第57話 記憶の空隙
何となく状況を察したレティシアは彼女の背中をポンポンと軽く叩いた後、優しく撫でる。しばらくそうしてミレーユが落ち着くのを待つと、彼女の両肩に手をかけて引き離す。
そしてレティシアは、ジッとミレーユの目を見つめた。
「ミレーユ……。ヴィスタインが死んだのは、あたしのせい。本当にごめんなさい」
「あなたのせいじゃないわ。悪いのは全部、レッドベリル……。そして私自身よ」
「あたしが自分の能力を
「あなたは
「でも……」
「どうしてもと言うなら、覚えておいてあげて欲しい。ヴィスタインの生き様を。後は私が何とかするわ。彼の命をもらったのは私だもの」
ミレーユはレティシアに微笑み掛けると、再び抱きしめた。強く。強く。
二人はしばらく抱き合っていたが、ミレーユが突然、レティシアの体を突き放した。
そして、初めて会った時のような満面の笑顔を見せた。この話はもうお終い。そう言っているような晴れやかな笑顔だった。ミレーユがレティシアから離れると、遠慮がちに話しかけてきたのはスキッドロアであった。
「生き残りましたね。お嬢さん。まさか貴方が、あのような究極とも言える
スキッドロアは感慨深げな表情をしている。初めて見るその表情に、レティシアは少し戸惑いながらも、率直な気持ちをそのまま口にした。
「
「礼には及びませんよ」
「あと、できれば、あたしの記憶の空隙を埋めて欲しいんだけど……。何となくレッドベリルを斬り捨てたような気がするんだけど……」
「あくまで推測に過ぎないのですが、簡単に言うと、
「なんと言う結果オーライ……。あたしが生きてるのはたまたまね。まさに生き残ったと言う言葉が当てはまるわ。こんな戦いはもう遠慮したいところね」
「フッ、何を甘いことを……。貴方はこれからもっと激しい宿命の中に身を投じることになるでしょう。そして、その渦の中心にいるのは、貴方だ」
「宿命ねぇ……」
「貴方は優し過ぎる。その宿命の中には、我が主神ダイナクラウン様と、その使徒である私も含まれることをどうかお忘れなきよう」
「肝に命じておくわ」
そこへレティシアの肩をつんつんとつつく者がいた。
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