いいわよ」
「うん、そうするよ!」
こうして、城の事も決まり
マリウルには、3人のメイドが同行することで
天使との闘いに参戦することが決定した。
それを1番に喜んだのは、ガリウス。
「兄貴もそろそろ、年貢の納め時だな」
「は?」
ガリウスの発言に、理解がついていかない。
だが、続く発言で、その意味を理解する。
「3人とも、娶るのか?
それとも、誰か1人を選ぶのか?」
──!!!・・・・・
「な、お、お前、今は、戦いの最中だぞ!
娶るなどの話をしている場合ではない!」
「ああ、そうだったな。
すまん。
だがよ、
そういうことも考えないと、駄目な時かも知れねぇぜ」
「だから、後にしろ!」
「そうだな、すまなかったな」
笑いながら、軽く謝罪を述べた後、
ガリウスも、戦いへの参戦を表明する。
「誰か、同行するのか?」
「俺には、アンデットオオトカゲという相棒がいるから、心配要らねぇ」
「そういっても、相手は、天使だぞ」
「そうですね。
では、この者を、同行させましょう」
ゴージアが2度、手を叩くと、何処からともなく姿を見せる悪魔。
「お呼びでしょうか、ゴージア様」
現れた悪魔の姿を見て、声を上げるガリウス。
「なんだ、【ツベッシュ】か・・・・」
「ん?」
「ガリウス・・・・」
ガリウスが、この地に赴いてから、能力向上のために
戦闘訓練の相手を務めていたのが、このツベッシュなのだ。
「ツベッシュ、この度の天使との戦いにおいて、
お前は、ガリウス殿に同行しなさい」
『おお!』と思わず声を上げる。
「天使との戦いに参戦できるとは、有難き名誉。
それでは、
私の配下にさせましょう」
「頼みましたよ」
「お任せを」
こうして、マリウルには、嫁候補?の悪魔メイド達が同行し、
ガリウスには、ツベッシュと、
その配下の悪魔達が同行することが決まった。
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