第67話ゴンドリア帝国軍 王城 出会い

謁見の間に通されたエブリン達に

グラウニーが話しかける。


「エブリン、お前たちも来たのか・・・・・」


「はい、叔父様が、エンデからも話が聞きたいと

 仰っていたので」


「その話だが、陛下にも、これから話すところなのだ」


国王ゴーレン アンドリウスは、宰相であるグラウニーに問いかける。


「どういうことだ?」


「それが・・・」


グラウニーが、先程、屋敷でエブリンから聞いた内容を

説明すると、国王ゴーレン アンドリウスが、驚いた表情をした。


「ゴンドリア帝国だと!

 まだ、わが国に、奴らの手の者が、残っているのか・・・」


「はい、その通りでございます」



「・・・・・なぁ、エブリンよ。


 その捕らえた者は、どうしている?」


国王ゴーレン アンドリウスの問いかけに

エブリンが答える。


「屋敷の地下に」


「そうか、こちらでも、色々と聞いてみたいことがある。


 引き渡してもらえるか?」


「勿論です」


国王ゴーレン アンドリウスは、その言葉を聞き

待機していた兵士を、すぐに、エンデ達の屋敷に向かわせる。


「今すぐ、ジョエルの屋敷の地下牢に捕えられている男を、

 こちらの地下牢に護送せよ。


 いいか、くれぐれも取り逃がしたり、自害させぬようにな」


兵士は、その言葉に返事をし、謁見の間を後にする。


兵士達が出ていくと

しんと静まり返る謁見の間。


そんな中、エブリンが口を開く。


「それで、例の商会は、如何なさいますの?」


問いかけられたグラウニーが、答える。


「勿論、放ってはおかぬが、ギドル商会で間違いないのだな」



「はい、ギドル商会です。


 昨夜、捕まえた男を尋問し、吐かせましたから

 間違いは、ございません」


その返答に、グラウニーの顔が曇る。


『コホン』と咳払いをした後、尋ねる。


「先程の捕縛の件といい、

 今回の尋問、私も、詳しくは聞いておらぬが

 もしや、手荒な事は、していないよな?」


エブリン達は、遠慮とか、手加減という事を知らない。


言わなければ、言うまで尋問を続ける。


その事を理解しているグラウニーは、恐る恐る尋ねた。


「大丈夫ですよ、叔父様。


 まだ、生きていますから」


何とも言い難い返答に、返す言葉を失う。


──やはり、あのマリオンの子か・・・・・・


エブリンの父親であるマリオン ヴァイスも

若き頃は、遠慮とか手加減を知らない男だった。


その為、問題を起こすたびに、尻ぬぐいに奔走したのが、グラウニーだった。


おかげで、色々な貴族と知り合いになり、

信用も勝ち取ることができ、今の地位を築いたのだが・・・・・



何とも過去を思い出す、姪の言葉に溜息を吐く。


ここまで、1人蚊帳の外にされていたかのような、国王ゴーレンが口を開いた。


「そなたたちが、尋ねて来てくれたのも何かの縁だろう。


 1つ、儂から頼みがあるのだが?」


「はい、なんなりと、お申し付けください」



国王の頼みを断る事など出来る筈も無い。


エブリンを筆頭に、エンデたちも頭を下げる。



「そうか、実はな・・・・・」



国王の話は、ゴンドリア帝国が攻めて来たので、第2団隊を送り出した。


しかし、食料が手に入らず、困っているとの連絡があったとの事だった。



「それで、お前達に、運搬を頼みたいのだ」


国王は、エンデの力を知っている。


その為、エンデの持つ力に頼ろうとしているのだ。


確かに、エンデなら収納袋に入れ、空を飛べば、時間も短くて済み、

大量の食料を運ぶことは可能だ。


だが、翼を生やした少年を見た時の兵士たちの反応が気になる。


悩んだ表情を見せるエブリン。


運ぶことに、是非もない。


だが、エンデに、変な目を向けられるのが嫌だった。


その意を汲み取ったダバンが、エブリンに伝える。


「主の力を使うまでもありません。


 私が、主を乗せて運びます」


「おお、そうだ、貴殿もおったな」


グラウニーの返答に、頭の中に『?』を浮かべる国王ゴーレン アンドリウス。


どう見ても、褐色の肌を持つただの青年だ。


疑問の顔を浮かべる国王ゴーレン アンドリウスに

グラウニーは向き直る。


「陛下、改めてご紹介致します。


 陛下も、お聞きになられたことがあるかと存じますが・・・・・」


もったい付けたように語るグラウニーに、

『早く話せ』と言わんばかりの顔をする国王ゴーレン アンドリウス。


