秋風強しこの身には
秋の夕暮れ。陽が斜めに差すせいで昼よりも眩しい。オレンジの向こうの空は既に暗く、涼しさが肌寒さに変わる。
自転車のハンドルを握る指は冷えて、少し痛い。やや強すぎる風に鼻も冷たくなっているのが感じられる。ず、と洟をすすり、苦しくないよう溜息を吐く。
気温の変化のせいか、疲れ易く、眠気もとれない。
さすがに薄手のカーデガン一枚では足りなかったらしく、体に震えが走る。寒い。
そして、こんなときに限って信号に捕まったりする。どうやら今日はあまりついてない日のようだ。仕方なくブレーキを握ると、耳障りな音が響く。だから自転車で街まで行くのは好きじゃないんだ、と見下ろすと、あちこちが錆付いていて、そろそろ新調しないとな、と思う。中学生の時から乗っているから、もう5年以上。雨の日でも乗っていたからボロボロだ。
まだまだ変わらない信号を睨みながら、横の自販機に目が行った。青地にではなく赤地に白い字で書かれた商品。この季節外に出るとやたらお世話になっている気がする。重そうな音と共に落ちてきたそれは、かじかんだ手に痺れのような熱をもたらした。
そしてもうひとつ。僕の帰りを待っているであろう彼女に。
二つの缶をカゴに入れ、自転車に跨る。ちょうど信号も変わるところだ。
少し温かくなった手でハンドルを握り、彼女の待つ廃校へと、自転車を漕ぎ出した。
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