フェチ

 このエピソードが誰かの創作意欲に役立てば……。


 私は日本映画学校(現、日本映画大学)を卒業している。かれこれ30年くらい前の話。


 授業で映画を観て、あーだこーだと論じ合う。

 ある生徒は、役者のセリフを丸暗記。

 またある生徒は、役者の演技を事細かく語り、セットやカメラワークを熱弁する者もいる。


 一方、私はチンプンカンプン。

 まったく覚えていない。てか、まったく観ていない。それらに興味がないことに気付かされる。

 だけど……。


 物語。話の構成。

 それだけは完璧に記憶していた。


 一度観た映画のあらすじをすべて話すことができた。若い頃は一度観た映画を二度観ることがなかった。話の筋書きを鮮明に覚えているからだ。



 そう、私は物語フェチ。

 筋書きしか興味のない人間だったのだ。


 

 星新一先生のショートショートがバイブルだった。筋書きに特化した短編集。

 登場人物や街の名前すら出てこない。物語以外のすべての情報が簡略化されている。


 私が書きたい物の根底はそこにあるのだと思う。

 気取ったセリフや、世界観を構築するための聞き慣れない名称。それらに嫌悪感を抱く。



 アルバート・ロンギウスは──、

 誰だよそれっ! 知らねぇーよ!


 王都シュレマクルでは──、

 どこだよそれっ! 首都東京みたいに言うな!



 視力が弱い人は聴覚や嗅覚が発達する。

 体を動かすことが苦手な人は頭を使うようになる。またその逆も然り。


 右を向いていれば左が見えない。

 左を見るためには右を犠牲にしなければならない。


 つまり、何かを犠牲にして、


 あなたが見ている物はなんだ。

 自信を持てばよい。それが個性だと思う。



 きっと私は名称を認識する能力が欠落している。

 そーいえば、クリリンのことを、ずっとクリンクリンだと思っていた過去がある。



 だって見た目が、くりんくりんじゃん!!



異世界ファンタジー season1完

いやぁ〜ん聖剣美女 ご主人様にニギニギされて、もうエクスカリバー!

https://kakuyomu.jp/works/16817330663249521381

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いっちょまえに創作論 @pink18

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