第169話 アルマンド教国 セグスロード現る。

破壊された扉から、何かが飛んできた。


その物体は、戦いに慣れていない神父達に衝突し、

その後も、数人を巻き込んで止まった。


『ヒィ!』


近くにおりながら、偶然、被害を免れた神父は、小さな悲鳴を上げた。



飛び出して来た何か・・・・・。


それは、あらぬ方向に曲がり、人としての形を成していない

ファールとバンダムだった。



少し前の事・・・・・


扉の前まで辿り着くと、2人は、『もう十分じゃ』とサハールに声を掛けられた。


『えっ!?』と驚いていると

サハールは、2人の首を掴み

老人と思えぬような力で持ち上げると

そのまま扉に向かって放り投げたのだ。



見た目は老人かもしれないが、サハールは、アンデット。


しかも、エンデの力で修復された為、この程度の事は容易たやすいこと。



その後の事は言うまでもなく、神父達を巻き込むことで止まり

現在に至る。



未だ、砂埃の舞う入り口から、最初に姿を見せたのは、サハール。



「ホッホッホッ・・・・・

 久しいなセグスロードよ」


「貴様、もしかして、サハールか!」


「覚えておったか・・・・・

 それは僥倖じゃ。


 だが、それもすぐに終わるがのぅ・・・・・」


サハールは、掌に、エンデの魔法に似た、黒い塊を出現させた。


「この死に損ないが!

 何をするつもりだ!?」


「ホッホッホッ・・・・・

 我が同胞を呼ぶだけじゃ」


その言葉通り、サハールは、黒い塊から

アンデットと化した魔獣を呼び寄せたのだ。


『ガルルルル・・・・・』


現れたアンデットの正体は、あの山に巣くう元魔犬の集団。


「主様の力は借りぬ。


 我が恨みは、我が手で晴らさせてもらおう」


サハールの号令により、魔犬達が一斉に襲い掛かる。


それに、対抗しようと

神父たちも槍で応戦するが、力の差は歴然。


次々と、成す術無く、倒されてゆく。


次々と屠られる神父達。


回復魔法を使おうと、前に進み出たシスター達も

同じように、魔犬の餌食となった。


その光景に、苛立つセグスロード。


「この駄犬共が!!!」


セグスロードは、仕方がないとばかりに

光の魔法を使い、周囲に大量の光の剣を浮かび上がらせた。


そして、その剣に命じる。


「わが剣の餌食となれ!」


光の剣は、誘導されるように魔犬に突き刺さると、

次々と消滅させた。


セグスロードの攻撃は、これで終わりではない。


間髪置かず、次の魔法を発動する。


「顕現せよ、我が剣士たちよ」


その言葉に従い

セグスロードの前に、7人の光の剣士が現れた。


剣士達は、人の形を成しているが

どう見ても人ではない。


その光の剣士達が、次々に魔犬を屠り、

全てを倒し終えると

矛先を、サハールへと向けた。


形勢逆転したセグスロードは、

笑みを浮かべて告げる。


「貴様も消滅させてやる!


