第202話アガサ サラーバでの戦い⑤
嘆きの沼の力で、サラーバの城に残っていた者達を、
倒すことには成功した。
だが、アガサが、新たに呼び起こしたブラッドキャッスルには、
嘆きの沼の力が及ばず、立ち入ることが出来ない。
その為、そこから先は、嘆きの沼の力を借りることが出来ず、
実力で、倒さなければならないのだ。
そのブラッドキャッスルに、先陣を切って飛び込んだのは
アルバとその部下達だった。
彼らが、進み始めると、直ぐに、唸り声が聞こえてきた。
「おい、警戒は、怠るなよ」
「はい」
アルバを先頭に、薄暗い通路を、再び進み始めた時
唸り声の正体が、姿を現す。
「こいつら・・・もしかして」
アルバ達の目の前に現れたのは、『ワーウルフ』。
彼らは、蘇ったヴァンパイアたちの従者。
今まで戦っていたグールと違い、彼らは機敏で、攻撃力も高い。
それに、集団での戦闘を得意としていた。
その為、アルバ達と交戦になっても、戦いを優位に進めていた。
劣勢に陥り、アルバの額に、汗が浮かび上がった時、聞き慣れた声が響く。
「押されているようだな」
「!!!」
アルバが振り返ると、そこにはワァサがいた。
「兄貴!」
「部下の前だ、ワァサ様と呼べ」
「あ、ああ・・・・すまない」
ワァサは、アルバと軽く言葉を交わした後、
1人、前へと前に進み出た。
ワァサの放つオーラは、魔王の覇気。
その覇気を浴びたワーウルフ達は、
恐れを抱き、自然と下がり始める。
「おい、どうした?
さっきまでの勢いは、何処に行った?」
挑発するような言葉を述べながら、
腰に携えていた剣を抜くと、今度は、殺気が広がる。
覇気と殺気に
ワァサは、アルバに告げた。
「やれ」
アルバ達も、今がチャンスとばかりに、一斉に襲い掛かる。
すると、先程までとは違い、ワーウルフ達に剣が届く。
次々にワーウルフを屠るアルバ達だが、
このまま黙っているわけがない。
自身を奮い立たせると、再び、アルバ達に向けて牙を剥く。
だが、委縮してしまった体では、太刀打ち出来る筈もなく
無残にも、やられてしまった。
こうして、ワァサの力を借り、
待ち構えていたワーウルフを倒したアルバ達が、
再び、進み始めようとした時、
通路を塞ぐように立つ影が見えた。
その影は、ゆっくりと近づき、姿を見せる。
彼の名は【ロナーリオ】。
始祖に連なるのヴァンパイアの1人である。
ロナーリオは、ワァサ達に告げる。
「貴様らが侵入者か・・・・・
この城は、下種な者共が立ち入って良い場所ではない。
このまま引き下がるなら、目を瞑ろう。
だが、我の忠告を無視するなら・・・・・・」
ロナーリオの目が光る。
すると、新たなワーウルフ達が姿を見せた。
その数は、先程を凌ぐ。
だが、ワァサに動揺はない。
無言のまま剣を抜くと
その剣を横凪に振るった。
すると、魔力の刃が現れ、
目の前のワーウルフ達を切り刻むと同時に
ロナーリオにも襲い掛かる。
だが、ロナーリオは、避けようとはしない。
攻撃を受け、腕を飛ばされたロナーリオだが、
彼は、笑みを浮かべていた。
「フフフ・・・・・この程度の傷で、我は倒れぬ」
その言葉通り、飛ばされた腕が、
糸で繋がれているかのように
元の腕の位置に戻ったのだ。
軽く、腕の感覚を確かめた後
ロナーリオが、魔力を放出する。
「さぁ、始めようか」
ロナーリオの放出した魔力は、
蜘蛛の糸へと変化し、部屋中に張り巡らされた。
「さぁ、我が子達よ、食事の時間だ」
その言葉に従い、ロナーリオの背後から、
その蜘蛛達は、魔力の糸の上を這い、
一定の距離まで迫ると、糸を吐き、攻撃を仕掛けてきた。
見事な連携で、糸を吐き続ける子蜘蛛達の攻撃は、
確実に、ワァサと、その配下達を捉えていたが
彼らも、精鋭達。
そう易々とは、捕まることはない。
飛ばされた糸を、躱しながら、蜘蛛との距離を縮めると同時に
剣を振るう。
こうして、確実に屠っていくが、今までと同じように
数が多く、ワァサの配下にも、今までの戦闘での疲労が現れ始めると
1人、2人と、蜘蛛の糸に捕らえられ始めた。
そして、最後には、ワァサとアルバを残して、
全員が、捕まる事となった。
「残るは、2人ですね」
勝利を確信したロナーリオは、笑みを浮かべているが
ワァサには、悲観するような気配もない。
「おいおい、まだ俺たちが残っているぜ・・・・・
それに、ここからが本番だ!」
「強がりですか・・・まぁ、それも、いつまで持ちますかね」
ロナーリオが、強気な発言をすると
今まで黙って聞いていたアルバが、
静かに、槍に炎を纏わせると、
ロナーリオに向かって走り出した。
「ごちゃごちゃ言ってねぇで、かかって来いよ!」
「血迷いましたか・・・・・」
ロナーリオが合図を送ると、
蜘蛛達が、アルバに向かって、一斉に糸を吐いた。
だが、炎を纏った槍は、その糸を、悉く焼き尽くし
アルバの突撃を止めることは出来なかった。
そして、後1歩の所まで辿り着くと
ロナーリオは、バックステップを踏み、空中へと回避する。
「逃がすかよ!」
アルバは、炎の槍を投げつけた。
投げつけられた炎の槍は、蜘蛛の糸を突き破りながら、ロナーリオに迫る。
「小癪な・・・・・」
ロナーリオは、剣を抜く。
妖艶な光を纏う刀身は、迫りくる炎の槍を、
いとも容易く振り払ったのだが、アルバは、諦めてはいない。
「まだだ!」
新たな攻撃へと移ったアルバは
魔法で複数の炎の槍を浮かび上がらせた。
「これで仕留める」
『ファイヤーランス』
無数の炎の槍が、ロナーリオに襲い掛かる。
だが・・・・・
ロナーリオが、合図を送ると
先程まで、散っていた蜘蛛達が集まり
自らが盾となり、炎の槍を防いだ。
「てめぇ、我が子とか言っていたくせに、盾にするのかよぉ・・・・・」
「フフフ・・・・私のために死ねるのだ。
これ以上の幸福は無かろう」
接近出来ない上、遠距離攻撃は、配下の蜘蛛を使って防ぐ。
──本当に、厄介だな・・・・・
アルバが、苦虫を嚙みつぶしたような顔をしていると
初手以外、手出しをしていなかったワァサが前に出る。
「交代だ。
お前は、休んでおけ。
俺が手本を見せてやろう」
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