第189話友人
精霊界との魔界の境界まで、無事に辿り着くと
ルンが、ゴージア達に、御礼を述べる。
「ここまで、無事に来れました。
これも、貴方達のおかげです!」
「これは、我らの我儘でもありますので
礼など、必要ありません。
ですが、お礼というならば
1つ、お伺いさせていただいても?」
「ええ、何かしら?」
「ベーゼ様の領地は、どうなっておりますでしょうか?」
「ベーゼの領地?」
「はい、我らも、嘆きの沼で眠りについておりました故、
今現在、領地がどうなっているのかを
教えていただけると、有難いのですが」
「確かに、気になるわよね。
・・・確か、ベーゼが亡くなった後、
六大魔王で取り合いが始まるかと思ったけど
動いたのは、アガサと【マルバ】と【パイモ】の3人だけだったのよ。
それで、3人が睨み合いを続けながら、開拓を目指したんだけど
領地に、誰1人としていなかったから、手の付けようがなかったみたい。
それで、撤退したから、
今は荒れた大地になっているよ」
「そうですか、それは僥倖、何よりです。
では、これより我らが開拓致しましょう」
「うんうん。
畑などの事に関しては、こっそり精霊を貸してあげるから
頑張って」
「感謝致します。
それでは、エンデ様、また、後日」
ゴージアは、それだけ伝えると
仲間と共に、領地に向かって歩き始めた。
その背後から、手を振るエンデとルン。
「君も、それなりの覚悟をした方が良さそうだね」
「他人事だと、思って・・・・・」
ルンを睨むエンデ。
「あはは。
まぁ、ゴージアにも言ったけど
困ったときは、私も手を貸すから」
ゴージア達の姿が見えなくなると
エンデ達は、精霊界へと足を踏み入れた。
精霊界は、先程までの魔界と違い、空は青く、空気も澄んでいた。
また、見たこともない花が咲き乱れ、赤や青、緑などの小さな光が飛び交っていた。
手を伸ばすエンデ。
だが、光はエンデの手を躱し、無邪気に飛び回る。
「精霊は、ここで生まれるの?」
「ここで生まれる精霊もいるけど、人間界で生まれる精霊もいるよ。
まぁ、どちらも一度は、人間界で生活することになるんだけどね」
ここにいる光の状態の精霊達も、いつかは人間界で修業することになる。
そんなこと気にも留めていないのか、光の状態の精霊たちは楽しく飛び回っていた。
ルンと共に、精霊達を見ていると、正面から人型の精霊が近づいて来る。
「お迎えが来たみたいよ」
迎えに来たのはフーカ。
彼女は、ルンの前で止まった。
「ルン様、お帰りなさいませ」
「ただいま。
それで、、私を呼び戻すとは、何事ですか?」
「はい、実はお客人がお見えになられており、それがその・・・・・」
「ただの客人ではないんだね」
「はい、ワァサ様で御座います」
「えーーーー!。
ワァサが来ているの?」
「はい。
あの話は、ワァサ様からのものでして・・・」
『!!!』
「呼び戻された理由は分かったよ。
それで、ワァサは、何処にいるんだい?」
「花の宮殿で、お待ち頂いております」
「そうですか。
では、行きましょう」
フーカの案内のもと、
ワァサと、配下の悪魔たちが待っている花の宮殿へ向かって歩き始める。
『花の宮殿』
そこは精霊達が集う広場で
その広場の真ん中には、ガゼボが建っており、
そこでワァサ達が待っているというのだ。
ワァサの案内で、その広場に到着すると
遠目でもわかるほど、似合わない一行の姿が見える。
まったく異様で、似合っていない。
「あれはあれで、不気味だねぇ・・・・・」
苦笑いを浮かべるルン。
「ルン様・・・・・」
「あはは・・・・・ごめん」
フーカに咎められた。
ガゼボに辿り着くと、
ルンは、エンデと共に、ワァサの正面に立つ。
「よぉ、この忙しい時に・・・・・・・」
悪態をつこうとしたワァサだったが、
エンデの姿を見て、言葉を飲み込んだ。
「おい・・・・・」
ワァサの視線が、エンデから離れない。
その姿に、ルンが、口を開く。
「なんだい?
何か言いたそうだね」
「・・・・・これは、どういうことだ?
あいつが何故ここに・・・・・いや、そんなはずはない。
あいつは・・・・・」
困惑するワァサ。
その姿は、ルンの予想以上で
思わず、笑ってしまいそうになるが
そこを我慢して、ルンが告げる。
「紹介するよ、彼はエンデ。
エンデ ヴァイスだよ」
「エンデ ヴァイスだと・・・・・べ、ベーゼではないのか?」
「違うわ。
彼は、人間界で産まれたベーゼとノワールの間に出来た子供なのよ。
この意味、貴方なら理解できるわよね」
「人間界で・・・・・まさか!」
一部の魔王しか知らない禁忌の呪法『リ・インカネーション』。
この呪法を使い、産まれたばかりの子を、
ベーゼとノワールが、人間界へと転生させたことを
この時初めて知った。
「あれは、本当だったんだな」
「そうみたいね。
天使と悪魔が、心を合わせて呪文を唱えるなんて話、
普通なら誰も信じないし、まして、やろうと思っても出来ることではない。
でも、ベーゼとノワールは、やり遂げた。
いえ、ベーゼとノワールだから、出来たのかもしれないわ」
「そうだな・・・・・」
亡き友人の忘れ形見ともいえるエンデを目の前に、感慨にふけるワァサ。
ルンは、ワァサの目に、エンデは、どう映るんだろうと心配ではあったが
今のワァサを見る限り、問題はないと感じ、話を進める事にした。
「いつまでも、懐かしんでいても仕方ないから
本題に入るわ。
それで、アガサの事だけど・・・・・」
「ああ、あのジジイは、人間界を手中に収めるつもりだ。
それだけは、何としても阻止せねばならない」
「うん、そうね。
それで、提案なんだけど・・・・・」
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