ある故人の手記
ある故人の手記より、抜粋。
彼女の趣味はクロスワードです。
海に来ても、僕が泳いでても砂浜で黙々と問題を解いています。
電車やバスの移動時間もずっと問題を解いてるような人です。
でも、一緒にいるととても楽しいです。
こないだ溺れて助けられました。
拳骨を落とされたけどなんだか照れくさかったです。
ちなみに僕の方の趣味は夏限定なら泳ぐこと、年中なら本を読んだり雑貨、いわゆるアクセサリーのデザインをすることです。
彼女にもいくつかプレゼントしていて、あまり喋らない彼女がそれを身につけてくれていると、胸のところがとても、あたたかくなります。
僕には妹がいます。
妹は多分僕に似て、僕ほどじゃないけど思ったことをすぐ口に出します。
たまに頼まれてネックレスなどを作ると、ダメなところをすぐ口に出します、なかなか生意気です。
今じゃ先にデザインを見せてから作ることになりました。
母は何でも喜んでくれます。二人の結婚記念日に父とおそろいの物を作ると、二人とも嬉しそうでした。僕も嬉しいです。父にももっとプレゼントしようと思いました。
僕は、家族が大好きです。実家から大学に通うのも1人は寂しいからです。
もし僕が1人暮らしをして、僕以外の皆で出掛けると僕はきっとむっとすると思います。
僕は、写真や思い出が好きです。最近物忘れがひどいので神経質になっている気がします。妹からは頭のねじがゆるんだと言われました。よけいなお世話!
最近、ぼくがぼくじゃない気がします、気がついたら知らないばしょにいたりします。
ちょっとこわいです。むずかしいかん字が思い出せません。
ぼくのゆめは、二つあります。
ひとつはデザイナーになること、もうひとつは彼女と、ぼく等が年を取るまで仲良くいることです。
最近の彼女は前よりずっと笑うようになって、ぼくは幸せだなあと思ったのです。
このノートを見てもおもい出せないことがでてきた。すきなことができない。たのしくない。いもうとたちもしんぱいしている。ぼくはほんとにびょうきじゃないのかな。
今日はいつになく調子がいい。また忘れないうちに、好きなことをしようと思う。
また出来なくなる前に、父と母と妹と彼女に、いつも身に付けられる物を作ろう。
いままでで一番、素敵な出来になるように。
ここで彼の手記は途切れ、彼に似た少女の字で別の事柄が綴られる様になる。
彼の手記は、15冊にのぼった。
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