第196話アガサ 決戦に向けて②
マリオンは、王城に到着すると、グラウニーと面会し、
今回の一件を話すと、陛下に報告せねば!と立ち上がり、
グラウニーは、部屋を出ていってしまう。
「ちょっと、待ってください!」
1人、取り残されそうになったマリオンは、
慌てて後を追う。
そして、なんとかグラウニーに追いついたマリオンは、
国王ゴーレン アンドリウスと面会することとなり
先程、グラウニーに話したことを、
もう一度、ゴーレン アンドリウスにも、話した。
「にわかには、信じたいことだが・・・・・」
グラウニーとマリオンからの報告なのだから
間違いなく真実なのだろうと思いながらも
悪魔に国が占領されたなど、前代未聞の出来事。
だからこそ、慎重になる。
「グラウニーよ、至急、調査団を募り、事のあらましを調査せよ。
それからマリオン、貴殿らの気持ちは分かった。
だが、調査結果が出るまで、しばらく待て。
勝手に、この国を出ることは許さん」
「しかし、陛下。
今回の出来事は、先も申しました通り、精霊女王からの進言です。
早急な対応が必要かと・・・・・」
「わかっておる。
7日だ。
7日経っても、連絡が無ければ、
それまで、待て」
「畏まりました。
陛下の仰せのままに」
ゴーレン アンドリウスに、待てと言われれば
それ以上、言葉を返すことは出来ない。
マリオンは、城から戻ると
ゴーレン アンドリウスからの言葉を皆に伝え、
出発は、7日後になったと告げた。
「ルン様、エブリン、エンデ、
そういうことだ。
急ぎたい気持ちはわかるが、辛抱してくれ」
「本当に、人族の世界は、面倒だね」
ルンは、呆れたような態度を示した後、
フワフワと飛び、エンデの肩に座った。
「面倒になったら、いつでも、戻って来ていいのよ」
その誘いに、声にならない笑みを浮かべるしかないエンデに
怪訝な表情を見せるエブリンとルーシア。
「エンデ、それは、どういうことかしら?」
「そうね、詳しく聞いてみたいわ」
ルンの発言なのに、自分が攻められている状況に
思わず、ゴージアに助けを求めるように目を向けるが、
執事だけあって、空気を読むのが上手い。
「お茶が冷めたようですので、新しいものをお持ち致します」
そう告げて、部屋から出て行ってしまった。
──たすけてよ・・・・・
そんな、エンデの思いは、通じることはなく
2人に、連行されていった。
その為、話し合いは終わり、
マリオンは、一息つく。
「反対されなくて良かったが・・・・・
あの
そんなことを思いながら、
マリオンは、テーブルの上の冷めたお茶に手を付けた。
その後、2人から、なんとか解放されたエンデは、
この7日間を、有効に使うことにする。
エンデは、ダバンと模擬戦をし、戦闘力向上に努め、
エブリンとシャーロットは、メルクとシェイクと共に、
魔力向上と、連携に時間を費やすことにした。
そのエブリンとシャーロットの指導役には、
ルンが名乗り出たのだが、
実際は、この地までやって来た砂の精霊サウドが務めた。
そして、本来の指導役ルンは、ルーシアとお茶を楽しんでいた。
こうして、エンデ達が、修業をしていた頃、
国王ゴーレン アンドリウスの指示を受けた密偵たちは、
砂漠の国サラーバの近くまで辿り着いていた。
「おい、あれを見ろよ」
砂漠を歩き始めた彼らの目に、映ったのは
一面に広がる暗雲と、黒い霧に包まれたサラーバだった。
「確か、あそこがサラーバだったよな・・・・・」
「はい、間違いないかと・・・・・」
密偵のリーダー【ノキア】は、
目の前の光景に驚きながらも、接近を試みる。
だが、近づくにつれ、空気が変わる。
周囲の温度が下がり、ここが砂漠とは思えない。
「これは、どういうことだ。
何が起きているのだ・・・・・」
万が一に備え、その場に数人を残して、
黒い霧の中へと、ノキア達は進んだ。
霧の中は、薄暗く視界も悪い。
「気を付けろ。
絶対離れるなよ」
「・・・・・」
ノキアが声を掛けたが、返事は無い。
「おい・・・・・」
入ったばかりなのに、
振り向いても、黒い霧が漂うだけで、仲間の姿は無かった。
──いったいどこへ・・・・・
辺りを窺いながら、ゆっくりと歩を進め仲間を探していると
ノキアは、何か壁のようなものに衝突する。
「これは、なんだろう・・・」
軽く触れてみたが、これが何かわからない。
その為、ゆっくり後退ると、
先程まで、何も無かった場所に、同じようなものがあり
ノキアはぶつかる。
「えっ!?」
思わず声を上げると、
偶然、黒い霧が薄くなり、衝突したものの正体を知ることとなった。
紫の肌、額より長く伸びた2本の角。
「グフフフ・・・・・」
「悪魔・・・・・?」
鬼のような姿をした悪魔は、満足そうに笑みを浮かべる。
「人間・・・・・旨そうだな」
悪魔は、持っていた斧を、振り上げた。
慌てて距離を取ろうとするノキアだったが
既に周囲を囲まれており、逃げ道など無かった。
背後から、襲い掛かった悪魔に捕まると
ノキアは、生きたまま喰われた。
それから、数時間後・・・
待機を命じられていたノキアの配下達は、
待っていても帰って来なかった為
命令に従い、アンドリウス王国に戻ることにした。
そして、出発予定の7日目。
密偵たちは戻って来た。
そして、報告を聞いたゴーレン アンドリウスは、
マリオンからの報告と酷似していたこと。
また、黒い霧の中に偵察に出向いた者たちが、
帰って来なかったことを踏まえ
兵を送り込むことを決意する。
「グラウニー」
「はっ」
「準備は、出来ておるな」
「勿論です」
「では、出陣せよ!」
アンドリウス王国、ゴーレンアンドリウスは、
砂漠の国サラーバに向けて、兵を送る命令を下した。
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