第208話魔王対決②
「グ・・・ぬぬぬ・・・
これしきの事で、調子に乗りおって・・・」
立ち上がると同時に、アガサは、呪文を唱えた。
「顕現せよ、凍てつく大地の王者。
『フェンリル』!」
冷たい風が吹き、2体のフェンリルが姿を現すと
アガサは命令する。
「さぁ、行け!
あ奴の四肢を食い千切るのじゃ!」
「グールにワーウルフ。
蜘蛛の次はフェンリルか・・・・・本当に、忙しい奴らだ・・・・・」
呆れたように、文句を言いながらも
ハルバートを手にしたワァサは、
襲い来る2頭のフェンリル目掛けて
横一文字に振るう。
すると、ハルバートの風圧により
冷気と共に、フェンリル達の足が止まった。
この瞬間を、好機と捉えたワァサが、攻撃を仕掛ける。
「おらぁぁぁぁぁ!!!」
気合を入れて振るったハルバートは、
見事に、フェンリルの頭部を破壊した。
悲鳴を上げる隙も与えず、1頭のフェンリルを屠ったワァサは
すぐに、2頭目に向かって走り出した。
だが、既に、体勢を整えていたフェンリルの方が早い。
向かってくるワァサに向けて、『コールドブレス』を放った。
「ぬおぉぉぉぉぉ!」
躱す暇もなく、フェンリルのコールドブレスを受けたワァサ。
足が止まると、徐々に、体が凍り始めた。
だが、次の瞬間、体に刻まれていた模様が、紅く光り
ワァサの体に付いていた氷を溶かした。
その光景に、
高みの見物を決め込んでいたアガサが、思わず叫ぶ。
「貴様!
いったい、何をした!」
見たこともない魔法?
いや、魔術?
アガサにとって、それらは、自身を構成するものであり
欠かせないもの。
魔法や魔術に関しては、誰よりも秀でている。
それは、ヴァンパイアであり、魔王であることが
証明しており、この世界に知らない魔術や魔法はないとも、自負していた。
だが、ワァサが使ったモノを、アガサは知らない。
不死ともいえる程、長い年月を生きる者にとって
好奇心とは、最後に残された生きる価値でもある。
その為、ワァサの使ったモノに対して、好奇心が、抑えられない。
「おい、答えろと言っておるのだ!」
「誰が、『はい、わかりました』と言って、答えると思っているんだよ。
ジジイ、そこまで、
その言葉に、怒りを露にするアガサ。
「ならば、もう一度、使わせるのみ!
フェンリルよ、今一度、あの者を、凍てつかせよ!」
命令に従い、フェンリルが、ワァサの正面に立ち
コールドブレスを放った。
だが、ワァサとて、魔王。
2度も、同じ攻撃を受ける程、甘くはない。
素早く、コールドブレスの範囲から抜け出すと
接近すると同時に、ハルバートを振り下ろした。
『ギャン!』
外見とは、似つかわしくない悲鳴を上げたフェンリル。
その首が、床に落ちると同時に、
アガサへと向き直る。
そして、胴体だけとなったフェンリルを鷲掴みにし
アガサに向けた。
「おい、ジジイ。
こんな下等な生物に、この俺が負けるとでも思ったのかよ!!!」
ワァサは、フェンリルの体を床に叩きつけた。
「おい、ジジイ、
それで、今度は、どんな手品を見せてくれるんだ?」
「貴様・・・・・」
苛立ったアガサが、魔法を放つ。
『アイス アロー』
無数の矢が、ワァサに向かって放たれるが、
ワァサは、手に持っていたフェンリルを盾に使い、
一気に、アガサへと迫る。
そして、一定の距離まで詰めると、
ワァサは、盾に使っていたフェンリルを
アガサに向かって投げつけた。
飛んでくるフェンリルのせいで、
アガサの視界が一瞬だが、塞がれる。
それは、この戦いにおいて致命的。
隙をつき、懐に潜り込んだワァサは、
アガサを一刀のもとに斬り伏せる。
「ギャァァァァァ!!!」
叫び声をあげ、床に倒れ込むアガサ。
だが、まだ生きている。
そんなアガサに近づき、
再び、ハルバートを、振り下ろす。
両足を砕かれ、体も、ハルバートにより
ほぼ2つに分かれているが、
流石、ヴァンパイアというべきか
アガサは、生きていた。
「そうだよな。
ヴァンパイアなら、この位で死んだりしないよな。
だが、これならどうだ」
ワァサが、ハルバートの時と同じように
何処からか、1本の剣を取り出した。
「これは、銀の剣だ。
これに、こうする」
銀の剣の
アガサに、再び告げる。
「ジジイ、貴様の最後だ」
その言葉に、恐怖を覚えたアガサだが
後退りすることも出来ない。
ワァサは、アガサに跨ると
炎を纏った銀の剣で、アガサの心臓を貫いた。
『ギャァァァァァ!!!』
断末魔の叫びを上げたアガサだったが
徐々に灰と化し、この世界から消えた。
一方、エンデ達の事だが・・・・・
少し遡る。
ワァサが、アガサと共に、その場から消えた後、
エンデが、サルバドへと視線を向けると
そこには、重力で押しつぶされそうになっている
サルバドの姿があった。
「サルバド!」
「あ、主、申し訳ございません・・・身動きが・・・」
圧し潰されてゆくサルバドは、
もう声を発することも難しくなっている。
「ありがとう、もういいよ」
エンデは、サルバドの真下に、黒い塊を呼び出し
そのまま、収納した。
エンデが、サルバドを助け出せたことに
安堵の表情を浮かべていると、
サルバドを苦しめた張本人であるウルダが、
エンデに声をかける。
「貴様が、あのトカゲの主だったのか?」
「トカゲ?
そんなものはいないよ」
「はっ?
何を申す?
トカゲなら、今、貴様が逃がしたではないか?」
「あれは、トカゲじゃなくて竜。
そんなことも、わからないの?」
実際の所、ウルダが、皮肉って、
サルバドの事を、トカゲと呼んでいるのだが
そんなことは、エンデだってわかっている。
だが、仲間を侮辱されて、エンデが、怒らない筈が無い。
だからこそ、わかっていない振りをして
ウルダを挑発しているのだ。
ウルダは、その挑発に答えるように、
エンデに告げる。
「貴様は、誰に、モノを言っているのだ。
我は、ヴァンパイアの王ぞ!
我に話しかけるときは、跪け!」
サルバドにしたように、エンデに向かって
『グラビティ』を放つウルダ。
だが、サルバドのようには、いかなかった。
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