四季

ナイリル リーン テイル

絨毯

ありふれた、どこにでもあるような

とある日の事。


和風な家の縁側にすわり、秋初めの

少し冷たいかぜと、優しいおひさまの

光のもとで書物にふけっていた。



とくに変哲のない少年少女の成長と学舎での日常を描くという、ただの物語。


ほんにするまでもなく、詩的表現もあまりない。


そこにただただ暖かみと、成長や心理描写が描かれているだけ。



次の段落に移ろうとしたとき



"ひたっ"



柔らかくて

とってもあまいかんしょくとにおいが


私のことをつつんだ


すこし寒くはありませんか?


赤を基調とした服装を着たとてもきれいな

女性が私の後ろから包むように抱きつき、


といかける


菖蒲あやめさんだ


「いまはあったかいです。」


彼女は少し古いアヤカシと呼ばれる一族で

黒くて綺麗な翼を持つひとだ。


腕を肩から腰の方へそのあと

わたしの体をつつむようにふさふさとした

翼に包まれてしまう



「ここはとてもあったかいですね」


あぁ、この声をきくと力が抜けてしまう


ただでさえ力が弱くて、脱力気味だったのに


溶けてしまう


おちてしまう


秋の葉がひとつ、またひとつと落ちてゆき

そして赤と黄のやわらかな絨毯ができるように


そこにいたら

なにかにおおいかぶされてしまい

もうでれなくなりそうな


でもそれはとてもあたたかくて

ながいときをすごしても

ちっともくるしくない


そんなここちがする


あれ

てもとの本はどこだっけ?



翼で体を包まれながら

するりと、わたしのみどり色の羽織

が流されてしまった


そしていつのまにか菖蒲さんも

私も横になっていた


いつのまにか彼女のうでは

またわたしの腰元にあり翼にも包まれて

動けそうにない。


それ以上にここをはなれたくない


あぁ、しずんでゆく

おちてゆくわたしはあの今にも

木のたもとからはなれる落ち葉だったのかましれない


あたたかさと、あまい、やわらかなこの

くうきがわたしのもとへやってくる



「おやすみなさい」













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