第54話 究極の命術
「えー嫌ですよ」
「は?」
返ってきたのは、拒否の言葉であった。心底嫌そうな口調でレガルドが断ると、レッドベリルから間の抜けたような声が漏れる。
「だって、レッドベリルさん、僕たちのことを喰うつもりですよね?」
「……何を言っている?」
「ついでに《
「……」
図星だったのか、レッドベリルが黙り込む。
「
「何を言っている……?
「とにかく、高々、神殺しの武器の実験で滅ぼうとしているレッドベリルさんには着いて行けないと言うことですよ。そもそも僕はあなたの部下ではないですしね」
「くそがッ! 貴様、ただでは済まさんぞ……」
全く従う気のない
「ダタイッ! お前はその精霊獣を連れてこっちへ来いッ!」
「ダタイ、そいつに味方するのは止めなさい。あなたが故郷に帰れることは絶対にないわ」
ダタイは何も言わない。ただただ険しい表情をしている。
恐らく葛藤しているのだろう。
ならば――レティシアがすることは決まっている。彼を
「何故なら、ここであたしが消し飛ばすからよ」
レティシアは力強くそう言い放つと、『
レティシアは気を抜けば、体中から溢れてしまいそうな
――
――
――全能なる
レティシアは考えていた。今までの様々な戦いの中にも色々なヒントがあったのだ。神々の関係性や世界の理を正しく再定義、解釈した上で
「ドラスティーナのヤツ……この程度の《
意識が途切れそうになるのを、そして
「また
レッドベリルの怒声が飛ぶが、レティシアの新解釈を加えた
【古代より君臨せし、偉大なる二柱の神々よ。混沌よりこの世界を創造し、全ての命、生死、盛衰を支配する存在よ】
「ダタイッ! 速く来いッ!」
レッドベリルの悲鳴に近い声にもダタイは動かない。
焦れたレッドベリルがダタイの傍へ転移すると、右手を彼の心臓めがけて突き出した。
「させるかよッ!」
ヨシュアが間一髪でその一撃を大剣で弾き飛ばす。
【その全知全能なる力を持て、理と均衡を崩さんとする者共に裁きの鉄槌を! 叛逆せし神々の僕を無にかえす力を! 我が命力を贄としてその力を顕現せよ!】
レティシアの周囲に太陽光の如き、暖色が包み込み、
――散々、皆の運命を弄んだその代償を払わせるッ! あたしはできるッ! やって見せるッ! もう誰も失わせないんだッ! 母さん、あたしに力をッ!
「立て続けに膨大な命力を行使して、制御できるはずがないッ!」
永遠にも感じられる程の刻が過ぎた頃、荒れ狂っていた力は徐々に安定し始め、終いには
その体からは眩い光と夕焼けの様なオーラが発せられている。
レティシアは命術の制御に成功したのだ。
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