第22話 クラスメート

「それじゃ、皆さん。新学期早々ですが転入生を紹介しますね。

 来宮ナナさんよ。

 皆さん、仲良くして下さいね」


 二年一組の教室。担任の先生の紹介で、ナナが教壇の脇に立った。


(ナナ! 今だけ替われ!! お前の挨拶じゃケジメがつかん!)

(えー、大丈夫だよ)

(いいから、今だけはあたいにまかせな!)


 そしてエリカが表に出て、自己紹介を始めた。


「あたいの名前は、来宮ナナ。よろしくな。

 そんで、最初に言っておく。

 あたいは前の学校でひどいいじめにあってた。そんで親からDVも受けてた。

 そんな訳アリなもんで、今は福祉施設で暮らしている。

 だから、まあ……馬鹿にするなら心の中で馬鹿にしてもらって構わない。

 だけどな……。

 あたいは、そいつらみんなにケジメつけて来た!

 だから、今後もし直接、変に絡んで来てみろ!

 殺しゃしないが、それ相当の覚悟はしろよな。

 だが、仲良くなりたいって言うんなら話は別だぜ!」


(エリカ! やりすぎ!!)

(いいんだよ。こういうのは最初が肝心!)


 エリカの啖呵たんかに、クラスの全員がドン引きしている様に見える。

 先生も動揺を隠せない様だが、まあこの人は、こっちの元の事情も知ってるはずで、やがて気を取り直したかの様に言葉をつないだ。


「そ、それじゃ、来宮さん。あなたの席は、窓側の後ろね」

 ああ、あそこ……昼寝に最適なんだよな。


 今日のところは、始業式と簡単な掃除位で、午前中で学校は終わったが、案の定というか、効果てき面というか、誰もナナに近づいてこない。


(もう……エリカのせいで……これじゃ友達出来ないよ……)

(なーに。いざとなったら、恐怖で支配……)

(ダメだって!!)


「来宮さん!」突然、後ろから呼ばれた。

 見ると、同じクラスの女子生徒が立っている。


「あ。声かけてごめん。迷惑だった?」

「ううん。そんな事無い!」

「ああ、よかった。あなたの挨拶すごかったね。

 怖い人かと思ったけど、見てるとそんな感じもしないし……。

 私、長谷川いのり。よろしくね!」

「あっ、うん。よろしく……」


「そんでさー、来宮さん。あなた部活決めた? 

 私、書道部なんだけど、今、人少なくて廃部の危機でさ。

 よければ、名前だけでも貸してくれないかな?」

「へえ……書道部。私、運動はダメだけど、文化系ならやれるかな?

 施設の手伝いとかもあるから、毎日遅くまでとかは無理だけど……」

「ほお、興味があると! そんじゃ、早速見学に来なよ!」


 そう言って、いのりはナナの手を引いて、書道部の部室へ向かっていった。


(ふんっ、ちゃんと友達出来たじゃん。アオハル……アオハル)



 ◇◇◇


「それで、全く手掛かりなかったの?」

「ああ。魔導コンパスは、確かにあの学校の方を指してるんだが、何度確認しても、魔力とか魔王の気配とかを感じないんだ。うろうろしすぎて疲れたぜ」


「その割には、なんかニヤけてない?」

「へっ? ああ、なんか可愛い娘がいてさー。あの学校の生徒だと思うんだけど、道でぶつかって転びそうになっちまって、慌てて抱きかかえたんだが、もう華奢でちっこくて、すっごくいい匂いがしてさー……もう、まんま俺の直球ど真ん中!」


「死ね! このロリコンセクハラ脳筋バカ!

 ……でも、コンパスが使えないんじゃ……もしかして、マナが無いから、魔王も魔力オーラ出せていないとか?」

「それはあるかもな。だが、俺だと細かい気配が拾えないんだよ」


「もう、仕方ないなー。それじゃ、明日は、私も一緒にいくよ。

 マナも少しは溜まってるから、魔導探査アクティブソナーも使えるかも知れない」

「おお、それは心強い……あの娘。また会えるといいなー」

「ほんとに死ね。このクソロリコン勇者!」


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