28. 義兄さん、その子俺の娘なんよ
「
「えへへへ。彼氏とケーキ屋さんきたの」
「え゛っ!?
「待てーーーい!!」
いきなり
「まだです! まだそういう関係じゃないんです!」
「もうすぐだけどね~」
ダメなんだって! この人にそういうこと言っては!
「それはどういうことかな?」
ほら見ろーーーー!
妻の実兄の
品行方正を絵に書いたような人物であり、かけた黒縁のメガネはどこか知的な印象を与える。
昔から文武両道で何でもできる人だった。大人になってからも上場企業に勤めているエリートだ。
ある一点を除けば、完璧超人と言っても差し支えないだろう。
「うちの
こ、このインテリヤ〇ザが……!
そうです……。この人、家族に対する距離感がおかしいんです。
元々は超シスコンだったのだが、
「なんで
「うっ……。ご、ごめんよ
四十前の男が女子高生に怒られている。
最近、似たような光景を娘の友達でよく見る気がする……。
「とりあえず、
兄さんはそう言って、こちらに手を差し出してくる。
兄さん兄さん、その子俺の娘なんですよ。
ついでに言うと、あなたの義弟でもあったんですよ俺。
「わ、分かってます」
そんなこと言えるわけがないので、握手に応じてしまった。
「
妹を自慢しながら姪も自慢して、更には俺にくぎを刺す!
なんてテクニカルなやり口!
この人は変わってないなぁ……。
この人には妻と付き合ってるときから散々嫌がらせをされてきた。
デートの後は付け回さるわ! あれはダメだこれはダメだと口出しされるわ!
よって俺はこの人が苦手である! それは今も変わらずである!
「じゃあ
「えっ!? いいの?」
「うん、これくらいしかできなくてごめんね」
そう言って兄さんが財布からお札を取り出す。
いち、に、さん……
!!??
三野口じゃない! 三諭吉だ!
「こ、こんなには貰えないよ叔父さん……」
「いいから、いいから。おばあちゃんに内緒にしておけば分からないから」
「そういうわけには」
兄さんがそう言って無理矢理、
「ちょ、ちょっとそれは――」
「本人の教育に良くないのでやめてちょうだい」
俺が注意しようとしたら、今まで黙っていた
「えっ?」
「教育ってどういうこと?」
「あ゛っ!!」
兄さんが当然の疑問を
「こ、この子の母親ならそんな風に言うんじゃないかなぁって……」
「……」
「……」
兄さんと
微妙に気まずい空気が流れている。
ど、どうすんだよこれ……。
なにわけ分からんないこと言ってるんだよお前……。
「ぷっ、あはははは!」
ひやひやしながらその場を見守っていたら、突然兄さんが笑いだした。
「確かにね。
兄さんはどこか嬉しそう顔をしてそのお札を財布に戻した。
「ど、どうしたんですか? 急に笑いはじめて」
あまりにも不思議だったので、俺は兄さんに声をかけてしまった。
「いやね。この子の言い方が本当に母親にそっくりだったから」
「えっ」
そう言って、兄さんが目を細めている。
こ、
この変人がアイツにそっくり!?
「……っ!」
とは思っただが、どこか完全に否定しきれない自分がいる。
さっきの食べ放題のときもそうだが、確かに
「
「うん、お仕事頑張ってね」
そう言って、兄さんは仕事に行ってしまった。
「はぁ……」
※※※
“
その言葉が喉に刺さった骨のように取れないでいた。
「
「大丈夫だよ」
「叔父さんね。ちょっと変わってるけど凄く優しいんだよ」
「そうなんだ」
気になる……。
そう言えば、前に
「何よ、人のことじろじろ見て」
「ご、ごめん」
思わず
言われてみるとそういうツッケンドンな言い方も似ているような……?
今まであまり考えないようにしていたが、兄さんが言うと謎の説得力がある。
大体あの超シスコンな兄が、会ったばかりの他人を自分の妹に似ているということ自体があり得ないのだ。
「……よし」
ここでうじうじ考えていても仕方がない。
これは要検証だ!
「
「ん?」
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