第20話 Vs 狼男
「何だとッ!?」
ヨシュアの驚愕の声と同時に、狼男の体から凄まじい力の波動が周囲に伝播していく。
先程までとは段違いなまでの
「あれは……」
どこからか声が上がる。
『
ファルとミレーユの叫びが見事に重なった。
それを合図に、狼男がヨシュアに一気に近づくと、渾身の一撃を振り下ろす。
「ぐッ!」
辛うじてそれを受け止めたヨシュアから呻き声が漏れる。ヨシュアは更に押し込まれ、大きく後方へと飛んだ。その瞬間を見逃す
一人になった狼男に対して、それぞれが持つ力を解放したのだ。それも一斉に。
狼男は全身と戦斧を金色のオーラで覆われている。攻撃の雨をかわし、受け、戦斧で叩き斬る。魔術は届かず、理術は狼男の体に吹き散らされ、神星術は叩き斬られてしまった。
そんな中、狼男を中心に爆発が起こった。どこかの馬鹿がこんな室内で爆炎魔術を使ったようだ。煙がもうもうと立ち込め、視界が利かない。レティシアは内心毒づいた。巻き込まれる方の身にもなって欲しい。ここには村人だっているのだ。
そんな中、ミレーユが詠唱を始め、精霊術をヨシュアに使用した。
【生命溢るる母なる大地よ。その偉大なる力を持て、この者に祝福を……
翡翠色をした優しいオーラがヨシュアを包み込む。身体を強化する精霊術だ。
「俺も出し惜しみはできねぇな……」
ヨシュアの顔が真剣なものに変わる。いつものおちゃらけた表情とは大違いだ。
ヨシュアの持つ大剣に空色のオーラが広がっていき、やがて刃全体を包んだ。
煙が収まり視界が晴れると、狼男の周囲には探究者が何人か倒れ伏していた。視界の利かない中、狼男が無防備だった者たちを強襲したのだ。
「一体どんな魔術を使ったんだ?」
「魔術なんかじゃねェよ」
「じゃあ、何なんだよ、その変わり様は……」
「すこーし前に、変な石を手に入れてなァ……。そいつが俺に語りかけるのさ。『我を集めよ。さすれば力が与えられん』ってなァ」
「なーんだそりゃ? お前、危ない薬でもやってんじゃねぇのか?」
「ほざけッ!」
狼男は猛烈なダッシュでヨシュアとの間合いを詰めると、光り輝く戦斧を叩きつけるようにして振り下ろした。ヨシュアはその軌道を読んで左足を引いて半身になり、その一撃をあっさりかわすと、そのまま狼男の喉元に鋭い突きを放つ。その速さに驚いたのか、狼男は慌てた様子で身をのけ反らせるようにして紙一重でかわし、蹴りを放って一旦、ヨシュアから距離を取った。しかし、狼男を休ませる気などヨシュアには毛頭ないようだ。
今度は、ヨシュアが一気に間合いを詰めて狼男に攻撃を仕掛ける。その動きは先程までよりも速く、体捌きは鋭い。ヨシュアも狼男も今まで本気ではなかったと言うことだろう。
二人の得物が激しくぶつかり合い、その斬り合いは二十合以上続いた。
「ハッ! やるなテメェッ! オモシレェ! オモシレェぞ、テメェはッ!」
「お前こそなッ!」
レティシアは狼男の異常な強さに困惑していた。並の狼男なら手練れの探究者であれば、これ程苦労することなく倒せるはずなのである。厄介なのは多少、自然治癒力が高いことと、その身体能力くらいのもので、レティシアの見立てではヨシュア程の使い手ならば造作もなく葬り去ることができると考えていたのだ。
二人が
レティシアはこっそりと『
そこへ狼男がヨシュアに押し込まれて、レティシアの間近まで迫っていた。
レティシアとしては巻き込まれるのは御免被りたいし、ヨシュアの邪魔をするのも避けたかった。レティシアがすぐに狼男の近くから離脱しようとした時、『
この現象が起こると言うことはつまり――
とあるページが開かれたと同時に、光り輝く。
レティシアは、おそるおそるその項目に目を通した。
待っていたのは――驚愕。
――《
かつて勃発したとされる
「本当に
レティシアは驚愕で目を見開いた。
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