第5話

「おらよ! まずは1人目!」


ハッチはグレネードランチャーを肩に押し当て、物陰に隠れていた陰に向けて発射した。


しかし陰は突然物陰ものかげから現れたかと思うと、フードを広げ、正確に打ち出された手榴弾グレネードをキャッチした。


「……」

「んなアホな!」


陰はそのままハッチの方へ手榴弾グレネードを投げ返したがその時、


「あ」


床に散らばったローションに足を取られ、手榴弾グレネードは味方の下っ端男の方向へ転がっていった。


「おい!ふざけんじゃ――」


男の回避も間に合わぬ間に手榴弾グレネードが床で爆発する。


「!」


ドゴォ! と大音量の爆発と同時に。全員落下していく。


崩れ行く足場の中でおじは、


「やからこんな狭い部屋の中でそれ使うのは嫌やったんねん!」


と叫んだ。


「フハハハハ! Foohhhhフォォォォォォ!」


ハッチは落下しながらにも関わらず、一体何が楽しいのか――歓喜の雄叫びを上げていた。


「っと」


おじとハッチはうまく落下の勢いを殺して着地する。

落下した先は、倉庫のような部屋で、部屋の中に棚が所狭しと設置されており見通しが悪い。


「今ので全員やれてたらいいんやけどな」

「そう甘くはねェだろ」


おじ達が部屋の中を歩いていると、床で転がっている下っ端の男を見つけた。


「とりあえず一人やったやんな」


おじが口に出した瞬間、乾いた銃撃音が倉庫に響き渡った。


「うっ!」


おじ達が倒れた男に目を取られていた隙に、物陰から発射された銃弾がおじの左肩をえぐっていた。


「大丈夫か! おじ!」


ハッチが叫ぶ。


「あぁ、弾は貫通したみたいや」

「借りは返しましたよ……先輩」


物陰から現れたのは、オマ・エラヤンの中で陰と呼ばれていた男だ。


「お前は!」


おじが陰の顔を見て驚いたように言った。


「知っているのか?おじ」

「先輩呼びで思い出したわ。あいつ、おじのバイト先入ってきてすぐ辞めてった子や」

「……辞めたんじゃない。あなたに辞めさせられたんですよ」

「何言うてんねん! おじはあんなに優しくしてやったやん!」


それを聞いた陰は顔を歪め、銃を構えた。


おじとハッチはすばやく二手に分かれ、物陰に隠れる。


「おじ! こいつは俺が引き受ける! お前は治療に専念しろ!」


ハッチが叫ぶと、おじは頷き更に奥へと消えていった。


「お前のせいで僕はパン工場をクビになって今では反社の仲間入りだ!

責任取って死んでくださいよォセンパァァイ!!!!」


「そいつァ、他責が過ぎるんじゃねェか?」


ハッチは身を乗り出すと、いつの間にか持っていたショットガンを派手にぶっ放した。

しかし、


「なっ、いねぇ!?」


陰の姿はいつの間にか消えており、銃弾は床と壁を抉るだけだった。


「どこ見てるんですか」

「くぅっ!」


死角から陰が振るったナイフを、ハッチがかろうじて銃身で防ぎ火花が散った。


「……よく防ぎましたね」

「臭さが鼻につくんだよ」

「おかしいですね。僕はタバコも何も吸わないんですが」

「分からねェか? おめェは辛気臭えって言ってんだ」

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