一致


「望み通り、私は君を罰することになるよ?本当にいいんだね?」


 問題は領地のことだから。

 大臣を罷免にするだけでは罰としてとても足りないと、陛下は仰いました。


 おそらく父は領地を立て直したあとに、爵位を返上することになるかと思います。


 ですので辺境伯夫人として与える罰は、それ以降に実行出来るようにと考えることが良さそうです。

 時間をたっぷりいただけましたので、私はじっくりと考えることにしましょう。


「覚悟のうえです。何なりとご命じください」


「そんなことを言っていいのかなぁ?本当に何でも命じちゃうよ?なぁ、息子よ」


「父上。正式な処罰はこの場で決めることではありませんよ。議会の承認を得てからです。侯爵も勝手に取り潰しや返還ありきで語らないでくれ」


「はいはい。分かっているが……私が大臣を失うのだよ?虐めたくもなろう?」


 父は大臣として想像よりもずっと立派な方だったのかもしれません。

 すると今回の対応には、私からも疑問を持たざるを得なくなります。


 三年間は放置していたとして、今年の書類を確認したであろう父が、本当に私を疑っていたのでしょうか?

 でもそれではどうしてお会いしてすぐにあのような……?


「よし、思い付いたぞ。何なりと命じて本当にいいんだな?」


「……はい……覚悟のうえ……陛下への二言はなく…………」


 父の様子がどこかおかしく感じました。


 とても大きな失言をしてしまったという焦りのようなものをその表情から急に感じ取ることが出来たのです。

 そもそも今日は最初から失言続きだったことを思えば、今さら何事かと不思議にも感じますが。


「それは良かった!ともに喜べ、息子よ」


「父上?」


「いやぁ。我ながら名案を思い付いたものだ。ははは。面白くなってきたなぁ」


「父上、嫌な予感しかしないのですが?」


「何を言うか、息子よ。お前も共に楽しむのだぞ。それでいいな?」


「よくはありませんね。まずは話を聞いてからです」


「相変わらず固い息子だな!」


「父親に似ないようにと必死に生きてきましたので」


「はははは。冗談も上手くなったものだ」


「いえ本気です本心です。というか父上、このためにこの場にいたのですね?」


「ははははは。聡い息子に成長したものだ」


「笑いごとではありませんよ。勘弁してくださいよ本当にもう。侯爵といい、陛下といい……。何をするつもりなのですか」


 陛下は大変気分良く笑っておられるのですが。

 旦那さままで「嫌な予感がする」と呟いておりましたし、私もなんだかとても嫌な予感を覚えていたのです。


 それを後押しするように、父までも「余計なことを言った……」と囁いて、がっくりと項垂れておりました。



 このときは陛下を除いた皆さまのお気持ちが、私も含め、ひとつになっていたように感じます。




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