19. お前のお母さんは――
「じゃあ
「え゛ぇえ!?」
めちゃくちゃ寂しそうな顔を浮かべている。
「
あまりにもむごすぎる。
好きだの、好きじゃないだの、実に女子高生らしい会話が続いていて、中々
だって、好きな人に“早く帰れ”なんて言われたらショックだよ!
同性とはいえ、
「ほら、
「あなたの手伝いに来たわけじゃないわ」
今、お前のフォローをしてやってるんだから茶々を入れてくるな!
「
「そ、それは……」
お前のことが好きだからだよ。言わせんな。
同性の恋愛って難しいよなぁ……。
「今、お茶とお菓子でも出すから二人はちょっと休んでよ」
そう言って、俺は二人が綺麗にしてくれたキッチンに向かった。
※※※
「二人ともお茶でいい?」
「うんっ!」
俺の部屋から
「お茶っ葉、お茶っ葉は……」
「わざわざ、お茶っ葉で入れなくていいわよ。そこにあるティーパックでいいから」
テキパキとコップとお菓子を用意をしていく。
いや、別にいいんだけどさ……一応、ここ俺の家なんだけど……。
そういう遠慮のなさが誰かに似ているような気がする。
(そ、そうだっ!)
この遠慮のなさはオフクロに似ている気がする。
人の家でずけずけとこういうことができるのは、オバハンと相場が決まっている!
「今、失礼なことを考えていたでしょ」
「ぐっ」
若いのに鋭い! 思っていたことをズバリ見抜かれてしまった。
「ところで、あなたにはお礼を言わなきゃっと思ってたの」
「お礼?」
「
「
「い、いや当然のことをしただけだし……。ゴールディンウィーク明けには取れると思うよ」
「そう。良かった」
「なんで
家事が手慣れた様子だからだろうか。
この前のドタバタとはうって変わり、今日のこの子からはすごく大人びた印象を受ける。
「お礼を言っとくけど、
なんなんだ今日のこいつは!?
ファミレスの前でピーピー泣いていた女とは思えん!
「大丈夫だよ。前にも言ったけど、俺にとって
「ふーん。男って簡単にそういうことを言えるからなぁ」
高校一年生の女子が随分ませたことを言ってらっしゃる。
「っていうかさ、ちょっと気になってたんだけど何であの日あそこにいたのさ?」
話題を変えてみる。
少しだけ気になっていた疑問を率直に
「あそこ?」
「ほら、ホテルの前で――」
「あ、あれは! ただ思い出巡りをしてただけっていうか!」
「思い出巡り? ホテルの前で?」
「うぅーーー!」
や、やっぱりヤバいやつだった……。
同性愛者の
その年齢で?
良くない想像が色々と膨らんでしまう。
「
「なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのよ!」
心配になり、
「じーーーーーーーーー」
せ、背中に熱い眼差しを感じる……。
※※※
「なんで
「してないしてない!」
「私が
「違う! 本当に違うの!」
そうなんだよ、違うんだよ
俺は、自分のことを好きになってくれた人にはなるべく誠実に答えてあげるべきだと思っている……!
ならば……。
ならば俺ができることは……。
「
「だ、だって……!」
「
「うっ」
「ごめんね
「さっきも言ったけど大丈夫だから。
とても、とーっても! 余計な一言があった気がするが聞かなかったことにしてやろう!
「本当に本当?」
「だから本当だってば。だって私には好きな人がいるもの」
!!??
で、でたな! 匂わせ発言!
聞いているこっちがハラハラしてきてしまう。
「それ
「大丈夫、
「約束だからね。嘘ついたら針千本だからね」
「うん、約束する。破ったら針千本でも針万本でも飲むから」
とりあえず今の会話で二人とも納得したようだ。
ふぅ、場が収まって今日はめでたしめでたし。
「じゃあ、私は帰るから
「うん」
同級生に言う言葉かそれは? 過保護というかなんというか。
形は違えど、
「ごめんな。つらい思いをさせて」
俺はつい
「えっ? 気遣ってくれてるの?」
「一応」
「ふふっ。そういうところは私が好きだった人に少し似ているかも」
好きだった?
何のことだかさっぱり分からないが、随分変な言い方をするなぁ……。
「それを言うなら、お前も俺の好きだった人に話し方が似ているよ」
「はぁああああ!? それってどういうこと!?」
あぁああああ。
気が緩んで余計なことを言ってしまった。
※※※
「
二人きりになった室内で俺は
「別にそんなことはないよ? 本当に仲は良いんだけど……」
「良いんだけど?」
「何かね。私がやることなすことに色々言ってくるから、ちょっと困っちゃうときがあるの。まるでお母さんみたい」
はぁああああ!?
あいつがお母さん? あいつが
お前の母親はな! もっと可愛くて、賢くて、可愛くて、美人で、おしとやかで、可愛かったんだぞ!
それをあんな変人と一緒にしないでほしい!
「そ、それは大変だね……」
とは、思っても娘の友達の悪口を言うことはできないので、そんなありきたりな言葉を言ってしまった……。
「ねぇねぇ、ところで
「ん?」
「お土産でお布団を持って帰ってもいい?」
「ダメに決まってるだろ!」
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