夏がきたらのあたりまえ




「かき氷のシロップで氷作ってかきったら超美味しいんじゃね」


いつものように唐突な発言が僕を襲った。僕は雑誌から顔を上げて彼女に向き直る。

別に僕に対しての発言じゃなかったようだ。また雑誌に向き直ろうとしたところで、彼女が僕に言った。

『かき氷機を買って来い』と。

そこはシロップじゃないのか。そういうと、


「シロップは12種類用意してある」


それも数本ずつ。誇らしげに言ってのける彼女に最早返す言葉が見つからず、黙ってホームセンターへ向かった。


ああ、シロップを凍らせておくよう言ってから来るんだった。と、レジで思いつつ自販機でジュースを買って飲みながら帰った。



家に着くとグラスにぱちぱちと音がするカラフルな液体を入れて飲んでいる彼女がいた。

もしかしなくてもそれはかき氷のシロップで、側には既にメロンの瓶が一本、空になって転がっていた。テーブルの上には炭酸水のペットボトルが。


「ねえなに飲んでるのさ、ねえ」

「それがな、炭酸水で割るとびっくり仰天、メロンソーーーダ!」

「いやそういう問題じゃ……ねえ死ぬよ?砂糖の塊だよ?」

「いや角砂糖だって食べるしメロンソーダ売られてんじゃん普通に」

「いやいやそういう……いや、諦めよう。とりあえず水で薄めて氷作ってかき氷作ろうよ」

「……それって結局同じモノじゃないの?」


僕は買ってきたものを取り落とした。


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