第4話

廃ビルの一室では、オマ・エラヤンの3人が、おじ達が持ってきたローションを詰め替えていた。


「リーダー。腕が疲れてきました」


下っ端の男は大量に積まれたローションに辟易しているようで、愚痴を漏らしていた。


「うるせえ。陰を見習え。黙って手を動かしてればそのうち終わる」


庸ともう一人――陰と呼ばれた男はマスクとフードでその表情は見えないが、ただひたすらに黙々とローションをさばいていた。


「……足音」

「ん?何か聞こえたのか?」


庸が陰に聞いた瞬間、部屋の中に手榴弾グレネードが投げ込まれた。


「チッ!」

「ローション・フィーバァァァァ!!!!!!」


手榴弾を投げたハッチが叫んだ瞬間、手榴弾は爆発し、おじ達が納品したローションを巻き込んで、扉と窓ガラスをすべて吹き飛ばした。


「やったか?」


おじがハッチに問う。


「いや、直前で気づかれた。多分全員生きてるな」

「おじをコケにした連中は、死をもって償ってもらうで」


おじは愛銃のハンドガン――パンサーH02を構えた。この銃は、おじのかつてのバイト先であるパン工場で秘密裏に制作されていたブツだ。


「オイオイオイオイ。ローション屋風情がずいぶんと調子に乗ってくれたな」


庸は爆風で吹き飛んだ黒い帽子を被り直すと、穴の空いたつばの部分からおじ達を睨みつけた。

部屋の砂埃が晴れ、残りの2人の様子も姿を表す。


「ゴホッゴホッ!お前ら正気か?俺たちに手を出すってそれ、組織全体を敵に回すんだぞ!?」

「……殺す」


おじはオマ・エラヤンの面々に臆することなく一歩前に出る。


「喧嘩売ってきたんはお前らからやろ。全面抗争と行こうや」

「相変わらずクレイジーだぜ、おじ。俺も負けてられんね」


ハッチはそう言うと、ハンドガンにしてはあまりにも太い銃身バレルを持つ銃を構えた。これはグレネードランチャー――先程の手榴弾グレネードを射出するための武器であった。


「オマ・エラヤンに歯向かって生きて帰れると思ってんじゃねぇぞ! かかってこいやクソッタレのおじファミリィィ!」


庸の叫びと共に、オマ・エラヤンとおじファミリーの抗争が幕を開けた。

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