第183話 動き出す者たち 新たなる侵略者②
闇精霊の体を奪った悪魔の総数29名。
その者達に向かってアガサが、声をかける。
「では、参ろうか」
闇精霊の体と記憶を奪った悪魔の集団は、
他の悪魔達に、見つからないように
慎重に精霊界を目指して進む。
その理由は、ここが魔界だという事。
29体もの精霊が、勝手に魔界に入り込んでいることが知れれば
それだけでも、敵対行為と捉えられても仕方がない。
それに、精霊の体を奪い、
地上に降りようとしていることが発覚すれば
天界全体を巻き込んだ騒動になり
戦闘にも、なり兼ねない。
だからこそ、目立たぬように精霊界を目指しているのだ。
そんな、アガサの真の目的は、地上界を恐怖に陥れ、
全てを手に入れる事。
その為には、配下の悪魔も、
全員を、地上界に連れて行かなければならない。
アビズから聞いた悪魔など、
自身が出向けば、取るに足らぬこと。
屠ればいい。
そう考えていた。
だが、事はそう上手くはいかない。
やはり29体というのは多過ぎた。
「おい、貴様ら、そこで何をしている!」
隠れながら進んでいたアガサの一行は
知らぬ間に、取り囲まれていたのだ。
アガサは、声の主に、顔を向けた。
「よりによって、あいつの配下か・・・・・」
七大魔王(現在は六大魔王)は、共闘している訳ではない。
同じ悪魔族でも、お互いを牽制し合う事で、秩序を保っているだけなのだ。
しかも、今回、アガサ達を見つけたのは【魔王ウァサ】の配下の悪魔達。
ウァサは、エンデの父親であったベーゼの友人でもあるが
同時に、アガサの事を良く思っていない悪魔の1人。
そんな男の配下に、アガサ達は囲まれている。
──ここで、捕らえられるわけにはいかない。
そう思うが、今は、闇精霊の体。
魔力で劣ることはないが
力は、格段に劣る。
どう考えても、死者を出さずに
この場からの脱出は、不可能。
アガサは、故郷ともいえる魔界を捨てることを決意し
部下達に、命令をする。
「分散するのじゃ!
皆、決めた通りに、行動せよ!」
言い終えると同時に
アガサが、闇を広げ、取り囲んでいた悪魔達の視界を奪うと
アガサの配下達は、一斉に、四方へと飛んだ。
彼らは、ワァサの配下の悪魔達が、視界を奪われているうちに
逃げるつもりだ。
だが、ワァサの配下の1人、【アルバ】が、それを許さない。
「くそ精霊ども!
調子に乗るなぁぁぁぁぁ!!!」
アルバは、怒りと共に、雷を走らせた。
そして、その雷は、四方に飛んだ精霊達へと襲い掛かる。
アガサの広げた闇が、逆に仇となり
気付くことに遅れた精霊達は、
アルバの攻撃を受け、吹き飛ばされた。
「よし、捕らえろ!」
アルバの指示のもと、悪魔達が動き出すが
それを阻止する為に、アガサが動く。
「そうはさせぬぞ!