 2度と儂の前に現れぬようにしてやるわ。


 行け!」


命令に従い、光の剣士が襲い掛かると

サハールは霧と化して、攻撃を躱す。


しかし・・・・・


「愚かな・・・・・」


不敵な笑みを浮かべるセグスロードから

再び、魔法が、発動される。


すると、剣士達が纏っていた光が膨れ上がり、

霧と化したサハールに襲い掛かった。


『ぐおぉぉぉぉぉぉぉ!!!』


消滅してゆく霧。


徐々に晴れてゆき、

サハールが消滅するのも、時間の問題かと思われたその時。


霧と化していたサハールの姿が、一瞬にして消えた。


声を大にして、笑うセグスロード。


「ハッハッハッ。


 儂の勝ちじゃ、あ奴、とうとうこの世から、消えおったわ」


笑いが止まらないセグスロードは、勢いのままエンデ達を睨みつけた。


「さて、残るは貴様らだ」


その言葉を聞いても、

エンデ達に怯えた様子もない。


「仕方ないから、僕が手を貸してあげるよ」


独り言のように、

誰かに話しかけたエンデが、前に進み出た。


「小僧・・・・・・

 貴様に何が出来るという・・・・・」


その言葉の通り

エンデの出方を伺うセグスロードだったが

エンデに呪文を唱える気配もなく、

手に武器も持っていないことから、溜息を吐く。。


「なんだ、ただのはったりか・・・・・

 ならば、待つこともなかろう。


 殺せ・・・・・」


セグスロードの命令に従い、光の剣士が襲い掛かる。


その時だった。


突然、エンデの横に現れた黒い塊から

巨大な物体が姿を現すと、近くにいた光の剣士を、丸呑みにした。


「何!」


驚くセグスロード。


『グギャァァァァァ!』


ここぞとばかりに、雄叫びを上げたアンデットオオトカゲ。


流石に、大きすぎて、連れて歩くわけにはいかなかった為、

一旦、召喚を止めていたのだ。


そして、この場で、再び召喚されたアンデットオオトカゲは、

何故か、やる気に満ち溢れていた。


光の剣士を飲み込んだアンデッドオオトカゲは

勢いそのままに突進し、

他の光の剣士達を、尻尾で薙ぎ払い、吹き飛ばす。


防御も意味を成さず、吹き飛ばされた光の剣士達は

壁や柱を破壊して止まった。


その光景に満足したアンデットオオトカゲは、

エンデの側を離れ、ガリウスの元へ。


「ちょっ!!」


──主は、僕だよね・・・・・


慌てて引き留めようとしたが、

アンデットオオトカゲは、

既に、ガリウスを背中に乗せて、ご満悦の様子。


「・・・・・」


「えと・・・・・なんかスマン・・・・・

 その代わりと言っちゃぁなんだが・・・・・」


ガリウスの合図に従い、アンデットオオトカゲが

再び攻撃を開始する。


起き上った光の剣士達に攻撃を仕掛け、

隙あらば飲み込む。


勿論、光の剣士も黙って見ている訳ではない。


アンデットオオトカゲに向けて、攻撃を仕掛けるが

躱せる攻撃は躱し、死角となる場所への攻撃は、ガリウスが防いだ。


悉く、攻撃を撥ね退けるアンデットオオトカゲとガリウス。


この2人(?)に、死角などない。


見事に連携の取れた戦闘を見せ、敵を屠ってゆく。



その姿に、呆然とするエンデ。


エブリンとシャーロットが、隣に並び話し始めた。


「ねぇ、あんなの、何時の間に練習してたの?」


「多分、食料調達に行った時じゃないかしら?」


「そういえば、

 狩に出かけるときは、いつも一緒だったものね」


「・・・・・そうなんだ」


複雑な心境で、戦いを見守るエンデ。


『はぁ~』と、溜息を吐いた後、エブリンが告げる。


「そろそろいいんじゃない?」


「あっ!

 そうだった」


エンデは、再び、黒い塊を浮かび上がらせると

声を掛けた。


「もういいよ」


エンデの言葉に従い、姿を見せたサハール。


「主様、申し訳ない。


 少し、調子に乗ってしまいました」


「ん、別にいいよ。


 それより、体は?」


「はい、もう回復致しました」


「わかった。

 それで、どうする?」


『どうする?』と聞かれたサハールに、迷いはない。


「剣士は、あの方達にお任せ致します。


 儂は、あ奴を・・・・・」


「わかった、頑張って!

 でも、油断は、禁物だよ」


「はっ、肝に銘じておきます」



目的のセグスロードに向けて、進み出るサハール。


その姿を見つけ、驚くセグスロード。


「貴様、生きておったか?」


「セグスロード。


 もう、油断はせぬ。


 今度こそ、この儂の手で葬ってやる」


「よかろう。

 

 貴様こそ、この手で、葬ってやる・・・・・・」


2人の対決が始まる。


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