第182話 動き出す者たち 新たなる侵略者
アビズと共に、屋敷に集まった闇精霊達は
アガサの歓待を受け、お菓子や飲み物に喜んでいた。
そんな楽しい雰囲気の中、突如、異変が起きる。
飲食を楽しんでいた中から、1人、2人と倒れ始めたのだ。
「なにこれ・・・どういうこと・・・・・」
四肢が痺れ、その場に倒れ込んでゆく精霊達。
その中には、当然のように、アビズの姿もあった。
そこに、不敵な笑みを浮かべながら
アガサが、姿を現す。
「フォフォフォ・・・上手くいったようじゃな・・・」
動くことの出来ないアビスは、アガサに向かって
声を縛りだして、問いかける。
「じいちゃん・・・どういうこと・・・・・」
「ああ、今回の話を聞いてな
儂らも、人間界に降りることにしたのだ。
だが、儂らは、このままで降りることは出来ん。
なので、貴様らの体を借りることにしたのだ」
「そんな・・・・・でも、僕達だって・・・」
「言いたいことは、理解できる。
お前達も、人間界に降りることは出来ないと言いたいのだろ。
だが、そんな心配は、無用じゃ。
精霊回廊が、あるではないか」
「あっ!・・・・・」
「理解が早くて助かる。
では、始めようか」
アガサの言葉が合図となり、
部屋に、悪魔達が姿を見せ始めた。
生贄にされると理解した闇精霊達は
必死に藻掻くが、
四肢が痺れている為、思うように身動きが取れない。
そんな精霊達を捕らえ、
運び込んだ台座に括りつけた。
「では、始めるか」
こうして、憎悪と恐怖を、植え付ける為の儀式が開始された。
精霊の羽や脚に、煮えたぎった油を落とす悪魔達。
『ぎゃぁぁぁぁぁ!!!』
『あ、熱い!止めて!フゴッ!・・・・・』
痛みで、意識を刈り取られそうになる闇精霊達だが
悪魔達は、それを許さず、水をかけて、意識を取り戻させた。
ゆっくりと、殺さない程度に甚振られている闇精霊達の姿に
悪魔たちは、笑みを浮かべている。
意識を取り戻す度に、繰り返される拷問。
部屋中に響き渡る悲鳴。
死にかけても、回復魔法を掛けられ、
傷を癒す。
そして、再び、拷問にかけられた。
また、歓待の際、仲良くしていた精霊達に対しては
向かい合うように拷問台を配置し、
片方だけに、見るに堪えない、苦痛を与え
精神的に追い込んだ。
夜が明けても続く、この拷問に
徐々に、壊れ始める闇精霊達。
その姿を見て、声を荒げるアビス。
「やめろ!
こんなことをして、ただで済むと思うなよ!」
四肢の痺れから、回復したアビスだが
拷問台に、貼り付けられている為
身動きが取れない。
それに、何故か、力も入らない。
それでも、必死に魔法を発動させようとするアビスだったが
その度に、大きく魔力が削がれ、力を失ってゆく。
そんな姿のアビスに、アガサが、声をかける。
「この台はな、魔力封じの首輪以上の効果を持っているのだ。
その効果については、お前なら理解できるだろう」
一部の精霊を除き、精霊は、力より魔力に
その為、魔力を封じられてしまうと、成す術がない。
当然、闇精霊という存在も、力よりも、魔力に優れており
今の状況は、最悪だといえる。
──全部、僕のせいだ・・・・・
アガサへの憎しみと同時に
後悔が、押し寄せる。
身動きも取れず、仲間の変わり果ててゆく姿を見せつけられ
精神的に追いつけられてゆくアビス。
羽を
堪らず、叫び声をあげる仲間の姿に
アビスから、生気が抜けてゆく。
全て、アガサの思惑通りに進み、
アビスから、完全に生気が失われると
アガサは、合図を送り、拷問を止め、
闇精霊達に、回復魔法をかけた後、皆に告げた。
「そろそろ良い頃だ、儀式の準備を始めよ」
苦痛に耐え忍んだ闇精霊達を前に
モスが、悪魔達に、血のような色をしたワインを配ると
そのワインを手にしたアガサが、アビスの前に立つ。
そして、呆然としているアビスに、声をかける。
「本当に、お前は儂の良き友じゃ。
こんなに、思った通りに動いてくれるのだからのぅ」
言葉を返すことの出来ないアビスの前で
アガサが、床を『コンッ!』と踏み鳴らすと
魔法陣が浮かび上がった。
「では、始めるか」
アガサの指示に従い、動き出した悪魔達は
拷問台に括りつけられた闇精霊の横に立ち、その時を待つ。
アガサが、ワインを掲げる。
「これより、我が一族は、
新たな地へと赴く。
そして、その地を、我らの地とする。
『乾杯!』」
悪魔達が、ワインを一気に飲み干すと
アガサが、高らかに宣言する。
「では、我らも、人間界に向かうとしよう!」
その言葉と同時に、
魔法陣が光を放つと、悪魔達の体が
闇精霊達の中に、吸い込まれた。
すると、闇精霊達の表情が
精霊とは思えない顔つきへと変化した。
笑みを浮かべ、牙を見せる闇精霊の姿に
待機していた悪魔達がら、歓喜の声が上がる。
「すばらしい・・・・・」
「流石、アガサ様・・・」
それぞれが、アガサを称える中
変化した者から、拘束が外されてゆく。
そして、最後に、アビズが目を開けると
待機していた悪魔が、拘束を外し、声をかける。
「旦那様、ご気分は?」
「うむ、問題ない」
「それでは・・・」
「うむ、参ろう」
「御意」
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