下級悪魔ども!」
怒号と共に、アガサが、魔法を放とうとした瞬間
モスが、間に割って入って止める。
「旦那様、ここで、それを、お使いになれば
今のお体が、弾けてしまいます。
ですので、ここは、我にお任せを」
言い終えると同時に
モスは、闇精霊の体を脱ぎ捨て、元の姿へと戻った。
「モス・・・」
「旦那様、どうかご無事で・・・・・」
悪魔の姿となり、アガサを庇うように
立ち塞がったモスを見て
アルバは、思い出す。
「お前は、魔王アガサの配下だった筈だが・・・
何故、精霊の姿に・・・・・」
「貴様に、教えることなど何もない。
我が主君の野望の為、貴様は、ここで消えてもらう!」
モスが、魔法を放つ。
『ダークランス』
モスの放った魔法を、アルバは、あっさりと躱した。
だが、それも想定内。
モスとしては、主であるアガサを逃がす為の時間を
稼ぐことが出来ればいい
そう思っている。
だが、悪魔達の数は多い。
「さて、どれだけ耐えれるでしょうか・・・」
覚悟を決めたモスに、背後から声がかかる。
「モス様、お供しますよ」
「1人では大変でしょうから
こちらは、お任せください」
そう言って現れたのは、
闇精霊の体を脱ぎ捨てた
仲間の悪魔達だった。
「アガサ様の為、ひとつ、踏ん張りましょう」
「ああ、アガサ様に栄光を!」
その言葉を合図に、
ワァサの配下の悪魔達と、アガサの配下の悪魔達との戦闘が始まった。
その戦いの
それに気づいたアルバが、そうはさせぬと、
動き出す。
だが、それも、アガサの配下の悪魔に阻止された。
「邪魔だ!
どけっ!」
振り払おうとするアルバに対し
アガサの配下の悪魔は、無理に攻撃を仕掛けず
時間を稼ぐことに徹底していた。
その為、アルバは、苦戦を強いられ
倒すことが出来ない。
視界から、遠ざかってゆくアガサの姿。
──このままでは、逃げられてしまう・・・・・
そう思った時だった。
「アルバ様!」
援軍が駆け付けたのだ。
「【デリート】か、良く来てくれた。
早速だが、この先にいる闇精霊達を捕まえろ」
「しかし・・・・・」
「ここのことはいい。
いいから、行け!
頼んだぞ」
「はい!」
到着したばかりのデリートだったが
アルバの指示に従い、
闇精霊の後を追おうとした。
しかし、アガサ配下の悪魔が、それを許さない。
「お前たちの相手は、俺様たちだ!
ここから先は、進ませないぜ」
魔力で武器を具現化し、デリートに襲い掛かる。
だが・・・・・
その攻撃を、割って入ったアルバが受け流した。
「忘れるな、お前の相手は、この俺だ」
一旦、距離を開けるアガサ配下の悪魔。
「邪魔をしおって・・・」
苦虫をかみつぶしたような表情の悪魔の姿に
アルバが、不敵に笑う。
「もう、他の事は、考えねぇ。
俺の仕事は、貴様らの殲滅だ」
目の前のアルバから、異様な魔力が解き放たれる。
その魔力に、アガサ配下の悪魔が、一歩下がると
突然、背後に、危険な何かを感じて、
思わず振り返る。
すると、そこには黒い影が浮いていた。
「な、なんだ!?」
驚く悪魔をよそに、アルバが呟く。
『シャドウ バインド』
その言葉と同時に、
黒い影から、何本もの手が伸び、
アガサ配下の悪魔に、纏わりつこうとする。
「チッ、小賢しい・・・・・」
必死に、振り払おうと、切り刻んでみるが
全く効果が無く、アルバと対峙していた悪魔は
とうとう、捕縛されることとなった。
「先ずは、1人」
捕らえたことに、安堵したアルバだったが
アガサ配下の悪魔は、まだ、諦めてはいなかった。
──アガサ様に、栄光を・・・・・
その思いと共に、魔力を暴走させ、
自爆攻撃を仕掛けたのだ。
アルバの配下と、仲間の悪魔も巻き込んでの自爆攻撃は
辺り一面をも、吹き飛ばした。
子の自爆攻撃で、負傷した者もいるが、
大半の者が、爆発に巻き込まれ、
跡形もなく、姿を消したようだ。
だが、ギリギリで、結界を張ったアルバは
傷を負っているものの、生き伸びていたが
目の前の光景に、頭を抱えている。
「これって、一大事だけど・・・・・
なんて、報告すればいいだよ・・・・・」
アルバは、兄である魔王ワァサの激怒している表情を
思い浮かべてしまい、大きく溜息を吐いた。
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