第84話王都騒乱 待ち構える者達

門を破壊して、王都に、足を踏み入れたエンデ達。


先頭には、アンデットと化したオオカミ魔獣。


次にダバン。


そしてエンデ。


最後に、4頭のオオカミ魔獣に守られているエブリンが続いた。


エンデ達が目指しているのは、皇帝がいると思われる王城。


その、王城に向かって歩いていると

兵士から報告がいったのか

通路を塞ぐ形で、兵士達が、隊列を組んで待ち構えていた。


「第一軍、突撃!」


長槍を前に突き出し、隊列を崩さず、エンデ達に突撃してくる兵士達。


だが、アンデットと化しているオオカミ魔獣達は、恐れを知らない。


その為、兵士達に向かって走り出した。


衝突の際、数頭のオオカミ魔獣は、串刺しにされたが

槍をすり抜けたオオカミ魔獣達は、兵士に襲い掛かる。


しかし、この攻撃を予測していたのか、

第二軍が挟み撃ちにするようにして、これを殲滅にかかった。


数人の兵士で、1頭のオオカミ魔獣を取り囲み、

確実に倒す。


次々に、オオカミ魔獣の首を飛ばすと

兵士たちは、勝利に声を上げる。


「残るは、奴らだけだ!」


兵士達の視線は、エンデ達に向く。


だが・・・・・


オオカミ魔獣はアンデット。


聖なる力でもなければ屠る事は出来ない。


完全に油断した兵士に、

首だけになったオオカミ魔獣の1頭が襲い掛かる。


首元に嚙みついたのだ。


「ぐわぁぁぁぁぁ!」


仲間の叫び声に、兵士達が振り返る。


その瞬間、ダバンが駆け出し、兵士の集団に飛び込むと

近くにいた兵士に向かって、飛び蹴りを放つ。


仲間を巻き込みながら吹き飛ばされる兵士。


ダバンは、近くにあったオオカミ魔獣の首を掴むと、

最後尾で馬に乗り、偉そうにしている男に向けて投げつける。


「うりゃぁぁぁ!」


『グガァァァァァ!!!』


大きく口を広げ、牙を剥くオオカミ魔獣の首。


「ひぃ!」


偉そうにしていた男は、思わず悲鳴のような叫び声を上げると

体勢を崩し、落馬した。


だが偶然にも、それが功を成し、オオカミ魔獣の牙から逃れたが

急に向きを変えたオオカミ魔獣の首が、再び迫る。


体勢が整っていない為、もう少しで、オオカミ魔獣の牙が、

食らい付くと思われた瞬間、

護衛の兵士が、オオカミ魔獣の首を細切れにした。


護衛の兵士が、声を掛ける。


「【ゴルバ】様、お怪我は、御座いませんか?」


落馬した隊長、ゴルバに手を差し出す【サルド】。


ゴルバは、その手を払いのける。


「だ、大丈夫だ。


 自分で起き上がれる。


 それよりも、奴らを早く捕らえるのだ!」



「勿論です。


 ですが、中々手強いようです」



「それがどうした!?

