領主


「今年の納税が出来ない……?」


 予測を越えた事態に、私の頭の中は一度真っ白になりました。


「税収がほとんど入らなかったのだ。お前のせいで、もう我が領地はぼろぼろだぞ。どうだ、嬉しいか?」


「はい?」


 父の中で私は何をしたことになっているのでしょうか?

 侯爵領には多くの事業がありましたし、鉱山も抱えていて、特産物としての農業も盛んです。


 そのすべてが同時に税収を見込めないような事態に陥るとは、とても思えないのですが。


 何から聞けばいいのやらと私が迷っていると、旦那さまが問いました。


「何故それがリーチェのせいになる?」


「この娘はな。うちのあらゆる事業に余計な手を入れ引っ掻き回し、めちゃくちゃに破壊して、それから家を出て行ったのだ。そうだな、リーチェ?」


 そうだなと問われましても……。

 そもそもそれは私個人が実行出来るような、安易に成し遂げられるものなのでしょうか?


 それはそれで至急対策を取られた方がよろしいかと思います。

 事業の保全対策も領主の務めです。


「陛下、殿下。私たちはもう帰ってもよろしいか?」


 旦那さまも呆れておりました。

 辺境伯としては、父の話はとても信じられないものでしょう。


「すまん、すまん。もうしばし付き合ってくれ。こちらでしっかり罰するから」


「私からもお願いするよ。私たちは夫人をまったく疑ってはいないからね」


 陛下と殿下の方が侯爵領についてより詳しくご存知となれば、それはそれでどうなのか。


 確かに三年前の父は、領地のこと、家のことについて、そう詳しいことは知らなかったかもしれません。

 けれども何も知らないと口にして良い人でもないのです。


 なぜならいつも──。





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