「彼は、『キングホース』で御座います」


その言葉に、謁見の間を守っている兵士たちからも声が上がった。


『キングホース』は、伝説の生き物。


まして、人型になれるなど聞いたことも無い。


「グラウニーよ、よもや、儂を揶揄っておるのではないよな?」


「勿論で御座います」


グラウニーは心得ている。


ここで、ダバンに頼んでも、断られることは目に見えていた。


なので、エブリンに声を掛ける。


「お願いしても良いか?」


「ええ、構わないわ」


エブリンは、ダバンに目で合図を送った。


主であるエンデ以外の言う事など、聞きたくはないのが本心。


だが、断れば、次はエンデに頼むことは見えている。


その為、『わかった』と短く返事を返した後、

ダバンは、キングホースの姿へと変化をした。


伝説の生き物を目の前で見ていることに、

驚きを隠せない謁見の間にいる者達。


そんな者達の驚愕する様を無視し、

スッと立ち上がっったエンデは、

キングホースの首を撫でた。


「ありがとう」


その言葉に反応するように、キングホースは嘶きを上げた。


そんな中、グラウニーが、キングホースの姿になった

ダバンを改めて紹介する。


「陛下、彼こそが、『キングホース』で御座います」


「そ、そうか、見事なものを見せてもらった。


 これなら、メビウスの所に食料を届ける事も、容易に出来るだろう」


国王は、未だにキングホースを見つめている。


そして・・・・・


「エブリンよ、儂からもう1つ、頼んでもいいか?」


「はい、なんなりと」


「実はだ・・・・・」


言い難そうに話す。


「儂の家系は、皆も知っていると思うが

 馬が好きでな・・・・・

 それで、見せてやりたいのだ。


 今は、外に出る事も出来ぬのだが・・・

 ここなら・・・・・」


要は、国王の子息たちに、キングホースを見せてやりたいとの事だった。


「ええ、構いません」


エブリンが即答すると、国王ゴーレン アンドリウスは

側近の兵士に、急いで息子達を呼びに行かせた。



暫くして、謁見の間に集まった国王一家。


その中には、王妃レイビア、第1王子アランの他に、

王女【サーシャ アンドリウス】、

第2王子【ブレンド アンドリウス】の姿もあった。


「お父様、この馬は?」


「お前も、聞いたことがあるだろう。


 キングホースだ」


「まぁ!!!」


誰よりも先に、キングホースに歩み寄るサーシャ。


この王女、サーシャは、キングホースに一目惚れをしたようで、

近くから、離れようとはしない。


それどころか、とんでもない発言をする。


「お父様、この子は、譲って頂けないのかしら?」


「サーシャよ、それは無理だ。


 勘弁してくれ」


「そうですの・・・・・」


寂しそうに、キングホースの首を撫でる。


そこに、ある種の爆弾を落とすエンデ。


「あげる事は出来ないけど、会う事はいつでもできるよ」


「えっ!」


その言葉に、目を輝かすサーシャ。


反対に、驚きの表情を見せるキングホース。


その様子に、笑顔を見せながらエンデは、

キングホースに告げる。


「ありがと、戻っていいよ」


人型に戻るキングホース。


その出来事に、口元を手で隠し、驚いているサーシャ。


そんな彼女に、エンデが紹介する。


「彼は、ダバンって言うんだ。


 仲良くしてあげてよ」



褐色の肌に、漆黒の髪の美青年。


ダバンは、サーシャに頭を下げる。


「ダバンと申します。


 今後ともよしなに」



サーシャは、ダバンを一目で気に入り、手を引いた。


「私は、サーシャ。


 続きは、私の部屋で、お話しましょ」


ダバンを引き連れ、謁見の間を出て行こうとするサーシャだったが

王妃であるレイビアに止められた。



「サーシャ、この方達は、用があってここにいるのです。


 自分の都合で、無理を言ってはなりません」


その言葉に、安堵するダバン。


しかし・・・・・・


レイビアの言葉は続いた。


「ですが、私も話をしてみたいと思っておりますので

 御用が終わり次第、別室にて、お話を、お聞かせください」


その言葉には、サーシャだけでなく、他の子共たちも喜んだ。


だが、ダバンだけは、複雑な表情をしているが

王妃のお願いを断れる筈も無く、頷くしかない。


「承知した・・・」


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