 アンデット使いなど、手駒が無ければ、ただの木偶の坊ではないか。


 最悪、1人だけ生き残っておればよい。


 後は殺しても構わん、必ず仕留めよ」


「はっ!」


サルドは、前線の兵士たちだけでなく、

ゴルバの護衛についていた兵士達にも

指示を飛ばす。


「全軍突撃!」


「「「おー」」」


雄たけびを上げ、総勢120名余りが、エンデに向かって走り出すが、

目の前には、体を取り戻したオオカミ魔獣とダバンが、立ちはだかっている。


だが、彼らの狙いは、エンデ。


彼らは、エンデと召喚士だと勘違いをしていた。


その為、エンデを倒すことが、一番の近道だと信じて

このような方法で、攻撃を仕掛けたのだ。


ダバンとオオカミ魔獣が、立ちはだかっていたが

数名の兵士が、上手くすり抜けて、エンデに迫る。


「獲ったぁ!」


声を張り上げた兵士は、迷いなく剣を振り上げたが

その剣が、振り下ろされることはなかった。


兵士の体には、光の剣が突き刺さっていたのだ。


光の剣が消えると、兵士が、その場に崩れ落ちる。


その光景に、兵士達の視線が、エンデに集中した。


「おい、あれは、なんなんだ?」


「し、知らん・・・・・あんなの、見たこともねぇ」


訳が分からず、動きを止める兵士達。


エンデは、そんな兵士達を放置したまま

エブリンを守るオオカミ魔獣の頭を撫でる。


「エブリンをお願い」


『ガウッ!』



アンデットオオカミの頭を撫でた後、

エンデは、ゆっくりと進み出る。


そのエンデの周りには、多くの光の剣が、浮かんでいた。


「こいつは、ネクロマンサーじゃないのか!?」


オオカミ魔獣を召喚したという情報から、

エンデの事を、勝手にネクロマンサーだと思っていた兵士達は、

ジリジリと後退り、一定の距離を保とうとするが、

彼らの敵は、エンデだけではない。


兵士達の後方から、オオカミ魔獣が襲い掛かる。


「うわぁぁぁぁぁ!」


オオカミ魔獣に襲われ、1人の兵士が命を落とすと

それを皮切りに、オオカミ魔獣とダバンの攻撃を受け

次々と、命を落とし始める兵士達。


彼らは、選択を迫られる。


このまま、オオカミ魔獣やダバンの相手をしながら、後方に下がり

隊列を、立て直すか?


それとも、このまま前進し、

一気に、光の剣に守られているエンデに攻撃を仕掛けるか?


いくら光の剣に守られているとはいえ

エンデは、1人。


だが、オオカミ魔獣の方は、複数でもあり、不死に近いアンデット。


兵士達は、エンデとの戦闘を選んだ。


「こいつを倒せば、終わるかも知れない・・・・・・」


「おう!」


「行くぞ!」


お互いに掛け声をかけ、気を奮い立たせた兵士達が

エンデに向かって駆け出した。


だが、数歩進んだところで、光の剣により、

次々に、串刺しにされて

命を落とす。


エンデは、兵士を屠りながら

敵の隊長を目指して進み始めた。


当然、その間も、敵の攻撃は続いているが

エンデに届くことはない。


四方から襲い掛かっても、

エンデの周りに浮かぶ光の剣により、次々と切り殺された。


エンデの歩みは止まらない。


その姿に、恐怖を感じたゴルバは、サルドに命令をする。


「サルド、貴様が行け!

 奴を倒すのだ!」


「はっ!」


命令を受けたサルドは、

真っすぐにエンデに向かって歩きながら、辺りを観察する。


──どうやら、ここまでか・・・・・・


その言葉の通り、当初、120名程いた兵士達だったが、

今では、数えることが出来る程の数まで減っていた。


──やはり、あの少年を倒すしかなさそうだな・・・・・


そう思いながら、サルドは、剣を抜いた。


彼の剣は、独特で、他の兵士たちが持つ物より、はるかに長い。


サルドは、襲い掛かってきたオオカミ魔獣に対して

その長い剣を軽々と扱い、細切れにすると

切っ先を、エンデに向ける。


「私は、副隊長のサルド。


 大人しく、投降することを提案する。


 だが、歯向かうのであれば、子供と言えど、容赦はせぬぞ」



最終通告ともいえる言葉を発し、投降を促すサルド。


それに対し、エンデは、無表情で告げる。



「今更、何を言っているの?

 先に襲って来たのは、そっちだよね。


 僕は、やられたから、やり返しているだけだよ」


「・・・・・わかった。

 それが、貴様の答えなら、致し方あるまい」



サルドは、エンデと対峙する。


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