第209話魔王対始祖

グラビティの効果範囲から、外れたエンデは、

同じように、魔法で対抗する。


『ダークランス』


エンデが放った無数の闇の槍が

ウルダに襲い掛かる。


だが、ウルダも、対抗するように、

手を前に差し出した。


『アイスウォール』


エンデとウルダの間に、作られた氷の壁のせいで

エンデの攻撃は、防がれる。


「ふん!

 この程度の攻撃が、我に届くと思うのか?

 舐められたものよ・・・・・

 だが、貴様の力は、およそ、理解できた。


 貴様には、残念なことかもしれぬが、

 我の相手になるなど、百年早いわ」

 

溜息を吐き、呆れた表情を見せたウルダが

横一文字に、腕を振るう。


すると、目の前に、5人のワーウルフが、姿を現した。


「我の親衛隊じゃ。


 こ奴らが、貴様の相手をしよう。


 行け!

 我が親衛隊たちよ!」


「「「はっ!」」」


5人のワーウルフが、剣を手に

飛び上がり、一斉に襲い掛かった。


だが、その攻撃は、エンデには届かない。


飛び上がったワーウルフ達に、光の矢が突き刺さったのだ。


『ライトニングアロー』


光の攻撃魔法。


その矢を、心臓に受けたワーウルフ達が、

灰となって消えてゆく光景に

ウルダが、激高する。


「おい、

 ・・・貴様が何故、光の魔法を使えるのだ!

 答えろぉぉぉ!!!」


怒りに任せて飛び出したウルダ。


エンデとの距離を詰める間に

自身の指に噛みつき、血を垂れ流すと

その血が、鎌のような形へと変化させる。


そして、エンデが、目の前に迫ると

その鎌を、袈裟を斬るように

振り下ろした。


だが、、その攻撃は、エンデには当たらなかった。


ウルダの攻撃を軽やかに躱したエンデは、

お返しとばかりに、攻撃に出る。


黒い渦から、剣を取り出すと、

ウルダに斬りかかった。


「小賢しい・・・」


ウルダも、エンデの攻撃を躱した。


そこからは、一進一退の攻防を見せていたが

徐々に、ウルダが、圧され始めた。


──何故だ・・・・・

  何故、我が、圧されているのだ・・・・・

  相手は、ただの悪魔ではないか・・・・・


そんなことを、考えている最中にも

傷が増えてゆく。


だが、傷が増え、血が滲み始めると

何故か、落ち着きを取り戻し始めた。


そして、笑みを浮かべる。


──ククク・・・・・

  そうだ、何故、

  我に、焦る必要があるのだ・・・・・


傷口から、血が零れ始めると

ウルダが呟く。


『マニピュレイトブラッド』


『ソード』


その言葉に従い、噴き出した血が、剣の形へと変化し

エンデに、襲い掛かった。


突然の出来事に、エンデの反応が遅れる。


上や下、背後から襲い掛かった剣を

全て躱すことは出来ず、エンデは傷を負った。


しかし、その場で倒れるわけにはいかない。


まだ、攻撃は続いているのだ。


エンデは、多少の傷を負うことを覚悟して

背後へと飛び、距離を取ろうとした。


だが・・・・・


「逃がさぬ!」


ウルダは、エンデの後を追い、

一気に距離を詰めると、

勢いそのままに、鎌を振るうと

エンデは、その攻撃を剣で受け止めた。


しかし、ウルダの勢いは止まらず、

エンデの剣を、破壊すると

そのまま鎌を、振り下ろした。


下がることも不可能。


エンデは、多少の傷を覚悟して、前へと飛び出す。


同時に、振り下ろされた鎌の刃が、エンデの肩に触れたが

それ以上は、エンデの肩が、柄の部分に触れ、

刃が進まない。


「貴様!」


ウルダは、咄嗟に、鎌を引く。


だが、もう遅い。


接近したエンデが、攻撃に出る。


右の拳に光を纏わせると、

それを、ウルダの腹に打ち付けた。


「ぎゃぁぁぁぁぁ!!!」


焼けるような熱さに、思わず悲鳴を上げたウルダが、

手から鎌を落とすと、素早く、その鎌を、エンデが掴む。


そして、お返しとばかりに、その鎌を

ウルダに、振り下ろした。


完全無防備となっていたウルダに

回避することなど不可能。


袈裟に斬られたウルダの体が

2つに割れ、床に倒れると

ゆっくりとウルダの体から、血が流れ始めた。


徐々に、血だまりが大きくなってゆくが

それでも、ウルダは生きていた。


「・・・これで・・・・終わりだと・・・思うなよ・・・

 貴様は・・・ぜっ・・たいに・・・許さぬ・・・」


血を吐きながらも、エンデを睨みつけるウルダ。


そんなウルダに、エンデが告げる。


「悪いけど、これで終わりだよ」


エンデが、再び、右の掌を、ウルダに向けた。


『ホーリーフレイム』


白炎びゃくえんの炎が、ウルダを包み込む。


不死ともいえるヴァンパイアといえども

聖なる炎には、贖うことが出来ず、

徐々に灰となり、

最後には、この世界から消えた。




エンデが、ウルダを倒して暫くすると

異空間に連れ去られていたワァサが、姿を見せる。


「お前も勝ったみたいだな」


「うん」


「そうか・・・・・

 ならば、もう、俺が、ここにいる必要は無くなったな」


「ワァサ、ありがとねー!」


戦いの後、エンデと合流していたルンが、お礼を述べると

ワァサは、申し訳なさそうに告げる。


「もとは、魔界のジジイが、しでかしたこと。


 お礼を言われる事など無い」


「それはそうかもしれないけど・・・・・

 でも、精霊も関わっていたから、

 せめて、お礼ぐらいは、言わせてよ」


「わかった。


 礼は、受け止める。


 だがよ、

 まだ、油断は出来ねぇぞ」


「?」


「あいつらだよ。


 天使が、この後どう動くかだな?」


「今回の事は、耳に、入っているだろうから

 この後、あいつらが、どう動くかだな。


 まぁ、傍観ってのは、ありえないだろう」


「そうだね・・・」


今回の件は、間違いなく天使の耳にも届く。


だからこそ、まだ、気が抜けないのだが

今は、少し休むことにした。


そして、今後、何かあったら、

お互いに、連絡をすることを約束して、

ヴァンパイア城を後にした。



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