第205話 アガサ サラーバでの戦い⑧
ツベット率いるヴァンパイア達との闘いから外れたエンデは、
ワァサと共に、デルトーレとアガサに、向かい合っていた。
「いいか、あのジジイは、俺がやる。
これは、魔王としての仕事だ。
お前は、もう1人のヴァンパイアの相手をしろ」
「わかったよ」
ワァサの狙いは、アガサただ1人。
目の前にいたデルトーレを無視し、
ワァサは、アガサとの距離を、一気に距離を詰める。
そして、使うのは魔法。
近距離で放つ最も効果的な魔法『フレアサークル』を
使うつもりでおり、
接近し終えた時には、既に、呪文は唱え終えていた。
「ジジイ、今日こそ、引導を渡してやろう」
言い終えると同時に、ワァサが叫ぶ。
『フレアサークル!』
アガサの足元に浮かび上がる魔法陣。
六芒星と外円の触れ合う点から
炎の柱が噴き上がると、アガサの逃げ道を塞いだ。
「じゃぁな」
アガサから、離れるワァサ。
取り残されたアガサ。
そのアガサが、炎に包まれる。
「き、貴様ァァァァァ!!!」
アガサがワァサを睨みつけながら叫んだ。
だが、炎に包まれているアガサが
突然笑い出す。
「クッ、ハハハ・・・」
「ワァサよ、何時、私が炎に弱いと思ったのだ?」
炎の中から、問いかけるアガサに
ワァサの動きが止まる。
その隙をつき、
ヴァンパイアブライドの1人、メロが、
背中から、ワァサに抱き着き、動きを封じた。
「お前、なにをする!?」
ワァサの問いかけを無視して、
メロは、アガサに呼びかける。
「アガサ様、時間をお作り致します」
メロとミレイでは、魔王であるワァサに勝つことは不可能。
だからこそ、アガサが、魔法を唱える時間を作ろうとしているのだ。
ミレイは、メロと同じように、ワァサの動きを封じると
2人は、ある言葉を口にする。
『永劫の時を生きる魂を代償に
我らの願いを叶え、ここに、生きた
『フローズン ピラー』
突然の行動に、アガサも、驚きを隠せない。
「お前達、何をするんだ!?
今すぐ、その呪文を解け!」
必死のアガサの叫びに、
ヴァンパイアブライドの2人は、ニコリと笑みを浮かべた。
そして・・・・・
ワァサを中心にして、足元から、凍り始めた。
「離せ!
貴様らも、死んでしまうぞ!」
「フフフ・・・そんなこと、わかっていますわ。
でも、貴方も、無傷とは、いきませんわ」
「ええ、貴方も、私達の後を追うことになるでしょう」
身動きも取れず、2人の思惑通り
足元から凍ってゆくワァサ。
それを、炎の中から見ていたアガサが
行動に出る。
──わが妻たちよ・・・・・
この時を、与えてくれたことに感謝する・・・・・
こ奴は、必ず、儂の手で・・・・・
覚悟を決めたアガサが、呪文を唱え始める。
『闇より深きところに、眠りし、闇の亡者よ。
今ここに顕現し、罪深き者を、断罪せよ』
「出でよ、名も無き者。
『アーム オブ ダークネス』」
アガサの最強呪文が、唱えられると
ワァサ達の足元に、闇が広がる。
そして、そこから巨大な腕が現れ、
氷の柱となっている3人を掴んだ。
「そのまま、闇に呑み込まれてしまえ!」
アガサの叫びに応えるように
闇か現れた腕が、3人を、闇の中へと引き込もうとする。
だが、ここにいるのは、ワァサだけではない。
『我の守護者達よ、
かの者を、救いなさい!』
ルンの命令に従い、突然、蔦で覆われた巨人達が現れ
凍りつき、柱と化しているワァサ達に、蔦を巻き付け
動きを止めた。
「エンデ!
時間を稼ぐから、その間に、あいつ等を、倒しなさい!」
ルンの指示に従い、エンデは、黒い塊を浮かび上がらせる。
「みんな、力を借りるよ」
エンデは、新たに誰かを呼び出そうとしているが
アンデットオオカミも、アンデットオオトカゲも、
ここにはいない。
しかし、まだ残っている。
『ガオォォォォォ!!!』
雄叫びを上げながら、姿を見せたのは、
アンデットドラゴンのサラバドだった。
「主よ、もう、呼んでもらえないかと思っておったぞ」
「そんなことはないよ。
だけど今は、説明している暇がない。
とりあえず、あいつの相手をしてくれる?」
エンデの指した先にいたのは、デルトーレ。
サラバドは、ふんっ!と鼻息を吐いた後
デルトーレを、睨みつけ、笑みを漏らす。
「あ奴の事は、お任せください」
サラバドは、少し浮かび上がると、
デルトーレに向かって炎を吐いた。
それを回避したデルトーレに向かって
サルバドが告げる。
「久しいな、弱き者よ」
「弱き者だと!
貴様が、この私の何を知っているというのだ!」
「何を知っているだと?
貴様は、少し姿が変わっただけで
我の事が、わからぬのか・・・・・愚かだな」
「ぐ・・・・・」
何故か、怯んでいるデルトーレに、サルバドが告げる。
「ならば、思い出させてやろう」
その言葉と同時に、風の刃がデルトーレに、襲い掛かった。
「その程度の攻撃、この私に・・・!!!」
デルトーレは、その攻撃を、余裕で回避をしようとしたが
何故か、その風の刃は、回避しても、方向を変えて襲い掛かる。
「貴様、何を!!!」
必死に、回避を繰り返していたが、
徐々に増加してゆく風の刃に、逃げ道を塞がれ
とうとう、風の刃の餌食となった。
「おい、そろそろ、思い出したか?」
切り刻まれたデルトーレが、ゆっくりと体を起こすと
思い出したあることを口にする。
「過去・・・私が出会った竜で、生き残っているのは
「ふっ、思い出したようだな」
その言葉に、デルトーレが凍る。
「お前が、あの古の竜だというのか!?」
「まだ、解らぬというのか、ならば・・・・・」
「まっ、待ってくれ!」
態度を一変するデルトーレ。
デルトーレも、始祖の血を引くヴァンパイアだが
過去に、サルバドと戦い
消滅寸前にまで追い込まれた経験があった。
また、そのせいで、永い眠りに就いていたのだから
再び、目の前に現れたことは、洒落にならない。
「サ、サルバド殿、この度の戦いから、
我らヴァンパイアの一族は手を引くことを、約束する」
「ふむ・・・では、我が主に対しての謝罪はどうなる?」
「そ、それは・・・・・」
サルバドが、怒りを露にする。
「貴様、もしかして、何も考えておらぬのか!」
「違う、誤解だ。
ただ・・・・・」
「ただ・・・なんだ?」
「考える時間が欲しい。
出来る限りの事は、約束しよう。
なので、少し、時間を頂けないだろうか?」
「・・・・・わかった。
少しだけ、待つことにしよう」
「感謝する・・・」
「おい、話が終わったなら、直ぐに戦闘を、止めさせるのだ」
「わ、わかった」
サルバドとの戦闘を終えたデルトーレは、
急いで、その場から去って行った。
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