襲撃
舞踏会の最中ではありますが。
お城に別日に来るか否かと問われた旦那さまが行かないと即答されたことで、会場を出た私たちは、お城の一室へと案内されました。
旦那さま、お強くて素敵です。
ですがあのお返事でよろしかったのですか?
子どものようにそっぽを向いた旦那さまは、私の問いを込めた視線から逃れます。
それでも腰からは手を離してはくださらず。
むしろその腕のお力がさらに強まっているような……。
お部屋に入ると、一人の男性が私たちを待っていたように立ち上がりました。
けれども私は最初それが誰かすぐに気が付くことは出来なかったのです。
それは相手側も同じだったようで。
「……リーチェか?」
問われて、頷いて。
それからやっと、この人が父なのだろうと、私は半ば疑いながら理解しました。
理解してもまだ疑心暗鬼ではあります。
お顔を間近で見たのは……いつ以来でしょうか?
思えば父とは書面でのやり取りしか行っていなかったように思います。
と言っても手紙ではありません。
ですから旦那さま宛にお手紙が届いたときには、大変驚いたものでした。
「お久しぶりです、侯爵さま」
特に話すことも思い付かなかった私は、そう手短に挨拶だけをして、頭を上げたときでした。
目のまえに迫る来る何か。
それを認識出来たのは、旦那さまが片手で止めてくださったときです。
挨拶をするためにと少し緩んでいた腕が、完全に私の腰から離れました。
もしかして、あちらの方に改めて挨拶をする機会をいただけたのでしょうか?
私はそんなことを考えてしまうほどに、目のまえで起きていることを冷静に受け止められなくなっていました。
「私の妻に何をする!」
「離せ!そちらこそ何をする!」
手首を掴まれた父と思われる男性が大騒ぎをしています。
私の父はこのように大きな声を出せる男性だったのですね。
離れたところから「あちゃー」という声が聴こえました。
あの……止めてはいただけない感じでしょうか?
やはり先ほどの挨拶では不敬でしたよね?
そんな私がこの場を収めて欲しいなどと望むことは烏滸がましいことかもしれません。
では私が妻として……どうしたらいいのでしょう?
旦那さまが、完全にお怒りです。
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