第165話会談に向けて

聖騎士の案内に従い、王都を歩くエンデ達だが

先頭にエンデとエブリンが並び

その後ろにシャーロットがいる。


そして、3人の護衛役として

ガリウスとマリウルとダバンが歩く。



時間を、少し前まで遡る・・・・・



王都の入り口となる門の前で、待機しているエンデ達は、

聖騎士からの返事を待っていた。


「中々戻って来ないね」


「ああ・・・・・だが、もう暫く待とう」


マリウルに促され、その場で待機を続けるエンデ達。


その正面には、王都への侵入を阻むように、

数百名の聖騎士達が身構えている。


だが、彼らの後ろにある門や壁は、

エンデたちの攻撃により、ボロボロに破壊されており

今では、門を通る必要がない程だ。


「あのまま突撃しても、良かったのに・・・・・」


エンデの言葉に、ダバンだけが頷く。


しかし、他の者達は首を横に振る。


「駄目よ。


 そんなことをすると、関係のない人々も苦しむことになるのよ」


エブリンも上層部の粛清には、賛成している。


だが、出来るだけ無関係な人々を巻き込みたくない。


それは、シャーロットも同じ。


2人の意見は、一致している。


こうなると、エンデに勝ち目はない。


「わかったよ・・・・・」


エンデとダバンは、大人しく、エブリンたちの意見に従う事を決め

大人しく待機する。



それから、暫くして、本殿に行っていた聖騎士が戻って来た。


聖騎士は、仲間達の間をすり抜け、エンデの前に立つと

手に持っていた書面を読み上げる。


「教皇様の御言葉を告げる。


『面会の件は承った。


 これより、準備に入る。


 準備が整い次第、改めて、こちらから使者を送る。


 それまでの間、待機して待て』


 以上だ」


教皇からの書状に、『イラッ!』とするエンデ。


「こっちが譲歩してんのに・・・・・

 ほんとに、こんな奴らの言う事聞いて

 待たないといけないの?」


不満そうな顔をしたまま

エンデは振り返り、エブリンに尋ねると

エブリンも、今の書状の内容に、不満があったようで

眉間に皺を寄せた。


「確かに、腹立たしいわね」


「ならば、こいつの首でも落とそうか?」


間から割って入り、エンデたちの前に、進み出ようとするダバンだったが、

マリウルに止められる。


「落ち着け、ここは任せろ」


ダバンの肩を叩き、マリウルが前に進み出ると

書状を読み上げた聖騎士に告げる。


「御返答、確かに頂戴した。


 だが、貴殿らは、何か勘違いをされているようだな」


「何!?」


「貴殿は、この旗の意味を理解しているのか?」


アンデットの大軍ばかりに目が行き、

しっかりと旗を確認していなかった。


改めて、旗に目を向けた聖騎士は

『ん・・・・・』と目を細める。


「どこかで見たような・・・・・」


未だ、理解できない聖騎士に代わり、マリウルが答える。


「この旗は、アンドリウス王国旗だ!」


『ハッ!』と驚いた表情を見せる聖騎士に、

追い打ちをかけるようにマリウルがは告げた。


「ここにいるのは、アンドリウス王国軍。


 その事を踏まえての対応をして頂きたい」


慌て始める聖騎士。


「わ、わかった。


 必ず教皇様にお伝え致しますので

 もう暫く、お待ちください」


先程とは、打って変わった態度を見せ、

足早にその場から去っていく。



再び待機することになったエンデ達だったが

先ほどと違い、すぐに聖騎士が戻ってきた。


しかも、馬に乗って・・・・・


「馬があるのなら、さっきも、馬でくればいいのに・・・・・」


そう呟いたエンデを、誰も咎めようとはしない。


皆も同意見なのだ。


そんなエンデ達のもとに、聖騎士が到着した。


今度は、エンデ達に、一礼をして、丁寧に、案内を申し出る。


「先程は、失礼な態度をとり、申し訳ございません。


 準備が整いましたので、ご案内いたします」


「・・・わかったわ」


案内をする聖騎士に続いて、歩き始めるエブリンとシャーロット。


後ろには、マリウルとガリウスが続く。



こうして、王都に入っていく仲間達の後ろでは

エンデが、アンデットドラゴンに話しかけていた。


「【サラバド】、ここは任せるよ。


 僕たちは、ちょっと行って来る」



「わかった。


 ここは、我に任せるがよい」


アンデットドラゴンのサラバドに、他のアンデットたちを任せ、

エンデは、仲間達の後を追い、王都の中に入った。





そして現在に戻る。



王都を歩くエンデ達は、街の様子から

何か不気味さを感じずにはいられなかった。


「誰も歩いていないね」


「ええ、前の街と同じようね」


街の中なのに、歩く人々の姿が見受けられないのだ。


その代わり、家の中から『コッソリ』と、様子を伺っている人々の気配を感じる。


だが、その中には、嫌な視線も混じっていた。


「主・・・・・」


「うん、様子を伺っているだけなのか、それとも・・・・・」


「俺が、確かめてこようか?」


ダバンは、エンデに許可を貰おうとするが、エンデは首を横に振る。


「少し、様子を見てみようよ。


 でも、相手が仕掛けてきたら、遠慮は要らないから」



「わかった。


 だが、念のために、敵の位置は把握しておくぞ」


「うん、お願い」


短く会話を終えると、エンデは、再びエブリンと共に、先頭に立つ。


いまだに、嫌な視線は感じるが

敵が攻撃してくる様子はない。


そんな状況の中、とうとう、正面に本殿が見えてきた。


「あれが本殿か・・・・・」


教会同士が繋がっているとはいえ、殆ど交流の無かったアルマンド教国。


その立派な建物に、マリウルやガリウスからも、感嘆の声が漏れた。


その言葉が耳に入ると、聖騎士が反応する。


「た、確かに、あちらが本殿ですが

 貴方方をお連れするのは、別の場所です」


そう告げた聖騎士は、本殿と目と鼻の先にある建物の前で、足を止めた。


「どうぞ、この中へと、お進みください」


エンデ達が案内をされたのは、先ほどの本殿とは似ても似つかない程の

兵舎のような建物だった。




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