第3話

6日後。おじとハッチは大量のローションを持って廃ビルの前に立っていた。

おじ達の側には車が一台。運転席には運転手として雇われたドシタが座っていた。


「じゃあ俺はここで待ってるから。気をつけろよ」

「サンキューやでドシタ。帰ったらみんなで餃子食べに行こうや」


運転席から3本指でピースするドシタに見送られ、おじ達は廃ビルへと足を踏み入れた。



***



「来たみたいだな」


どうやら1階には下っ端の男だけしか居ないようだ。


「おばぶどこやった?」


おじは拳を握りながら下っ端の男に聞く。


「まぁまぁ、そう焦るなって。まずは商品を確認させてもらうぜ」


おじとハッチが抱えていたキャリーバッグを渡すと、男はバッグを開けて中身を確認した。


「揃ってそうだな。女は上だ。案内するぜ」


おじ達は再びキャリーバッグを持つと、下っ端男の案内に従い、ビルの奥へと消えていった。



***



下っ端の男は廊下を進み、一つの部屋を指した。おじ達はその部屋に入る。


そこは元はバーの一室だったようで、部屋の奥には椅子に拘束されたおばぶがいた。


「おばぶ!無事やったか!」

「おじ……来ちゃダメって言ったのに……」


おばぶは泣きそうな声でそう言った。


「はっ。最初から素直にローション作らねえからこうなるんだよ」


部屋に居た庸が、吐き捨てるように言う。


「お前らがふざけた条件出さなきゃローションくらい作ったるわ」

「おじ。こいつらと話していても時間の無駄だ。さっさと帰ろうぜ」


ハッチはキャリーバッグを床に置くと、中から大量のローションのボトルをテーブルに積み上げた。


「約束のローション納品したぜ」

「あぁ、じゃあ女を連れて帰っていいぞ」

「オイ。報酬はどうした」


ハッチが庸に尋ねると、庸は、


「報酬なんてねえよ」


と何の悪びれもせずに言い捨てた。


「なに?」


「女を監禁して世話すんのにも金かかってんだ。これでおあいこだろ?」

「テメェ……腐れ外道が……」


ハッチが切れそうになった所でおじがハッチの肩を叩いた。


「ええんやハッチ。帰るで」


おじは意味ありげにハッチの目をじっと見つめた。ハッチもその意味を理解したようで、


「おじがそう言うンならわかったよ」


と両手を上げ、素直に帰り支度を始めるのであった。

きびすを返したおじファミリーに向け、庸は、


「お前らローションファミリーは大人しくローションだけこねくり回しとけ!」


と下品な笑い声を上げながら叫んだ。


「おじ……」


おばぶがおじを心配し顔を見る。おじは振り返らずに修羅しゅらのような顔で前を見つめていた。



***



おじファミリーの面々は再びビル前の車の前まで帰ってきていた。


「おかえり。無事終わったようで良かったぜ。さぁ祝賀会といこうや」


ドシタは3人が無事に帰ってきたことに安堵していた。

しかし、おじはまだ険しい表情のままで、


「イヤッ。ドシタ。おばぶを頼むで」


と言って、ドシタの車におばぶだけを乗せたのであった。


ドシタはおじのその一言で、これからおじ達がしようとしていることを理解した。


「ったく、お前らってやつは……。行って来い、死ぬなよ」


おじとハッチは派手にドンパチするつもりなのだ。


「助かるでドシタ。行くでハッチ」

「おう」


そして2人は車から、再びオマ・エラヤンの面々と対決するため廃ビルへと足を踏み入れるのであった。

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