第6話

「ハァ……ハァ……」


おじの出血は深く、肩から滲み出る鮮血が服を染めていた。

おじはこんな時のために用意しておいた止血剤入りガーゼを傷口に巻いていく。


「ふぅ……」


おじが一息つくと見計らったように、物陰から庸が現れた。


「お前が馬鹿だとは分かっていたが、ここまで馬鹿だとは思わなかったぜ」

「馬鹿はお前らやろ。おじを舐めたらどうなるかわからんかったか?」


「そうじゃねえ。こんな狭い部屋で手榴弾グレネードなんぞぶっ放しやがって、全員死んじまってたら、どう落とし前つけるつもりだ」

「ハッチも少しおかしいねん」

「部下の失態は上司の責任だろ? お前はどうやって責任取ってくれんだ?」

「そんなもんはしらん。おじはおじのやりたいようにやるで」

「まるで獣だな」


庸はおじに銃を向けた。


「獣でええ。ハッチやおばぶ、そしておじの家族ファミリーさえ無事ならな」

「お前のファミリーを危険な目に合わせてるのは、お前自身だぜ」


おじが今回ローションの件で報復を始めなければ、おじファミリーの命が狙われることはなかっただろう。

しかしおじは、それでも自分は悪くないとお気持ち表明するのだ。


「チャウ。オマエラヤン!」


おじが銃を連射した。


「はっ素人が。そんな弾、俺には当たらねえよ」


庸はおじが銃を構えた瞬間に素早く金属製のコンテナの裏へと回り、おじの銃弾が届かない位置を取った。庸は遮蔽物に身を隠しながら、次にどうやっておじを始末するかを考えていた。


「弾が当たらんなら拳で殴ればエエ!」

「なっ!」


しかし――おじはあろうことか、

コンテナ裏にいた庸はおじの接近に気づかず、


「ぐぁッ!」


おじの拳を顔面にもろに食らうことになった。


「男なら拳で語ろうや」


顔面の後は流れるように庸の持つ銃にも拳を入れ、銃が遠くへ弾き飛ばされる。


「野郎ッ」


おじはファイティングポーズを取ると、片手を折り曲げて庸を挑発した。


「来いや。半グレだかマフィアだか知らんがおじが性根を正したる」

「上等だ……」


庸が着ていたスーツを脱ぎ捨てると、ワイシャツの下には入れ墨がびっしりと刻まれていた。


「うわ、イカつすぎやろ」


驚くおじの懐に庸が突進する。庸の右手にはいつの間にかナイフが握られていた。


「油断したなカスが! 拳で殺し合いができるかよ!」


が、おじはそれをあっさりと受け止めた。


「な!」

「卑怯なことするから迷いが生じて動きが鈍るねん」


おじは流れるように動くと、一本背負いで庸を投げ飛ばした。


「……ガハッ!」


コンクリートの地面に打ち付けられた庸は、力なく地面に横たわる。


「じゃあ、おじも凶器を使わせてもらうで」


おじはそう言うと膝を曲げ伸ばして屈伸を始めた。


「やめろ! 俺を殺したらお前も本当に取り返しのつかないことになるぞ!」


床に倒れたまま庸が叫ぶ。


「知らん。言っとくけど、先に誹謗中傷始めたんはお前らの方やからな」

「誹謗中傷? お前は何を言ってるんだ」

「おじは決めてるんや。ってな」

「やめっ!」


ヒュッ! と、おじの膝が勢いよく振り下ろされ、その瞬間、倉庫の床が轟音とともに震えた。


倉庫の中には強烈な風が渦巻き、おじを中心に埃が舞い上がる。


「おじの膝で眠れ」


庸は大の字になったまま白目を剥き、完全に動かなくなった。

やがて地鳴りのような音も止み、倉庫には静寂が戻ってくる。


「おじ、そっちも片付いたか」


ハッチが清々しい顔をしておじの元へ現れる。

おじ達は顔を見合わせ、互いに腕を差し出し交差させ健闘を称えた。


「おじファミリーの勝利や」

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